第百四十五回国会
参議院予算委員会会議録

平成11年3月1日(月曜日)

○浜田卓二郎君 それを否定してはいないんです。だけれど、ゆっくりゆっくり病理を治すだけに今時間を使っている暇はない。病理も治しつつ思い切ってやれ、そういうことを申し上げたい。

 自治大臣、二点まず聞きます。

 太田長官から、地方は地方の勝手だと。それで自治大臣は、地方の行革を本当に進められる立場におありなのかどうか。それからもう一つは、今ちょっと総理もお触れになったけれども、新進党それから自由党は一貫して地方自治体の合併促進を言っています。自治体を三百ぐらいにしたら十数兆のコスト節減ができると、私もかなり共感するところがあるんです。そのお考えは今でも変わっていないか。この二点を御答弁ください。

○国務大臣(野田毅君) 二つのポイントで御質問がありました。

 ただ、その前に、先ほど来いろいろ御議論、やりとりを聞いておりまして、基本的に浜田さんの問題意識にほとんど同感のところであります。

 行政改革というのは、決して機構いじりだけで終わってはならぬ、そういう意味で、わかりやすく言うと、私どもが新進党におったころからわかりやすく表現していたのは、言うなら仕事減らしであり人減らしであり金減らしであるというか、そういう意味で単に財政再建ということだけが必要なのではなくて、結果として極力簡素で効率的な政府に持っていこう。これは国、地方を通じて持っていこうということになれば、要らぬ権限を拡大して民間がやるべき事柄への介入は極力抑制すべきであるという、この考え方を貫いていくということが仕事減らしという表現になり、一方で、そのことによって仕事がより減ってくれば、人もそういう意味で極力少なくすることもできるであろうし、そのことが結果として行政全体をスリム化して行政経費を節減することになるだろう、そんなことを言ったんです。

 先ほど総理からもお話がありましたが、若干私どもが感じましたのは、総理がおっしゃいました中で行政コストを三割削減したいというお話、ということは、必ずしもその前から行われてきたいわゆる橋本行革といわれる事柄の範囲の中でとどまっているのではなくて、さらにより分野を拡大して、中央省庁の再編の問題だけじゃなくて、いわば職員の数に切り込み、あるいは行政コストの削減に向けて切り込んでいくという私はより積極的な意味合いと、そのように受けとめております。

 そういう点で、少なくとも両党間の合意の中で、あらゆる分野において構造改革をやっていくんだという中の大きな大きな柱の一つがこういった分野であるということをまず冒頭に申し上げておきたいと思うんです。

 それから、長くなって恐縮ですが、本論の二つの部分、地方の行革はそういう意味では当然のことでありまして、国、地方を通ずる行政改革というのは徹底してやっていくべきテーマの一つであります。そういう点で、地方自治があるからといって知らぬ顔というわけにいきません。

 既に平成9年、前内閣のときであったろうと思いますが、役所で調べてみますと、自治省の方から地方自治体にガイドラインなり通達を出しておりまして、それがかなり今効いておりまして、それぞれの自治体がみずから行革の指針なりそういったものをただつくるだけでなくて、内輪で持っているだけでなくて、住民にもわかるように情報公開をしていくという、そのことによって住民監視の中でさらに地方行革を進めていくんだということに現に既に着手しておるということはまず申し上げておかなければならぬと思っています。

 それから、それだけでなくて、地方自治体自身の独自のそういう行革努力というのは必要なんですが、あわせて国、地方を通ずる行革、それが言うなら地方分権であり、いわゆる権限の見直し、再配分ということもあって、先ほど太田長官から、遠慮されたと思うんですが、太田長官のお仕事の中に地方分権一括法という、これは地方分権推進委員会の勧告をもとにして今度国会に御提案させていただいて、ぜひこれを推進していきたい、その中に、あわせて市町村合併についても、これは精力的に進めていかなきゃならぬ。

 だから独自の、現在ある自治体自身がみずからの行革なり行政コスト削減に向けて一生懸命やってもらうことはもとよりでありますが、やはりそれだけでは済まない。そういう意味で市町村合併ということも、もちろん何も行政コストだけの側面ではありませんで、いろんな高度の住民サービスというものが必要になってきている時代ですから、それなりの中身を、レベルを充実していかなきゃならぬというためには、小さな自治体だけではとても能力を超えるということになりますから、そういう意味での地方行政のレベルをしっかりと維持していく、充実していくという角度からも必要だし、あわせて、何より今の市町村合併ということが共通コストを削減していくということで極めて有効な手段でもあるということも事実でございます。

