第百四十五回国会衆議院
地方行政委員会議録

平成11年2月9日(火曜日)

○知久馬委員 社会民主党・市民連合の知久馬でございます。

 質問に先駆けて、一言お断りさせていただきたいと思いますが、私は、初登院いたしましてきょうでちょうど二十日でございます。質問するのも、二十日でございまして、この院内の生活になれるのが精いっぱいでございますのでまだまだ勉強不足でございます。それで的外れな質問もあるとは思いますが、時間が許せば、三つに絞って、自治大臣に質問させていただきたいと思います。

 最初にまず、地方分権と市町村の合併の問題でございますが、野田自治大臣は1月15日、報道各社の共同インタビューの中で、地方分権の問題に関連して、小選挙区の三百が一つのイメージだ、基礎的自治体はおおむね三十万人を軸とし、少なくとも十五万人以上にすべきではないかと、市町村合併を推進する見解を示されていますが、現在でもそのようにお考えでしょうか。お伺いいたします。

○野田(毅)国務大臣 三百という数字というのは、必ずしもその三百ということ自体に意味があるとは思いません。あるいは二百五十なのか五百なのか、究極的にそういう形が望ましいのではないかというのは一つあります。しかし、一気にそこへいくというのもなかなか大変だ、したがって、途中の過程として千ぐらいならどうかという議論があることも承知をいたしております。

 ただ、大事なことは、合併をすることによって、言うなら住民への基礎的なサービスがある程度内容、レベルが保障されるということは非常に大事なことだ、そういう点で、数少ない人口の中だけではやはり高度なサービスを提供できかねるということが現にあるわけで、そういった意味からも大事なことですね。そういったことを考えると、一体何人ぐらいからがそういう形ができるのかということで、当面おおよそ、いろいろな行政コストの共通経費を考えた場合によく言われるのは、十五万人以上というのは効率的ではないか、それは一つの実践的なメルクマールだろうと思います。しかし、もう一歩進んで、三十万人ぐらいあった方がいいのではないかという議論があることも事実です。

 だけれども、それを強制的に、ようかんを切るように最初から国の方でばさっと人口割だけで決めるわけにいかない、これはもう当然のことであります。そういう点で、ただ抽象的で合併合併といったってなかなか物事は進まないので、ある程度お互い少し拍車をかけて、そういう方向性に向けて集約をしていくというか考え方を集約していくということが大事なことじゃないかということで申し上げたわけです。

○知久馬委員 ありがとうございました。

 95年の合併特例法で、議員の定数、在任特例の緩和、財政特例の拡充、住民による合併協議会設置の直接請求権などが盛り込まれ、その後、97年7月の地方分権推進委員会第二次勧告や98年4月の第二十五次地方制度調査会の答申で、自主的な市町村の合併をさらに一層推進する施策が打ち出されてきました。そして、今般、地方分権推進計画に沿って合併特例法の改正が提案されようとしていますが、その内容はどのようなものでしょうか。お伺いいたします。

○野田(毅)国務大臣 今国会に提案する予定の地方分権に関する一括法案に合併特例法の改正も盛り込む考えでおります。この中では、住民の意向により自主的な合併が進められていく住民発議制度の拡充や、合併後についても合併前と同程度の普通交付税の額を受けられる、保障される、そのための合併算定がえ、専門的な言葉になりますが、合併算定がえの期間の延長などを行う予定であります。

 それから、御指摘のように、合併によって地域格差が生じることや住民の声が施策に反映できにくくなるといった心配も指摘をされております。そういった点で、今回の法律改正では、合併前の市町村が協議をし、旧市町村の区域ごとにいわゆる地域審議会を置くことができることとして、合併市町村の長に対して地域の意見を述べることができるような仕組みを新たに今度設けようということを考えておるわけであります。

 それから、日常の行政サービスが身近に受けられるよう、地域ごとの支所や公共施設を活用することが有効であるので、合併推進のガイドライン、指針を、これは国として示す予定ですが、その中にもこうした方策の活用を盛り込みたいと考えております。

 さらに、旧市町村の振興や市町村建設計画に基づく事業のための財政措置を拡充して、合併した市町村が均衡のある発展ができるように総合的に支援をしてまいりたいと考えております。

○知久馬委員 こうして市町村の合併の促進が図られているわけなんですが、現実には市町村の合併は進んでいません。

 これにはさまざまな見方があると思います。私は、地方行政経費を安く上げるためとか規模が大きくないと分権の受け皿にならないとかいう理由で市町村合併を推進するということは、本末転倒だと考えます。国によって権限や財源が制約されている中で、自立が困難だからといって合併促進を説くのはおかしいのではないでしょうか。合併による住民サービスの低下、合併前の地域の独自性の喪失、周辺部の過疎化をもたらし、村が消えていくようなおそれさえあります。また、規模や人口が大きくなればなるほど、住民一人一人の意見や意思の反映が難しくなるのではないでしょうか。

 そのようなことがあってはならないと思うのです。合併の行政の広域化に対しては、各自治体が自主的、主体的に対応すべきであり、住民投票など、住民の決定と地域社会の選択を尊重して対応すべきだと思うのでございます。そして、何よりも、地域コミュニティーの確立、市町村自体の権限の強化と、一番重要なことだと思うのですが、税財源の確立の重要なことが挙げられると思うのでございます。

 その点について、一言お願いします。

○野田(毅)国務大臣 御指摘のとおり、やはり市町村の合併は、何といっても当事者であります市町村の住民自身がその意義というものをまず主体的に認識をしていただくということが一番大事なことだと考えています。

 そういう点で、先ほど私もちょっと申し上げたとおり、合併することの方が従来以上にサービスの内容が向上する、充実する、あるいは、いろいろな施設を利用するにしてもその方が便益性が高まるのだ、いろいろなメリットがあるのですよということも認識をしていただく。そして、さらにまた、それを進めていく上で、いわゆる合併だけじゃなくて行政の効率化、簡素化ということも一方でやることによって、言うなら経費も節減できるのですよということも副次的効果としてあるのでしょうし、そういったことを踏まえて、まず主体的に御判断をいただく。

 それで、その中で地方が切り捨て御免にならないような配慮を当然していくというのも、これまた大事なことだと思いますから、そこの点はお互い知恵を出して、より充実できるようにしていきたいと思っています。

○知久馬委員 本当に、切り捨てられていく町や、それとそこに営々と住んでいた人たちのことをやはり考えていかなければならない、重々よろしくお願いしたいなと思います。

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