第百四十五回国会衆議院
行政改革に関する特別委員会議録

平成11年6月10日(木曜日)

○若松委員 これで実は予定した質問が終わってしまいました。

 時間がありますので、ちょっと、この点、総理と自治大臣と経企庁長官にお伺いしたいと思います。そんなに難しい質問じゃございません。

 まず、当然、中央省庁改革が終わって地方分権がかなり進みます。そうすると、税財源の移譲という形ですけれども、じゃ、果たしてこれから二十一世紀の地方自治体のあり方はどういうことなのかと。実は、この本質的な議論というものを確定しない限り、税制も変わらない、国と自治体の役割分担も変わらない、結局そういうことなんですよね。

 そういうことであれば、私の質問は、地方自治のあり方ということで一般に言われている議論は、例えば道州制という議論がありまして、じゃ、道州制とはどういう定義かという議論も実際になされないまま、数年前、選挙制度に絡めて十一ブロック、あのときも道州制の議論がありました。じゃ、これからの地方自治体は、結局、現在の例えば都道府県と市町村という二層制でやるべきなのか。

 基礎自治体をもっと、いわゆるミニ政令市みたいな形を今後つくる、そうすると、少なくとも三百から五百、多くても千以下、こういう形でのこれからの市町村になる。そうすると、県なり都道府県は、いわゆる調整機能、その調整機能というのも、全国的な調整機能もありますけれども、基本的にその地域、ブロックでの調整機能。一・五層になるかわかりませんけれども、こういう一層に限りなく近い調整機能。私は、こちらの一層方式がこれからの自治体のあるべき姿だと考えます。

 それについて、率直に総理、自治大臣そして経企庁長官のお考えを賜りたいと思います。これも、七月二十四日、我が党の臨時党大会へ向けまして、今、基本政策を激論しております。ひとつ御所見のほどを伺いたいと思います。

○堺屋国務大臣 大変未来的な御質問でございまして、これからの自治制度がどうあるべきか、これは、総理大臣から経済戦略会議に出されております2010年のあるべき姿という中でも、いろいろと議論されております。その中に、もちろん道州制あるいは府県合併ということも視野に入れて検討しておりますが、現在の段階では、やはりまず市町村の合併が先行すべきではないか。そして、かなりの時間を置いて、研究期間を置いて、次の問題をどう取り組むべきか。その場合には、首都機能の問題等、日本の地域構造全体を含めて考えなければいけないと考えております。

 これからの国のあり方を考えますと、それぞれの個人が独立した状態が立つ、そして、その基礎の上に個人の自助の延長として自治がある。今までの考え方は、自治体というのは国の権限を分けたような考え方でしたが、自助の精神の延長として自治があるという姿になるべきだろう、こう考えておりますが、その府県、市町村の構造としては、なおよく研究する問題がたくさんあると思っております。

○野田(毅)国務大臣 大体、方向性において、どういうようなやり方で仕事を分担していくのが一番いいのか、率直に言って、まだ今のところ結論が出ているところではないと思っています。

 ただ、道州制という場合に、その道州がどの程度の権限を持ってやっていくのかということが、まだ今のところ明らかでないわけであります。つまり、道州が、現在都道府県が持っているような権限を発揮して、その下にさらに市町村、そういう意味での国、道州、市町村という三層構造をイメージするのはどうかということまで突っ込んだ議論というのは、実はなかなかいっていないように思います。

 そういう中で、基本的に、全国を大体三百の基礎自治体にやっていこうという考え方ももちろんあるわけで、その場合には、基本的な考え方としては、むしろ、道州というのはそういう権限を行使するようなことではなくて、言うなら調整機関的な、そういう意味では、地方自治体としては一層構造みたいなことが発想の基本にあるのではないかと考えております。

 この点については、いずれ都道府県自身の合併ということをも視野に入れて中長期的に検討しなければならないということは、地方分権推進委員会においてもいろいろ御議論をいただいてきたわけであります。

 当面、今急いでやるべきことは、国、地方を通ずる行政の簡素効率化ということと同時に、地方自治体自身が自主性、自立性をより高めていくためにも、その受け皿としての行政体制の整備をしていく中で、市町村の合併をさらに推進して、その財政力なりあるいは事務遂行能力なり、組織的、財政的さまざまな基盤を強化するということを当面急ぐべきことではないかという点で、今回一括法の中で合併特例法の改正を盛り込んで、今は都道府県の合併ということよりも当面市町村合併ということに重点を置いて御提案申し上げておるという状況にございます。

 将来どうあるべきかというのは、もう少し御議論をしていただく、各方面からの議論が必要な部分があるのではないかというふうに考えております。

○小渕内閣総理大臣 新時代にふさわしい地方のあり方ということで、分権一括法で今日御審議をちょうだいいたしております。道州制の問題とかあるいはまた三百の自治体を一つの基盤にして進めるべきだとかいうことで、世に問われている点は多々ございますが、当面といいますか、今日は、この分権法によりまして新しい地方のあり方というものを目指していくことが必要ではないか、このように考えております。

