第百四十五回国会衆議院
行政改革に関する特別委員会議録

平成11年5月27日(木曜日)

○岩永委員 自由民主党の岩永でございます。

 中央省庁等改革関連法案と、そして地方分連の法案の審議に入って以来、この委員会でもまざまな議論をなされているのは、私たちじっくり拝聴しておりました。

 それらの議論の中には、野党委員の先生方を中心にして、一府十二省庁制は数合わせであり不十分な改革であるとか、国の権限の移譲が不十分であり地方の主体性は発揮できないとかいった意見が多く見受けられるように私には思われるわけでございます。これは、今回の改革の志向する最終的なビジョンがそれほど国民全体にまだ理解されていないということによるものではないかと私自身は思うわけでございます。

 太田長官もお話しになっておられますとおり、今回の改革は戦後五十年来の大改革であるということは私も承知をいたしております。しかし、それは、この法案成立後五十年間は改革をしないということではなくて、今後も随時改革を続行するということであろうと思いますし、国民のニーズに効率的かつ機動的に対応できる行政制度、地方が主体的に自分の地域のことに責任を持てる地方自治制度を確立するための出発点であろう、このように私は思っております。もう一度繰り返すわけでございますが、出発点であるということの確認はいいわけですね。

 そして、そのために、本来、行政改革によってどのような国家像を最終的に目指すのか。これら二法案の成立を出発点として、新しい行政制度の中でいかに次の段階に進んでいくかということを私は伺いたいと思うわけでございます。

 私も、二十年間県議会等で地方自治に携わってまいりました。そして、今回の行政改革、省庁改革、地方分権には、大変強い関心を持ってきた者でございます。特に、野田大臣のかなり強力なイニシアチブで地方分権の推進の第一歩が築かれた。野田大臣は、自由党で市町村を三百に合併しなさいという方向をお示しいただいているわけでございますし、かなり積極的な対応を志向してきておられるわけでございます。そういうような、党でお考えになられ、そして積み上げられてきたものを、今自治大臣として御対応になっておられるわけでございますので、その思い入れには大変大きなものがあろう、私はこのように理解するわけでございます。

 同様に、私自身も思い入れを持っておりますので、私自身がかく国家像、それから、これからの国、地方をあわせた行政のあり方についてひとつ述べさせていただきたい、このように思うわけでございます。

 一番基本は、市町村合併であろう。そしてその市町村合併は、基本的に多くの国の業務、そして県の業務を受けられる、そして行政自身が住民の身近なものに感じられる、そういう部分を遂行していこう。そして人口は、五十万、三十万、二十万、十万、五万と、政令市だとか中核市だとか特例市だとか、いろいろな形の中で付与していく権限というものをそういうところへ持っていこう、このようにお考えになっておられるわけですが、私は、ずっと今までお聞きしておって、適正な規模というのはどこか。その中で国ができるだけ仕事を、県ができるだけ仕事をおろせる規模というのはどこか。今二十万の特例市というものをお出しになってきておるわけですが、私はその中で付与すべき権限をずっと精査してみたのですが、まだまだこれでは合併したいという気持ちがわいてくるようなものではない。むしろ十万だとか十五万ぐらいでも、もっともっと多くの仕事を付与することができるのではないか、こういうように思うわけでございます。

 だから、これからはできるだけ国の権限というものを思い切っておろす、そしてそのことのために、合併のメリットを市町村にひとつ考えてもらう、そういうことを積極的にお考えいただきたい、このように思っております。

 しかし、今度は県でございますが、滋賀県の場合、百二十万の人口でございます。だから十万都市、二十万都市になりますと、五つから十ぐらいの市になるわけです。では、五つから十ぐらいの市で本質的に県が必要なのかということになると、私は、むしろ近畿全体のブロック、これは全国で十になるのか十二になるのかは別にいたしまして、市町村の権限が大きくなり、そして力を持った状況の中では、州制度でいいのではいなか、このように私自身は考えております。

 だから、その中から今度は県の職員が州へ移る、また各市町村の職員が合併していく。そうすると、おのずと総務課だとか企画だとか土木だとか、管理的なそういう部分というのは少なくなって、できるだけ住民の身近な本当の現場へ職員をおろすことになって、そこまでのことをやってくれたから、やはり我々の身近に行政サービスがしてもらえるんだ、そういう実感を味わうような具体的な方向というものを、やはり私は国民に説明してやってもらいたい。

 だから、自治体が主体的な合併を考えていくんだということもありましょうけれども、基本は、やはり国が改革をする将来像というのはこういうものだということの提示をしてもらう、そして具体的に、行政サービスが、今までは一つの町の中心ですべてをやっていたけれども、今度は部落まで出ていって、そして具体的な、皆さん方の身近な相談に乗り、お手伝いができる、サービスができる、そういうものを提示してもらうために、私は、県の合併、市町村の合併というものをそういう部分で積極的に行ってもらいたい、このように思うわけです。

 もう一方、太田大臣の省庁再編ですが、先ほども言ったように、数合わせであるんじゃないかとか、まだ具体的に国民として、大きくなっていって何がメリットかということはなかなか理解できないだろう、このように思います。しかし、やはり基本的、将来ビジョンを示して、理解できるようにしていかなきゃならない。

 よく言われるように、国というのは、外交だとか防衛だとか、そして金融だとか、国家的な部分のものを中心にする、そしてあとの部分は地方へ渡していく、こういう議論がよくされるわけですが、私も国会議員になってまいりまして、本当にそうであろうか。

