第百四十五回国会
参議院行財政改革・税制等に関する特別委員会会議録

平成11年6月15日(火曜日)

○石井一二君 自由連合の石井一二でございます。

 会派二院クラブ・自由連合を代表して質問をいたします。

 本日は十分間お時間をいただいておりますが、答弁が長くなると言いたいことが言えなくなりますので、しばし所見を申し上げ、最後に総理と自治大臣より一問ずつ御所見を賜りたい、そのように思います。とは申せ、五時が追っておりまして数分後にはカットになってしまいます。小会派の悲哀を感じつつ今ここに立っておるということも御理解を賜りたいと存じます。

 さて、総理の今国会における一連の御答弁等を聞いておりますと、今回の分権一括法は、我が国の中央集権型の行政システムの中核部分を占めてきた機関委任事務制度の廃止とか国の関与のあり方の見直し等抜本的な改革を行うもので、国、都道府県、市町村というこれまでの縦の関係を変革して対等、協力の横の関係を構築しようということでございまして、事実かなりの権限の移譲が国から県あるいは政令指定都市、中核市、特例市、市というぐあいに行われておることは事実でございます。また、総理も一連の答弁の中で、これでもって地方分権が完成したとは思わない、これからもどんどん地方分権を進めていくんだという前向きなお考えを示しておられることを評価するものでございます。千里の道も一歩からという言葉がございますが、さしずめ私は一歩どころか二十歩三十歩というように進んでいただけたと思っておるわけでございます。

 ところが、地方分権というとすぐに財源、権限をよこせとか、あるいはまた国庫補助金の統合的な補助化、すなわち箇所づけとか、そういった事業の選択時も一括して地方によこせ、こういうような意見が出たり、また国の仕事は外交ほか災害とか国防とか教育とか基本的なことにのみ限ってあとは地方に任せというような意見がありますが、私は、これについては時期尚早ではないか、受け皿としての地方自治体に果たしてそれだけの体制が整っておるのかどうかということを論じてみなければならない、そのように思うわけでございます。

 私は、さしずめ次の四点を今後どうしても検討する必要があるというように感じております。

 一つは、首長の多選禁止の実現であります。二番目が地方自治体の合併の推進、これは今回一応の成果を上げつつありますが、例えば住民投票制度を採用するとか、強制的な面で力が弱いように感じております。また、地方議会の少数精鋭化、これも一定の規定というものが今回行われつつございますけれども、例えばボス議員のエゴに対する議会としての自浄能力の培養といった面でいろいろ反省していただかなきゃならない面もあろうかと思うわけであります。また最後に、地方公務員の資質の向上、すなわち権限とか財源をもらっても果たして適正に国民の真の幸福を求めて仕事がこなせるものかということも私は論議をする必要があると思います。

 こういった中で、特に私はこの場で首長の多選禁止の実現について若干論陣を張ってみたいと思うわけであります。四年前に私は同僚議員約二十名の賛同を得まして議員立法で首長の多選禁止法案を上程いたしました。委員会での趣旨説明まで行ったわけでありますが、残念ながら日の目を見なかったわけでございます。

 よく言われますように、首長は大統領並みの権限を持っておる。すなわち予算の編成、またその執行権、人事権、許認可権、補助金の配分等々に深く関与し、絶大なる権限があるわけでございまして、そのこと自体は即、悪いということではございませんが、私は、ある程度の期間在任の後、フレッシュな感覚でどんどんバトンを次の人に渡していくという考え方があってしかるべきではないかと思うわけであります。

 昨今の地方議会を見ておりますと、多選化、各政党が権力にする寄っていくような形での総与党化というものが目立っております。そして、議会の審議がしたがって、審議機関ではなしに追認機関になっておるのではないかというような気もいたすわけでございます。片や、首長による汚職の摘発等も二、三年前にはいろいろマスコミ紙上をにぎわしまして、我々政治に関与する者も恥ずかしい思いをしたわけでございます。

 私は、ここに贈収賄事件の関係資料として過去二十五年間の累計を持っておりますが、二百八十八件が立件されております。そして、これはもちろん知事から市長とかと細分があるわけでありますが、時間の関係で省略をいたしますが、こういった原因案件は、公共土木、道路工事をめぐるもの、あるいは各種許可、認可等をめぐるもの、職員採用をめぐるもの、用地の買収、払い下げをめぐるもの等々で、それぞれの案件も出ておるわけでございます。

 こういった中で、知事の政治献金ということになりますと、選挙をやらない普通の年でも優に億を上回る金額が集まる。選挙の年になるとなおさらでございます。私は、ここに各知事のいわゆる政治資金一覧表をつくって持っておりますけれども、この場でそれを公表することは差し控えたいと思いますけれども、私が申し上げんとすることは、やはり多選の弊害というものはないことはない。よく、立候補の自由を制限することは憲法違反であるとかいろんなことを言われますけれども、例えばアメリカ、ドイツ、メキシコ、フィリピン、韓国等々、大統領、知事の多選を禁止しておる国というのは日本と同じように民主主義を施行しておる。こういった中で、そういった国々がなぜそういうことをやっておるかということも私は考えてみる必要があると思うわけであります。

 ここに一冊の本がございますが、題名が「知事成金」という本であります。これは大宮知信さんというジャーナリストが明日香出版社から出した本でありますけれども、いろいろ知事の錬金術について書いてある。私は、地方分権は今後ますます進めていかなければならないけれども、私が申した四つの点についても、総理がおっしゃる、これからもどんどん進めていくんだという中においてぜひ御検討をいただきたい、そのように感ずるわけであります。

 あと三分でございますので、ぼつぼつ質問に入ります

 まず総理に、私が今申したことをひっくるめて、二合目か三合目か知りませんけれども、今後地方分権を徐々にどんどん進めていく中においてひとつ御所見をご披露願いたいと思います。

 それから野田大臣でございますけれども、この自治法、市町村合併特例法を見ておりますと、施行が、地方議会の議員の定数関係のみ平成15年1月1日と、気の遠くなるほど先の日時が指定されておる。もちろん、地方統一選挙があるんだよということでありましょうが、地方統一選挙はぽつぽつといろんなところで行われておる。せっかく法律をつくるんだから、私はここは一考に値すると思うわけでございまして、衆議院でもこういった質問が多少出たやにも聞いておりますが、ぜひ前向きな御答弁を期待したいと思います。

 では、御両方よろしくお願いを申し上げます。

○国務大臣(小渕恵三君) ただいま石井議員から御指摘をされました四点、市町村合併、それから地方議会の活性化、それから地方公務員の資質向上、いずれも地方分権の実を上げていくために地方公共団体の側で取り組んでいかなければならない審議課題であります。また、最後に申されました首長の多選禁止につきましては、現在、自治省において学識経験者による研究会を設け調査研究を進めているところでありまして、各党各会派において十分御論議をいただきたいと考えておるというのが私の答弁でありますが、私も長い間国会に在籍させていただきまして、何回かこういうことでお取り上げいただいた先輩の諸先生方がおることも承知をいたしております。こうした問題につきましても、政治の立場からの勉強も必要ではないか、こう考えております。

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