○若松委員 経企庁長官と自治大臣は、お二人とも市町村合併というところの必要性を強調されました。

 それで、おととい仙台の地方公聴会に行きまして、では皆さんどういうことを言ったかというと、やはり市町村合併は地元に任せてくれ、こういう御意見なんですね。ところが、残念ながら、補助金とか地方交付税とかの比率がかなり高くて、財源がなしで、自治意識というのは、やはり頼っているところが、甘えの構造なんですね。

 じゃ、市町村合併をみずからが、住民の方が選んでくるかというと、結果的になっていない。そこら辺で、どう考えたって自治体、地元で市町村合併を組み立てていくというのがベターなんですけれども、やはり長年の日本の中央集権の歴史からするとそれもできないというところで、恐らくこれはいずれにしても英断が必要になってくると思うのですね。

 ですから、そういった観点から、やはり国の早急の、一層制なり二層制なり、私は一層制、恐らく野田先生も本音は一層制ではないか、かなり一層制だと思うのですけれども、でも当面市町村合併をやらなくてはいけない。

 この市町村合併というものをさらに推進するための施策なりこうあるべきだというもの、将来の検討課題でも結構ですから、もし御意見がありましたらお二人に聞きたいと思います。

〔委員長退席、岩永委員長代理着席〕

○野田(毅)国務大臣 今回の地方分権一括法案の中で、今申し上げました合併特例法の改正を盛り込んでおるわけです。

 その一つの特色は、若干専門用語で恐縮ですが、いわゆる合併算定がえに関する問題とかいうことだけではなくて、その中でコミュニティーといいますか、そういうようなところが合併されて、自分たちの考えが飲み込まれていってしまって、地域の個性がなくなってしまうのではないかというような不安があるものですから、そういったところについては地域審議会というものを位置づけて、コミュニティーの個性なりというものをどう生かしていくかということ。それから、行政体制としての地方公共団体というものとそこはある程度切り離した発想があっていいのではないか。コミュニティーのよさは残していけるような方策、これは今回非常に大きく、今までにない特色であろうかと思います。

 それから、合併特例債というものを新たに創設することによって、かなり財政的にも、単なるマイナス面を消去するということだけでなくて、プラス面をさらに加速するというようなことをも含めて対応したところであります。

 それで、都道府県との関係について言及されたわけですが、実際問題、市町村の合併をそれぞれ促進していこう、推進していこうという場合には、やはりその都道府県の協力というか、ある種の指導というものがあわせて実際に並行して行われませんと、なかなか現実には進まないわけであります。そういう意味で、この法案が成立をさせていただきますならば、できるだけ早期に、そういう都道府県に対して市町村合併のためのガイドラインをお示しして、その上で具体的な対応をお願いしていきたいなと考えておるわけです。

 そういう意味からいえば、事柄の手順からいうと、まず市町村合併の方を優先する、都道府県の合併等に関してはもうちょっと時間がかかるのではないか。特に都道府県に関しては、もう百年余りの歴史を持ち、それなりに行政機構として定着しているという現実の姿も実はあるわけでありまして、今どれを優先して急ぐべきかということからいうと、くどいようですが、市町村合併をまず優先して処理をしていきたいというふうに考えておるわけです。

○堺屋国務大臣 委員御指摘のように、自治体をどうつくるかというのは、まさにそこの住民の御意見、これが第一であることは間違いないと思います。

 日本の市町村の歴史を見ますと、明治にできたときは約三万ございました。それが昭和の戦前に一万二千ぐらいになりました。そして、終戦直後、五年ぐらいの間に三千六百ぐらいまで減りまして、それから今日、三千二百数十という形で、余り変わっておりません。この歴史を見ますと、なにらかの機能、仕事ができたときにやはり市町村が合併しているということは事実でございます。

 日本の住民は私は大変利口だと思いますので、市町村の機能というものが変わってくると、それに合わせて規模も選んでいく。もちろん、その中で小さい規模でも自分たちで守りたいという独自のところもあっていいわけございますが、大きな流れとしては、そういう形が出てくる。終戦直後にどっと減りましたのは、やはり新制中学をつくるということと関係があったと心得ておりますが、今度の、いろいろこの分権法などが与えられると、そういう刺激効果が出てくるんじゃないかと思います。

 そして、そういう中で、今まで行政がやっていたことの一部がまたNPOとかそういうコミュニティーの世界に戻っていって、そして国のやっていたことが地方にも行くというように、順次この住民の身近な組織に移っていく、その中で市町村合併が刺激をされて進むんじゃないか。県の方は、今自治大臣が答弁なさいましたように百年続いていますから、これはなかなかでございますが、私は、やはりこの合併あるいは道州制も視野に入れて検討すべき時期が近づいているんじゃないかと考えております。

○若松委員 貴重な意見、ありがとうございました。これで質問を終わります。

 ありがとうございました。

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