 そういう点で、両面、地方行革あるいは市町村合併について、これは私が今抱えておる仕事の中で最重点の一つであるというふうに思って、努力をしていきたいと思っております。

○浜田卓二郎君 一生懸命やっていらっしゃるというのはよくわかりましたが、どうも間接的なんですね。つまり、基礎をつくるとか、それでどうぞやってくださいとガイドするというか、私はもうちょっと踏み込めないかなと思うんですよ。だから、多分、太田長官がさっき言われたことも、強制力がないというか、要するに、話し合いで自治大臣としてはこう考える、だからやってくださいよと。だけれども、申しわけないけれども、やる能力が全国三千二百の市町村全部に備わっていて、それだけ強力なリーダーシップを自治体の長が発揮していけるのかどうか。

 例えば合併ですけれども、十年たっても十五年たっても合併話というのはなかなかうまくいかないんです。我が埼玉県でも、政令市が一つもない、つくろうといってさんざん議論しています。自主性はいいんですよ。だけれども、自主性に待っていたら百年たったって地方自治体の合理化なんて進まないです。

 介護保険をやるのに、たった何千人の町やそんなところでやれるわけない。本当言うとやれるわけないと思いますよ。埼玉県の町だってまだ全く特養もないところがあるんですから、だからこのまま保険料もらったら詐欺になっちゃうよというふうに市議会がもう物すごく心配しています。それが実は個々に見ていく地方自治体の実態です。

 だから、私の持論を申し上げれば、大分時間があるようですから演説しますけれども、合併法をつくれと言っているんです、私は。合併法をつくれと。そして、その地方自治体に例えば十年の期限を切って、このぐらいのスケールで合併しなさいと。そして、全国知事会とか市町村会とかも同意を、もちろん説得しなければいけませんけれども、基本はやっぱり国が私はリーダーシップをとっていい、それは憲法にも違反しない、正しい地方自治を実現するための手段だと。

 だから、身近なところでどうですか、太田長官と御相談なさって、全国知事会とタイアップしながら国が地方の行革をリードできる、そういう仕組みをつくったらどうですか。これが一点。

 それから、合併法についてどう考えますか。私は強制力を持たせてもいい、それぐらい緊急の事態だと思っています。

○国務大臣(野田毅君) 確かに、何もしないでいると百年河清を待つような多少いら立たしさを感じているという……

○浜田卓二郎君 多少じゃない。

○国務大臣(野田毅君) 大変感じておられるというお話でありますが、私は多少感じておりますが、ここは率直に言って、できるならば今我々が目指そうとするのは、やっぱり地方でやることは地方、住民により身近なことは地方自身が責任を持ってやっていく体制にしましょう、国は極力国がやらなければならぬような仕事に限定をしましょうという役割分担をある程度はっきり仕分けをしましょうと。そのかわり地方は、自立と自律という言い方を私はしているんですが、みずから立つという自立と自己規律といいますか、その自己責任という中で本当に自分のことを主体的に自己責任で考えよう、そうしないと本当の意味での地方自治は育たない、大体ここまではみんな共通した物言いで来ているわけです。

 問題は、そこから先にやっていこうとするときに財源問題というのがついて回るわけでありまして、そういう点で、幸か不幸か今の状況、国も大変借金で、先ほど来の御議論のとおり先行き非常な不安感を抱えておりますが、地方も負けず劣らず大変な、言うなら惨状にあります。そういう中で、さっき言いましたように、かなり自治体自身が主体的にみずからの行政改革ということに現に取り組んできているということは、ここはここで余り先入観を持たないで見てあげなきゃならぬところだと、このことは一つあります。

 その中で、合併問題について埼玉の例は、ちょっと個別のことは申し上げませんが、できることならば住民自身がやっぱり合併した方が自分たちにとっても、有利不利という言葉がいいか悪いかわかりませんが、自分たちのためにもプラスになるんだということをぜひみんなに理解していてもらわなきゃいけないということがまず基本だと思います。

 そういう意味で、今度の、さっき言いました地方分権推進のための一括法の中に市町村合併の推進のための法改正を一つの柱として入れる予定なんです。それは、今現在、合併特例法という法律が既にあります。市町村の合併の特例法ですね。これは、合併しても不利にならないようにという法律が現にあるわけです。