 今の地方事務官の問題にいたしましても、やはり統一的にやっていかなきゃならない、そういう部分というのはある。だから、国がやらないということではなしに、国が現場におりていく、そういう部分というのをきっちりつくっていく。国の職員であり、国の作業をしていくけれども、やはり、近畿州なら近畿州のもとまで、東北州なら東北州のもとまで、きちっと国の行政機関がおりていく、そういう姿勢が大事ではないか。そのことを我々は支部支局と、このように言っているわけでございます。

 国土交通省の場合も、確かに、巨大官庁だ、こういうように言われました。そして、橋本総理は、基本的に河川と道路を分けて、そして国土保全省、国土開発省にするということだったんですが、縦割りの状況の中で、私は、割っていいんだろうかという疑問を当時抱いたわけです。

 むしろ、地方を考えるときに大事なのは、その地域全体を考えた都市機能は、川も道も、そして鉄道も港湾も、いろいろな部分が寄り合って都市機能があるわけです。だから、そういうものは、やはり一つのものとして考えていただく、しかし、おのおののブロックに分けて、そしてそのブロックの中でその地域全体を考えるような、支部支局というか、統括的なものができていくことがどうであろうか、こういうように私は考えました。

 国土交通省は確かに大きな巨大官庁だけれども、現場できっちり分かれているんじゃないか、だから地域の事情に応じて行政ができるようにできているんではないか、私は、そういうものをきっちりと見せてほしかった、こういうように思うわけです。

 国は、根元をスリム化していく、そして支部支局、それぞれの州にきっちりと現場として仕事をおろしていく、そして市町村も国から全部受けて立てる、そしてなおかつ、今度は近畿という州、東北という州の中で、広域的な、全体的な行政を考えていくというような形のものを私は私なりに描いておったわけです。そこまでやると、ああ、そうか、ここまで進んでくるんだな、今までは滋賀県と言っていたのを近畿州と言うんだな、これからは国も、遠いところのものじゃなしに、その現場までおりてくれるんだな、そういうような全体的な絵が私はかける。

 だから、今回のこの委員会も、そういう部分で、将来的にどうなるんだ、今はスタートだ、そして、ここまで、今まで五十年間できなかったことを思い切ってやってきたけれども、もう一つ踏み込んで、将来は、新しい二十一世紀に付与する行政機能というものはこういうものだというようなことの議論ができたら私は大変幸せであったろうと思うし、何か、今、蛇のしっぽを切ったような感じがするんですが、そのことについてはどうか、お伺いしたいと思います。

 私の考えについて、それぞれの御感想をお聞きしたいと思います。

〔委員長体積、杉山委員長代理着席〕

○野田(毅)国務大臣 広範な角度からの御意見をちょうだいして、基本的には、発想において相共通するものと受けとめております。

 今回、国の中央省庁の問題、それから国と地方との関係、この二つの関係について、特に一括して御提案を申し上げて、審議をお願いしているわけですが、共通する部分というのは、明治以降の国つくりのシステムというものを、国、地方を通じて、この際きちっともう一遍整理をし直そうということであり、その基本原則は、国でなければならない、あるいは地方自治体でなければならない、つまり、行政サイドがしなければらないことは極力小さくしようじゃないか、そしてできるだけ民間部門が、みずからの才覚において、みずからの責任において、そしてその自由な活動の中で動ける領域をふやしていこうじゃないか、そういう意味での規制緩和の部分、みんな一連の中にあるだろうというふうに実は考えております。そういった中で、本当の意味で、自立した個人なり、あるいは自立した地域なりというものが自主的にみずからの行方を決定できる、そういう仕組みをどうやってつくり上げていくかという角度が基本にある。

 そういう点で、自己責任と言うとちょっと大上段になりますけれども、ややもすれば、国と地方の関係においても、地方自治という言葉はあるんですが、実際問題、財政なり権限の面でかなりの制約を受けているものですから、結果として、そのことがある種のエクスキューズに使われてしまっているんではないか。だから、結局、人から規定をされていく、その枠の中で生きていくということに何となく不満を感じながらも、安逸な部分もある。それを、やはり自主的、自立的な自己決定というものを本当にきちんとつくり上げていかないと、国家としても個人としても地域としてもうまくいかないのではないかということが基本にあると思っています。

 そういう点で、今回、そういう意味での国と地方自治体の関係について、本当に戦後初めてこういう形で、終戦直後につくられた姿から、初めて、もう一遍きちんとした原則を打ち立てて、その中で、役割分担あるいは権限移譲等について、かなり網羅的、包括的に御検討いただいて、これが最終結論ということではないと思います。まだまだこれからも引き続いてやっていかなきゃならぬと思いますが、大きく前進したと思っています。

 その中で、時間の関係がございますからもう多くを申し上げませんが、例えば都道府県が現在行っております事務、機関委任事務、つまり国の下部機関として位置づけられる、そういう上下の関係でやってきた事務が、全体で、やっております事務の約七割から八割を占めているというふうに第一次勧告で言われておるわけでございます。今回、機関委任事務を廃止して、そして法定受託事務と自治事務ということに区分けをした。トータルでいきますと、その結果、大体二、三割と七、八割となっておった仕事の中身が、逆に、県では、自治事務がおおよそ七割、法定受託事務が三割という形に大きく逆転をしているということは大きな前進である。市町村においては、結果として、全体の事務の中で八五%程度が自治事務として位置づけられてきている。私は、この一つを見ても大きく前進をしていると思います。

 また、それを支えていくためには、お話しのとおり、その事務を遂行するための財政基盤、組織基盤あるいは人材の確保、そういったことを考えれば、やはり小さな規模では、市町村としてより大幅な権限を移譲しようとするときには限界があるということで、今市町村の合併を大幅に促進していかなければいけないというふうに考えておるわけでございます。

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