経済協力開発機構(OECD)Organisation for Economic Cooperation and Development

Ⅰ 概要

1 住所等

Tel. +33 1 4524 8200
URL https://www.oecd.org/
所在地 2, rue André Pascal, 75016 Paris, FRANCE
幹部 Angel Gurría(事務総長:メキシコ/Secretary General)
河野 正道(事務次長:日本/Deputy Secretary General)
Ulrik Vestergaard Knudsen(事務次長:デンマーク/Deputy Secretary General)
Jeffrey Schlagenhauf(事務次長:米国/Deputy Secretary General)

2 設立目的

戦争により疲弊した欧州経済の立て直しを目的とした米国のマーシャル・プランの受容機関として1948年に設立された欧州経済協力機構(Organisation for European Economic Cooperation:OEEC)を前身とする。OEECは設立後その活動を通じて欧州経済の復興と発展に貢献し、1950年代後半までには目的を達成、その後自由主義経済圏諸国の協力機構に改組することになり、1961年に20か国が参加してOECDが設立された。

OECDは、政治及び軍事以外の経済及び社会のあらゆる分野にわたって広範囲に意見及び情報を交換し、各国の政策の調和を図ることを目的とする。主要目的として以下の3項目がOECD設立条約(第1条)に明記されている。

資金の循環の安定を維持しつつ、できるだけ高度の経済成長を維持すること及び、雇用の増大並びに生活水準の向上を図ること。

経済発展の途上にある諸地域の健全な経済成長に貢献すること。

国際的義務に従い、多角的かつ無差別な基礎に立った世界貿易に貢献すること。

このほか、OECD設立後の国際社会、国際経済の多様化に伴い環境、資源エネルギー、農林水産、科学技術、教育、高齢化、年金・健康保険制度等の経済社会の広範な分野での活動を展開している。2020年度の予算は総額3億9,600万EURとなっている。

3 加盟国

2020年11月現在の加盟国は37か国である。

(1)設立当初(1961年)からの加盟国(20か国)

オーストリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイスランド、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、英国、米国

(2)設立後の加盟国(17か国)(括弧内は加入年)

日本(1964年)、フィンランド(1969年)、オーストラリア(1971年)、ニュージーランド(1973年)、メキシコ(1994年)、チェコ(1995年)、ハンガリー(1996年)、ポーランド(1996年)、韓国(1996年)、スロバキア(2000年)、チリ(2010年)、スロベニア(2010年)、イスラエル(2010年)、エストニア(2010年)、ラトビア(2016年)、リトアニア(2018年)、コロンビア(2020年)

加盟が招請され、国内手続中だったコロンビアは、2020年4月に正式なOECD加盟国となった。コスタリカは加盟が招請され国内手続中である。また、OECDは、ブラジル、インド、中国、南アフリカ共和国、インドネシアをキーパートナーとし、関与強化プログラムを通じた協力を進める等、新興市場国との関係強化を積極的に進めている。

Ⅱ 組織の概要

(1)理事会(Council

加盟国の代表1名と欧州委員会の代表によって構成されるOECDの決定機関。

(2)委員会(Committees

政治、軍事を除く経済、貿易、科学、雇用、教育、金融等の政策領域に関する現状や政策を検討・議論。各国の行政機関の担当者が参加する委員会、作業部会、専門家グループが合わせて300以上設置されている。

(3)事務局(Secretariat

エコノミスト、法律家、科学者等の専門家3,300名のスタッフによって構成され、委員会のサポートを担う。

Ⅲ 情報通信分野における活動内容

デジタル経済政策委員会(CDEP)の活動

(1)デジタル経済政策委員会(CDEP)の概要

科学技術イノベーション局(Directorate for Science, Technology and Innovation:STI)を事務局とするデジタル経済政策委員会(Committee on Digital Economy Policy:CDEP)が情報通信分野に関する検討の場となる。CDEPは、自らデジタル経済に関する主要政策課題に取り組むほか、下部組織として以下の四つの作業部会が設置されている。

CDEP及び各作業部会は、通常年2回、全体会合を開催し、意思決定を行っている(加盟国によるコンセンサスベース)。現在、飯田陽一氏(総務省)がCDEP議長を務めている。

(2)CDEPの活動状況

CDEPで議論され、採択された文書の主なものとしては、「ブロードバンドの発展に関する理事会勧告」(2004年)、「インターネット政策策定原則に関する理事会勧告」(2011年)、「オンライン上の青少年保護に関する理事会勧告」(日本提案。2012年)、「プライバシー・ガイドライン」(2013年改定)、「セキュリティ・ガイドライン」(2015年改定)、「デジタル経済に関する閣僚宣言:イノベーション、成長、社会的繁栄(カンクン閣僚宣言)」(2016年)、「医療データガバナンスに関する理事会勧告」(2016年)、「人工知能(AI)に関する理事会勧告」(2019年)が挙げられる。また、各国の情報通信分野の統計情報や政策動向等をまとめた「デジタル経済白書(Digital Economy Outlook)」を定期的に刊行しているほか、「Artificial Intelligence in Society」(2019年6月)をはじめ、数多くの分析レポートが公表・刊行されている。