 それをさらに改正して、合併した場合の合併特例債を新たに過疎債並みの財政手当てをするというような誘導措置とか、そのほか、地域の中では取り残されちゃうんじゃないか、田舎の方へ行きますと、そういうようなみんな非常に不安感を持つわけですね。自分たちが取り残されるんじゃないか。そういう意味で、地域審議会というそういう事態になっても、自治体としては合併してもその地域が切り捨て御免の対象になるのではないんだという、やっぱりそこはきちっとした保障もしなきゃいけない。そういった手当ても今度の法改正の中に入れる予定でもあるわけで、そういう点で今まで以上にいわば合併促進のための、あめ、むちという表現があるから語弊があるんですが、いわば財政上あるいは行政組織上いろんな形でバックアップ体制を今までになくアクセルを踏んでいきたい、そのための法整備をぜひ今回は措置をしたいというふうに実は考えておるんです。

 期限的に十年というお話がありましたが、この合併特例法の期限が実は平成17年3月31日までの時限法になっておるんです。ことしは11年でありますから、あと六年で期限ということになっています。これを十年までに延ばすことにするのか六年で切るのかというところがありますが、余り延ばすよりもせっかく六年ということですから、この六年の間に精力的に合併が推進できるように全力を挙げていきたいと考えております。

○国務大臣(太田誠一君) 先ほど浜田委員の御提案の我々中央省庁の責任のある者、自治大臣を先頭にそしてまた都道府県知事、あるいは政令指定都市の市長あたりも含まれておるのかもしれませんけれども、そういう対等な立場でもって一つテーブルに着いて危機感を共有し、同じ覚悟でもって物事に取り組んでいくような場というのは大変すばらしい御提案でございます。もし自治大臣がイニシアチブをとっていただけるなら、私もぜひついたまいりたいと思っております。

○浜田卓二郎君 自治大臣、一言申し上げたいんですけれども、私は、自自は大変心外なんですよ。

 つまり、自由党は、例えば今の合併問題も含めて、大変いい主張をしてこられた。新進党時代からのいい主張を続けておられる。私はそれは評価しているんです。特に、自由党に結集している人たちというのは、自民党では改革はできない、だから出てきた人たちが多いわけでしょう。一緒になるのならば、そういうハードルをくぐれるかどうかで一緒になるべきじゃなかったですか。

 例えば、副大臣、これは技術論ですよ、言ってみれば。むしろ本質論は、例えば自治体の合併なんて簡単に言うけれども、これはもうみんな長いしがらみの中で生きていますから、そう簡単には進まない。財政投融資も、何か経済戦略会議が言っていますね、年金改革。年金改革は、これは厚生省も一生懸命やっていらっしゃいます。

 しかし、先ほどから金目のある改革とか言っていますけれども、要するに既存の仕組みというものを抜本的に見直す、既得権構造に切り込む、それがやっぱり私は自由党の主張だったと思うし、新進党、私も新進党に入っちゃったんですから、ちゃんとしてもらわなきゃ困るんだという気持ちは物すごくあるんですよ。そういう気持ちは変わっていないんですか。

 例えば、今の合併問題も本気で自民党政権にやらせる気がありますか。

○国務大臣(野田毅君) 両面ありますが、閣僚の立場として、自治大臣としては、まさに願ってもない仕事を仰せつかったと思っております。そういう点で、地方が本当に国つくりの姿として主体的にやっていけるように、やっていこうというのはまさに自治省として一番大事な仕事でありますから、この仕事を貫いていくということが新進党時代以来の思いを貫いていくことにつながっていくというふうに思います。

 同時に、これは先ほど来総理からもお話がありましたが、あらゆる分野において構造改革を断行していくというこのことにおいて両党首が一致をされて、そして具体的に先ほどるる申し上げました、時間の関係上それ以上申し上げませんが、その総理の意気込みを非常に受けとめて、大変ありがたいことだ、ぜひこれなら一緒にやっていける、私はそう思います。それは今までのやり方の反省もあった上で、小渕総理が、そういう形の経済政策にせよ構造改革問題にせよ、今日の日本の置かれている環境の中での時局認識としてとらえられたことだと、私はそう理解しております。

 それからいま一つは、両党間の協調の対象の中でむしろこの問題をこそ中心的に据えるべきではなかったかというお話。私は、できればこの問題もあわせて一つの柱としてあってもいいとは実は思います、それは。

 しかし、何度も申し上げておりますが、昨年11月に、今すぐやろうという仕事の中にどれを入れるかということは、かなり広範囲なテーマがある中から特に急ぐことということで党首が取捨選択をされたわけで、別に入っていないことをやらないというのじゃなくて、まさにこれから先を展望するときに、今までまとまった政策は協議に従って、合意に従って着実に実行に移されているということが決まったわけであります。

 したがって、この後、こういった市町村の合併問題等々について、両党間で今既に責任者同士で話がスタートしておりますので、私はこの面についても見るべき方向性が明確になっていくということを確信もいたしております。

○浜田卓二郎君 初心を忘れないでやっていただきたいと思います。

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