第百四十五回国会衆議院
予算委員会議録

平成11年2月5日(金曜日)

○小林(守)委員 民主党の小林です。

 私は、野田自治大臣に、地方分権の観点から幾つかの見解をただしておきたいと思います。

 自自連立政権の顔とも言えるのではないかというふうに思いますし、また、新進党、自由党の地方分権論というのは、極めて先鋭なというか、奇抜なと言っていいか、非常に特色のある分権論を出されておるわけでありまして、そういう点で、今後、この自自連立政権の中で自治大臣がどのように持っている分権構想を進められていくのか、厳しく見きわめをさせていただき、検証させていただきたい、このように思っているところでございます。

 まず、自治体の合併促進について、自由党のこのパンフレットの中でも、市町村合併促進のための新しい法律をつくるんだというようなことも提案されております。それから、三百自治体構想というのもあります。しかし、これをどうやっていくのか。

 現実に、三千二百三十二の自治体を十分の一にしていこうというようなことになるんですが、極めて困難な、発想は奇抜でおもしろいという感じはするんですけれども、手統的な意味からも手順からいってもそれでは中間自治体である都道府県の広域的な役割とか都道府県の役割はどういうふうに位置づけすることになるのか。それから、実際に中央で強権的にやるしかこれは達成できない話ではないのかなと思えてならないわけでありまして、そういう点で、非常に危険なというか、怖いものを感じるところがあります。

 そういう点で、地方分権の視点から考えるならば、合併推進というのは、あくまで自治体の、住民の主体的、自主的な運動の中からつくり上げられていくものでなければならない、このように思うんですが、大臣の所見をお伺いしたいと思います。

○野田(毅)国務大臣 地方自治体の合併が、基本的には地域住民の協力といいますか、自主的に、自分たちが合併することの方が自分たちにとっても有益であるという理解が進んで行われるということが基本であることは、御指摘のとおりであります。

 しかし、特に最近の国内のいろいろな地域間のアンバランス、それからいま一つは、福祉行政の世界においてもそうでありますけれども、かなり専門的に高度な行政のレベルを維持しなければならぬという、これは所々方々に出てきているわけであります。

 そういった点で、そういう行政サービスのレベルをどうやって高度なものに対応していくのかという上でも、やはり住民の福祉の増進のためにも、そういう意味での受け皿としての能力アップを進めるということが一つ大事な視点であると思っています。

 それからもう一つは、これは国、地方を通じて、御承知のとおり財政が大変厳しい状況にある、そういう中で、どうやって国、地方を通ずる行政の簡素効率化を図っていくかという視点、この視点もまた大事な視点であります。

 そういう中で、市町村の合併ということは、両面からいっても私は非常に大事なテーマである、これは大体多くの方々がお認めになることだと理解をしております。

 特に、地方分権を強力に推し進めていこう、そういうことになればなるほど、三ゲンという表現があります。人間つまり担い手である人材、あるいは財源、あるいは権限、こういったものを、やはり地方の住民に近いところの行政はそこの地域の基礎的自治体が担っていくんだ、そういうような地方分権というか、そういうようなものをより強力に進めていこうということであればあるほど、なおさら受け皿である基礎的自治体の強化ということは避けて通れない課題である。そういった観点からも、この市町村の合併というものを、その基盤を強化していくという上で非常に大事なことだ、ただ、そのことについて、なかなか他から強制されてというと問題もあるかもしれない。そういう点で、私たちは、少なくともそのメリットをぜひ理解してもらう、そういう中で進めていきたい。

 これは、じっと黙っておると百年河清を待つというような部分なきにしもあらずである。そういう点で、自由党という形の中で、私たちが日本再興へのシナリオということで、今お示しになった中にかなりラジカルな表現で書いてあることは、これは事実であります。しかし、やはり基本目標ということをある程度掲げて、そこへ具体的に、段階的にどういう手順でやっていくかというのは、その次の政策の選択の世界であると思っています。

 今お聞きになりましたテーマについて、どうやら、自治大臣としての答弁よりも自由党の基本政策ということをどう実現していくかというお話であったかと思いますので、そこのところをかみ分けて申し上げたつもりでございます。

 自治省としては、この問題は、特に合併促進については、今度の地方分権推進法、これをこの国会にお示しする中で、合併の特例法についても思い切った改正を出して、それに対する財政的な支援なりいろいろな形での具体的な支援措置、バックアップ措置を盛り込む予定にいたしております。

 その際、地元の市町村の自主的な努力と同時に、都道府県がそれについてかなり協力をしていただくということも大事なことであるというふうに考えております。

○小林(守)委員 自由党の分権構想と、現実に今進められようとしている合併促進法の改正、このギャップが私は相当なものがあるのではないか、少なくとも、自自連立政権の中で野田自治大臣は、自分の持っている構想と現実の合併促進法の改正という中のその溝の深さというか広さというか、実際に三百自治体構想に打ち上げられたような姿を構想するならば、これは何十年先の話になってしまうような遅々たる改革にすぎないのではないか、このように思えてならないわけであります。

 少なくとも、その方向については、私は基本的には広域化の方向については間違っていないというふうに思います。ただ、その手法として、相当合意形成をしっかりとしながら手順を踏んでやってもらわなきゃ困る。そして、合併のためのインセンティブをきちっと行財政的に県の協力も得ながらつくっていくということが必要だろう、このように思います、これはもう一度詳しくはやりませんけれども。

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