第百四十五回国会衆議院
地方行政委員会議録

平成11年2月4日(木曜日)

○滝委員 大臣から承りましたけれども、おっしゃっておられますように、なかなかこれは、いろいろ両論がある話だと思います。したがって、過去に我が国の中でも何件かの事例があるわけでございますので、そういった事例をもう少し披露してもらうとか、そういったことを通じてやはり議論をしてもらう必要があるんだろうというふうに思うわけでございます。一つの団体でこれをめぐった事件が出ますと、そこだけで議論がどうしても終始して客観的な方向づけを出すというのがなかなか難しいことも具体的な事例ではあると思いますので、こういった点についてもひとつ御研究等を進めていただく必要があろうかと思いますので、よろしくお願いを申し上げたいと思うんです。

 次に、合併の問題について少し御意見を承らせていただきたいと思うんです。

 やはり、今度の介護保険の準備に当たりましても、市町村の区域の中だけではなかなか難しいというのが現実の問題として出てきているわけでございます。それが直ちに合併に結びつくというのは論理の飛躍ということもあるわけでございますけれども、具体的な行政を進めるに際してはやはり今の区域では狭いというのは、事実問題として市町村そのものが今認識している、こういう段階だろうと思うんです。

 問題は、その上でそれをどうこなしていくか、こういうことになるわけでございますけれども、やはり私は、合併推進をする、ただ単に抽象的に進めるといってもなかなかこれは乗りにくい話だと思います。そこで、その壁をどこで取り破るような環境を整えていくかということに尽きるんだろうと思うんです。大臣のお言葉をかりれば、具体的にどういうような方向づけをするのかという段階であろうかと思います。そういういろいろ考えられる中で、一つ二つ申し上げてみたいと思うんです。

 従来は、自治省も、どちらかというとこの合併問題についてはなかなか旗振りをしにくい立場、いろいろな事例は集める、状況のPRはするということでございますけれども、具体的になかなか旗振りはしにくいということだったと思います。それを受けて、実は都道府県の方も、自治省以上になかなか合併の旗を振るなんという感覚そのものがない、そういうような状況だろうと思うのでございますけれども、今、全国の動きを見ますと、合併の協議会ができ上がっている地域が八地域ですか、それから、事実上の合併の話し合いができているのが六地域とか、そういうふうに、多少はその芽があるように思うのでございます。

 そこで問題になりますのは、やはり当該市町村だけで合併の機運をつくるといってもなかなか難しい問題がある。そこで都道府県がどう取り組むかという姿勢がありませんと、やはりこの問題はなかなか住民の皆さん方の関心が出てこない、そういう性格のものだろうと思うんです。都道府県が、この問題をもう少し地域の実態に即した、旗振りというと都道府県そのものもなかなか立場が微妙でございますからできかねるところがあるのでございますけれども、都道府県がもう少しこの問題に関与するような方策を考えてみたらどうか、それについて自治省はどういうようなことを考えられるのか、その辺のところからまずお聞かせいただきたいと思うんです。

○野田(毅)国務大臣 御指摘のとおり、まさに国がいろいろ合併の推進を慫慂するに先立って、まず一番地元の状況に精通しているのは都道府県でもあるわけで、そういう意味で、都道府県の協力体制ということが不可欠の事柄であると考えております。そういう点で、自治省としては、都道府県に対し、合併を検討する際の参考や目安となる合併のパターンなどを作成し周知するなど、積極的な取り組みを要請いたしておるところでありますし、また、その際に参考となる合併推進のガイドラインを本年上半期にお示しするという予定であります。

 また、分権推進法の中で、合併特例法の改正も含めるわけでありますが、その中では、都道府県知事が関係市町村の意見を聞き合併協議会の設置を勧告することについても規定をしたいというふうに考えております。

 今お話がありましたとおり、まさに今一番大事なときでありますので、合併に対する都道府県のさらなる強力なる御協力をぜひお願いしたい、そのためにまた自治省もできるだけの努力をしたいというふうに考えております。

○滝委員 問題は二つあると思うんですね。一つは、合併をされますと、旧市町村の中で取り残されていく地域が出ないかどうかという心配が当然あるわけですね。一つの村として存立する以上はいろいろなことができた、それなりのまとまった意識ができたけれども、合併しちゃうと、どうしても中心地は栄えて周辺部分は取り残される心配がある、こういうような地域的な格差が生じるおそれというのが一つございます。それからもう一つは、合併しても具体的に住民の皆さん方には何も影響がないじゃないか、そういうような意味で合併に対する積極的な意見が出にくい。こういう二つの問題があると思うんです。

 したがって、私は、この二つの面から、やはりこれからのものを考えていくとすれば、仮に取り残されていく地域があるということであれば、突拍子もない例を引いて恐縮でございますけれども、例えば地方議会にも二院制度をつくるというようなことがあったっていいと思うんですね。非常に突然な話でございますからなかなか理解は得にくいと思うのでございますけれども、要するに、旧市町村を代表する機関、仕掛けを議会の中につくる、そういうことがあったっていいんじゃないだろうか。これは連邦国家でやっていますよね。そこまで飛躍するとえらい大げさな話になるのでございますけれども、地域が心配だというのであれば、仮にそういうような仕掛けを考えてみてはどうかというのも一つの考え方ではあると思うんですね。