「ブロードバンドの発展に関する理事会勧告」については、ブロードバンドを取り巻く環境の変化を踏まえ、2020年11月のCDEP会合において改定案が議論され、今後、改定案の採択・公表に向けた手続が進められる予定である。

2016年の「カンクン閣僚宣言」を踏まえて取組みが進められている「Going Digitalプロジェクト」は、デジタル化が社会全体にもたらす便益と課題を明らかにし、デジタル化の推進に向けた政策提言を行うこと等を目的とするものである。プロジェクトの対象は情報通信分野にとどまらず、雇用や技能、教育等広範にわたり、関係部局と連携して取組みが進められている。2019年3月に開催された「Going Digitalサミット」で統合報告書及び関連する統計データが公表されたことで第1フェーズ(2017-18)が終了、現在は第2フェーズ(2019-20)の取組みが行われている。

CDEP会合においては、2005年から技術革新がもたらす機会や課題を共有することを目的として「技術予測フォーラム(Technology Foresight Forum:TFF)」が不定期に開催されている。2016年11月のCDEP会合では、総務省の支援により、AIをテーマとするTFFが開催されたところである。

また、CDEPは、2016年4月の香川・高松G7情報通信大臣会合における高市総務大臣からの提案を端緒としてAIに関する取組みに着手してきた。総務省とOECDが共催した国際カンファレンス「AI:Intelligent Machines, Smart Policies」(2017年10月)やAIの信頼と導入を促進するための原則を絞り込む専門家会合(2018年9月~2019年2月)等の取組みを経て、2019年5月に開催されたOECD閣僚会合において「AIに関する理事会勧告」が採択され、現在OECDはこの分野の国際的な議論の主導的な場となっている。理事会勧告においては、「AIの関係者が共有すべき五つの価値観に関する原則」として、①包摂的な成長、持続可能な開発及び幸福の増進、②人間中心の価値及び公平性、③透明性及び説明可能性、④頑健性、セキュリティ及び安全性、⑤アカウンタビリティが挙げられ、国際協力の推進を含む「加盟国政府等が取り組むべき五つの政策」としては、①AIの研究開発への投資、②AIのためのデジタル・エコシステムの整備、③AIを推進するための政策環境の形成、④人材育成及び労働市場の変化への備え、⑤信頼できるAIのための国際協力が挙げられている。2020年2月には、加盟国等における理事会勧告の施行状況を把握するとともに、AIに関連する動向や政策に関する情報共有を進めること等を目的とするプラットフォーム(OECD.AI)が設置された。また、フランス及びカナダの主導により「人間中心」の考えに基づく責任あるAIの開発と使用に取り組む国際的なイニシアチブとして2020年6月に立ち上げられられた「AIに関するグローバルパートナーシップ(Global Partnership on AI:GPAI)」については(日本を含む14か国及びEUが創設メンバーとして参加)、OECDに事務局が設置されている。

Ⅳ OECDの我が国にとっての意義・有用性

情報通信分野は技術革新のスピードが速く、その影響が国境を越えて伝播するため、国内の制度を含めた各国の政策に関する国際調和が極めて重要となる分野である。OECDにおけるプライバシーやデジタルセキュリティに関するガイドラインや勧告、通信料金のベンチマークの設定や情報通信分野における競争政策のベストプラクティスの共有といった取組みは、加盟国のみならず政策担当者に広く参照されており、OECDは政策の方向性等に関する国際的なコンセンサスを形成する場としても重要な役割を果たしている。

我が国は、AIに関する理事会勧告の策定に当たり、「AI開発ガイドライン(2017年7月公表)」や「AI利活用原則案(2018年7月公表)」「人間中心のAI社会原則(2019年3月決定)」等の国内の検討結果を積極的に発信する等、専門家会合やCDEPにおける議論に大きく貢献してきたところである。

このほか、OECDは、議長国の支援をはじめ、G20の議論に積極的に貢献する役割が期待されている。2019年6月に開催された茨城つくばG20貿易・デジタル経済大臣会合においては、AIやサイバーセキュリティ等の議題について、準備段階から積極的に議論に貢献してきた。特にAIについては、上記大臣会合においてG20としては最初のAIに関する合意文書となる「G20AI原則」が採択されたところであるが、この原則はOECDのAIに関する理事会勧告を引用したものとなっている。なお、G20AI原則については、同月のG20大阪サミットにおいても首脳レベルの議論が行われ、G20大阪首脳宣言の附属文書としても採択されている。

我が国としても、OECDのこうした役割を認識し、我が国固有の施策を含め、情報通信政策の動向等について、OECDを通じた国際的な発信を強化することが求められている。