第百四十五回国会衆議院
地方行政委員会議録

平成11年2月4日(木曜日)

○宮島委員 それぞれの地方財政対策につきましては、先ほど来お話にございましたとおり、今時の地方団体の経済状況を考えまして、鋭意強力に取り組んでいただきますように要望を申し上げたいと思います。

 しかし、一方にありましては、過疎の波というものがさらに大きく広がっているというのが今の我が国の実情ではないかというふうに思います。

 国土庁が出しております過疎白書にもありますとおり、人口減少率の多い過疎地域の市町村数というものが、9年度の発表でも、前年度から二十三ふえて千二百三十一、全体の四割近くに達するということでございまして、過疎地域というものは大阪と神奈川を除くすべての都道府県に及んでいるということが事実で、集落の崩壊というものが懸念をされている状況であります。

 ということで、このままでは二十一世紀の早い時期に市町村というものが大きく崩れてくるんではないかというふうなことを地方の人間としては本当にひどく心配をしているところでありますけれども、先ほど来お話ございますとおり、今のこの時流をつかみまして、今こそ地方分権というものをしっかりと達成しなければならないということがあろうかと思うわけであります。

 ということで、一つには、来年度には過疎法というものが期限切れを迎えますので、地方自治体としてはそれぞれ新しい過疎法の制定というものを望んでおるというふうに思うわけでありますけれども、過疎対策についてもぜひしっかりと取り組んでいただきたいというふうに要望したいと思います。

 と同時に、先ほど来の議論になりますけれども、やはり今こそ市町村合併というものをしっかりとやっていかなければならないというふうに思います。先ほど、滝委員とのやりとりの中でいろいろなお話がございました。都道府県のこれからのかかわり、あるいは交付税の措置の期限の延長等々を含めまして、これからインセンティブというものをしっかりと与えていくということでございますので、そのことについて強く期待をいたしたいと思うわけであります。

 しかし、その一方にありまして、やはり市町村合併につきましては、地域それぞれの事情というのがありまして、歴史的背景あるいは文化的背景等もありましてなかなか進まなかったというものが事実であろうかなと思うわけでありまして、どうか、そうしたものを、特例というものをしっかりと与えていただいて、市町村合併に結びつくような、そういう意味では最後のチャンスではないかなというふうに思っておりますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 その点につきまして、一点、お聞かせをいただきたいと思いますけれども、大臣は日ごろから、市町村合併の件につきまして、小選挙区の三百というものが一つのイメージであるというふうにおっしゃっておられます。基礎的自治体というものはおおむね三十万人というものを軸とし、少なくとも十五万人以上にすべきではないかというような御主張も仄聞をいたしておるところでありますけれども、その点についてのお考えというものもお聞かせをいただきたいと思います。

 ここに一つ資料がございますけれども、これは近畿大学の調査の結果でありますけれども、その中に、いわゆる一人当たりの経費といいますか、人件費、物件費というものの分析をいたしますと、大体一番効率的なのが十五万、十六万前後だというふうな調査。ほかの、地方財務協会なる団体の調査でも大体同じような結果というものが出ているようでありまして、若干の幅を設けましても人口十万ないし二十五万の程度というものが、一つの、歳出として最も少なくて済む、効率的なということでは理想的な自治体になるのかなというふうに思います。

 その点を勘案されまして大臣はそういうお話をされているのかなというふうに思いますけれども、先ほど来お話ございますとおり、そのメリットというもの、合併をすることによってこういういい形になるんだということをやはり住民自体が理解をしてくれないと合併というものは進んでいかないということは、これはもう論をまたないところでありますので、その点についてどういうふうな見通しというものがあるのか、メリットというものがあるのかということを、今まではどうしてもデメリットの方が、あるいはメリットがないのではないかというふうな論議が進んでおりましたので、その点について大臣の御所見というものを承りたいと思います。

○野田(毅)国務大臣 市町村の合併についてそれぞれメリット、デメリット、いろいろな議論が成り立つと思います。

 ただ、その中で私どもが考えております一つは、やはりサービスそのもの、行政サービスのレベルをどうやって維持するかというのは基本的に大事なテーマであると思います。しかも、それをどうやって効率的に提供するかということがなければ、どんなにお金をかけてもいいんだということではこれはまた話にならぬわけでありまして、そういう意味で、行政サービスのレベルをどう維持するか、特に均質性を必要とされるような行政サービスというものについてはレベルが大事だ、内容が大事だ。そういったところから、先ほども御指摘ありましたが、言うなら介護サービスであったり、その種のものはある程度、地域が異なってもサービスのレベルというものは保障されるという部分が必要ではないか。ということになれば、それなりの一つの、提供できる能力といいますか、支出という側面よりもむしろ物的といいますか、いろいろなそういう、外形的能力といいますか、そう言った方が誤解がないでいいと思うんですが、そういう意味でのことが必ず必要になる。これがまず第一義であると思います。

 これは一つのメリットという側面でぜひとらえていただきたい。地域住民から見てもその方がいいんですよと。これは、一つは介護の問題があるが、これからますます少子高齢化が進んでいけばいくほどそういう世界が広がっていくんじゃないか、この点が一つございます。

 それからもう一つは、国、地方を通ずる行政のスリム化というか、あるいは財政難が国、地方を通じてあるわけです。そういう意味でどうやって行政経費を、国、地方を通じて節約していくかということも一方で必要な部分であるというふうに思います。

 その点で、単に合併ということだけでなくて、いわゆる地方分権もそうなんですが、ただ権限そのものを国から地方におろせばいいということだけでなくて、逆に、自治体のサービスとしてどこまでやるべきかどうかという議論もあわせてぜひ行われるべきことである。そういう意味で、国、地方の公的セクターから、もう少し民間セクターの中でやっていかなきゃならないテーマがたくさんあるんではないか、この視点も私はあわせて必要であるというふうに思っております。

 そういう意味で、地域の行政レベルをどうやって確保するか、そして、より身近な事柄をどうやって自分たちの地域の中で達成していくかということの視点と、それから財政的な側面、こういったところでぜひメリット・デメリット論を論じていただければありがたい。

 その中で大事なポイントは、効率性ということばかりでいくんではなくて、取り残されないようにどういうふうにそういうきめ細かなニーズということをも対応できるのかという中で、先ほど申し上げましたが、いろいろな、合併したところの旧市町村について何らかの協議会なりあるいは支所なり、そういったサービスのネットワークをどういうふうにきちんと確保していくかということも一方では大事なことだというふうに思っております。

○宮島委員 今大臣のおっしゃったことは、まさしく、今度合併を推進していく中での本当に本質の問題ではないかなと思います。住民にとってみれば、地方分権で行政サービスの質が上がるのか、あるいは税負担が下がるのかというようなことをやはりつまびらかにしながら、しっかりと論議していただいて進めていかなければならないと思いますし、改革という意味におきましては、現状への不満あるいは将来への危機感という二つのエネルギーというものも必要ではないかなというふうに思っておりますので、その点というものも十分に、今度の合併の論議の中で地方一体となってあおっていただきながら進めていただきたいということをお願いしたいと思います。

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