 それから、住民の皆さん方は、何にもメリットがない、合併してもしなくたって一般住民の日常生活には関係ないというような思いがやはりあるんですね。したがって、その上で合併計画というかそういうものを考える場合には、住民の皆さん方に、合併すればこんないいことがあるよという意味では、やはりきめ細かいいろいろな提案がないといかぬ。昔のように小学校を整備するから合併しますよというような大ざっぱな話では、なかなか今回は通用しないわけでございますから、例えば合併をするとして、地域間の連絡をよくするために思い切って手厚い路線バスを誘致するとか、そういうこと一つとってみても、やはり地域の皆さん方の生活の利便が増すような、これは合併しなかったらできないというようなものを合併計画の中に入れ込む、そういうような考え方がどうしても必要じゃないだろうかなという感じがいたすわけでございます。

 こういった点について、一つの考え方として、これをどういうふうにこなすかはこれからの問題でございますけれども、そんなことを考える必要があるんじゃないかと思うんでございますけれども、ひとつ大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。

○野田(毅)国務大臣 御指摘のとおり、かなりきめ細かい発想が必要だろうという御指摘、そのとおりだと思います。そういう点で、住民の意識においてもやはり合併した方がいいんだという気持ちをまず持ってもらうということが大事なことだと思います。そういう点で、きめの細かいそういったサービスがきちんと、逆に合併した方が確保できるんですというようなことが出せないかどうか、この点が非常に大事なことだというふうに思っております。

 そういう点で、今回の法律改正においては、合併前の市町村が協議して旧市町村の区域ごとに地域審議会を置くことができるということにして、合併市町村の長に対して地域の意見を述べることができる仕組みを新たに設けたいというふうに考えております。

 また、日常の行政サービスが身近に受けられるように、地域ごとの支所や公共施設を活用したり、またネットワーク化を図ることが有効でありまして、国として示す予定の合併推進の指針、ガイドラインにもこうした方策の活用を盛り込みたいと考えております。

 さらに、旧市町村の振興や市町村建設計画に基づく事業のための財政措置を拡充し、合併した市町村が均衡のある発展ができるよう総合的に支援をしてまいりたいというふうに考えております。

 まあ、議会を二院制にするかどうかはちょっと勉強させてください。

○滝委員 議会の問題は一つの考え方として申し上げたので、これが簡単に実現するとは思っていませんけれども、それに似たようなことで、地域審議会でございますか、そういうような各周辺区域が安心できるような仕掛けというのは今までにない仕掛けでございますから、そういうものはやはりこの際打ち出していただく、それは大変効果があるのではなかろうかなという感じがいたします。

 それと、財政措置についても思い切ったことをおやりになる、こういうことでございますけれども、なかなかここのところが難しいところがあると思うのですね。従来、合併しますと、交付税でも五年間だけは合併による交付税交付金が減らないように、こういうことであったわけでございます。これは、これからの合併については少し延ばすという意見もあるかもしれませんけれども、そうなりますと、今小さな市町村に対する国民の批判というのは、大都市から見るとどうも小さな市町村に交付税が行き過ぎている、こういう批判もある中で合併がなかなかうまくいかないということも片やあるわけですね。

 お金のことでございますから、財源付与の問題は理屈の問題じゃなくて、本当に必要があればお金を出さなければいかぬ、こういうことで、交付税でも段階補正とかそういう形で小規模な市町村も何とか成り立つように、こういうことの結果、小規模な市町村もそれなりに手厚い財源措置が交付税という格好で出てきているわけでございます。これが合併問題の足を引っ張っている、こう言われているわけでございますけれども、しかし、現実問題として、合併すると直ちにこういうメリットがなくなってしまうということになりますとなかなか合併が進まないという、妙な堂々めぐりができているわけでございます。

 したがって、将来の方向としては、こういった小規模市町村に対する財源付与というものを普通交付税でやらずに、あるいは特別交付税かなんかにゆだねるとか、そういうことを片や考えながら、しかし合併がしやすいような措置はしていく、こういうことだろうと思うんでございますけれども、こういった財政問題についてもう少し具体的なお考えがあればお聞かせいただきたいと思うんです。

○野田(毅)国務大臣 さすがに実情をよく御存じの上での御質問でありまして、基本的な問題意識、考え方の方向性は御指摘のとおりでありまして、やはり合併を促進するというか、そちらに誘導していくような財政的なスタンスというのが必要であるというふうに考えております。

 今御指摘もありましたが、普通交付税の算定における合併算定がえの期間を、今五年でありますが、今度の法改正の中で十年に延長するような方向で取り組みたいと考えておるわけです。そのほかにも、市町村建設計画に基づく事業その他旧市町村の振興等に必要となる事業に対する地方債、この起債措置を手厚くしよう、あるいは合併関係市町村の公債費負担格差の縮減等の財政健全化、あるいは合併協議会の運営等の合併準備等に要する経費に対する交付税措置、こういうような財政措置を拡充をいたしたい。

 今申しましたそういったことをやるために必要な法改正、必要とあらばやりたいというふうに考えております。

○滝委員 合併問題につきましては、ひとつ従来にない中身のものをぜひ取りまとめをお願いを申し上げたいというふうに思います。

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