第百四十五回国会
参議院行財政改革・税制等に関する特別委員会会議録

平成11年6月15日(火曜日)

○吉村剛太郎君 よくわかります。確かに今の府県制といいますのは定着をしておりますし、そこに住む県民、府民といいますのも県民愛、郷土愛、そういう精神的ないわゆる一体感といいますものを持っておりますし、確かに今後の課題であろう、このように思っております。

 ただ、しかし、やっぱり地方分権といいますのは、どうしても今の三千三百の自治体そのままでこれを受けるということはこれはかえって効率が悪いという、これはもうだれもが認めるところです。これをやはり幾つかにくくっていくということの中に先ほどから話がありました特例市、中核市、政令市といいますものがあるということになれば、先ほど申しましたように、そこに権限が順次移譲されていくと、県の存在というものが空洞化してくるということになてくるわけですね。

 それと、私と自治大臣は熊本県と福岡県で隣同士でございます。福岡県の大牟田市、国道を通ってずっと行きますと熊本県の荒尾市に入ります。ただ車で走っているといつ入ったかわからない。ずっと歴史的に一緒にやってきた。今度、一昨年、三井鉱山が閉山になりました。その痛みも一緒に味わってきた。お祭りもほとんど町並みで一緒にやってきておるというときに、県のくくりの中で調整するのを越えて、もう県境をまたいで中部九州として何らかの施策なり、合併とは申しませんが、そういうことも視野に入れていいんではないか。このように思いますときに、今申しましたように地方分権の必然はやはりこの自治体のくくりにある、そして権限移譲にあると。

 これをずっといきますと、やはり広域府県を越えた合併ということ、それからさらに道州制ということまでも視野に入れて論じていかなければ、確かに今は幼稚園の話です。しかし成長して大学に言って大学を卒業する、日本の二十一世紀の形といいますものを論じるときに、幼稚園だからといってこれを視野に入れないというのはいかがなものか。自治大臣のお考えを。

○国務大臣(野田毅君) 御指摘のとおりでございまして、全く視野に入れないというわけではございません。この点は地方分権推進委員会においても指摘もされておりますし、計画におきましても都道府県の合併という問題も中長期的な視野において検討するようにということも現に指摘もされておるところでございます。特に、今御指摘のございました大牟田市と荒尾市、まさに私の選挙区でもございまして、石炭問題で本当に一体的に共通の課題、苦しみ、テーマを抱えている地域でもございます。本当にこういうところを見ますと、一体これをどういうふうに対処していくのか。そういう点で、今言いましたいずれ府県間の合併問題というのはかなり真剣に行われなければならぬなと。

 その際、役割分担というものが、先ほどちょっと申し上げたんですけれども、どういう形であるにせよ、それぞれの自治体間の調整ということは当然必要になる作業でございます。そういう意味で、都道府県が今県内の市町村に対して行っておりますいろんな権限がございます。これが、今政令指定都市なり、あるいは中核市なり特例市ということになれば大幅にそれぞれの市に移譲されていくんですが、独自で、他の自治体と無関係に自分で決定していくという範囲における自主性、自立性を高めていくというのは、これはこれで大いに促進すべきだと。問題は、それぞれの自治体間の調整作業みたいな、一緒にやらなければ意味のないというか、かえって混乱をするとか弊害を招くというような事務事業というものも現にあるわけで、そういった意味での都道府県の役割というものは、名前がどうあろうが、何らかの形で調整作業というものは必要になっていく側面は残るのではないか。そんなことはイメージとしては当然予想されるわけでございます。

 道州制につきましても、ずいぶん昔からいろんな議論がございますが、ではその道州にどういう権限を付与するのかということについては、まだ必ずしも画一的な議論に収れんしているわけではないようにも思います。そういう点で、視野には入れつつも、まだ今ここで結論を出すわけになかなかいかぬのじゃないか。

 ただ、大きな方向性として、まさに基礎的な自治体を強化する、その権限を強化する、その自主性、独立性をより十分に保障していくということを一つの原点として、それを基礎にして物事を展開していくという発想法というのは非常に自治の本質と私は考えておりまして、トータルの方向性は大体共通認識があるのではないかというふうに考えております。

○吉村剛太郎君 よくわかりました。今後の大きなテーマとしてこれから我々国民全体がこの地方分権に取り組み、そして将来の課題として考えていかなければならない問題であろう、このように思っております。

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