第百四十五回国会
参議院行財政改革・税制等に関する特別委員会会議録

平成11年6月15日(火曜日)

○石渡清元君 今の市町村、数で言いますと平成10年で全国で三千二百三十二、そのうち市が六百七十でございます。六百七十の市のうちに人口が五万以下の市が33%、十万以下が33・6%でありますので、十万以下が66・6%と圧倒的に多いわけでございます。十万以上ある程度の規模を持った市ならいいのでございますけれども、この市の受け皿あるいは市町村合併についてどういうふうに考えていくか。

 町村で申し上げるならば、人口一万人以下の町村が59・5%、約六割でございまして、二万以下が27・4%でありますので、もう二万以下の町村の数が全体の87%近いという状況でございます。

 したがって、市町村合併というのはこれから地方分権を推進するに当たってどうしても避けられない、そういったような状況でありますけれども、なかなかこれが考えているように進まないのが現状でございまして、そういう面で国も県も何かリーダーシップ、インセンティブを持たせながらそれを図っていかなければならないのではないかと思いますけれども、大臣の御見解をお伺いします。

○国務大臣(野田毅君) おっしゃるとおり、そういう国、地方の役割分担の中で、従来以上に地方公共団体のなすべき事務量がふえていく、しかもさらに自主性、自立性をより強化して自己決定していっていただくというような分野が広がっていくということになりますれば、当然のことながら、自治体としての組織力なり財政力なり、そういったいわば受け皿としての基礎的な体力、能力というものをどうやってレベルアップしていくのか。一方で、行政需要そのものも、福祉の分野であったりいろんな専門的な知識を有するような職員も自前で確保するという、そういうような行政サービスそのものの充実、高度化というようなことも考えていかなければならない。

 そういうことを考えれば、今御指摘のような小規模な人口で果たしてどこまでそれだけのことの対応ができるのかということを考えるとなかなか厳しい状況にある。

 そういった点で、今まで一部事務組合なりあるいは広域市町村圏なり、あるいは広域連合なり、そういう形でテーマごとに共同して処理をしていこうという試みというか、そういうことも現にやっていただいておりますが、より総合的な形での自治体そのものとしての普通公共団体としての姿として市町村の合併という形で総合的な能力、レベルアップといいますか、そういったことを目指していくということは非常に大事な一つの視点であると考えております。

 そういう点で、今回この法案の一つの柱として国と地方の役割分担をはっきりさせる、そういう中で機関委任事務というものを廃止して地方自治というものをよりしっかりと位置づけていくということのほかに、その受け皿としての市町村合併の推進、そのための合併特例法の改正ということも盛り込んだわけでござます。そういう点で、今御指摘のとおり、合併の問題というのは非常に大きなテーマの一つであると考えております。

 ただ、この合併は、まずは地域の住民が主体的に進めていただくということが基本ではございます。しかし、ただそれだけで、ゆだねているだけで本当にいいのか。そういう点で、さらにそれを強力に推進し、バックアップ、支援をしていくような体制ということも必要ではないか。そういう点で、今回の合併特例法改正の中で都道府県が果たすべき役割も非常に強いわけでございますし、そういう意味で市町村に対する、合併協議会に関する都道府県の関与というもの、あるいは特に合併に際して小さな自治体が立ちおくれるのではないかというか、取り残されるのではないかとか、その種の懸念も現にあるわけです。

 そういったことに配慮して、そうならないように、旧村といいますか、旧自治体の地域において地域審議会というものを設置して、そこで必要な行政ニーズをどのように自治としてとらえていくのか。また、その地域のいろんな行政サービスなり社会資本の整備なり、そういったことのためにどういうふうにそれをバックアップしていくかということを含めた形での地域審議会の創設、それからさらに、合併特例債というような形で財政的な支援措置を講じていこう。さまざまな支援措置を今回この中に含めてご提案を申し上げているということでございます。

○石渡清元君 地域の自主性を十分尊重し、自己決定のもとでというお話はよくわかりました。

 ちょっと細かい具体的なお話になりますけれども、この前、自治省の市町村合併研究会が合併後の人口規模に着目した市町村合併の五類型を報告として出しておりますけれども、この五類型、特に人口が小規模の類型、なかなか難しいと思いますけれども、具体的にこの五類型については政府はどのような方針でお取り組みをされるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

○国務大臣(野田毅君) これは、市町村合併について、それぞれ地域の実情を考えますと、一律の基準で適正規模を示すというのは、なかなかそれぞれの置かれている歴史的あるいは経済的、人の交流、さまざまな文化的背景等々もあるわけで、そういう意味で一律の基準はなかなか難しいのかな、こういうことは言えると思います。

 そういう中で、先日、市町村合併研究会から報告をちょうだいいたしたわけでございます。そこでは、中核市、特例市への移行を目指した人口三十万人あるいは二十万人程度の類型。それから、本年4月1日に兵庫県の多紀郡で四町が合併をされまして、篠山市というのが誕生したわけです。こういうような市制移行を目指した人口五万人前後の類型など、合併後の人口規模に応じた市町村合併の類型が示されておるわけでございます。

 今後、都道府県において市町村が合併を検討する際の参考や目安となる合併のパターンを作成するに当たって、これらの類型を基準として、一つは通勤通学圏、商圏等といった住民の日常社会生活圏や広域市町村圏等による結びつき、あるいは自然的、地理的結びつき、歴史的、文化的結びつきといったさまざまな市町村の結びつきなどについてもあわせて考慮することが必要でございます。

 今後、これらの研究成果を踏まえて、自治省としても、地方公共団体に対して市町村合併推進のガイドラインをできるだけ早くお示しする予定でございます。

○石渡清元君 なかなか小さい市町村というのが、いろいろネックがあろうかと思います。この前の経済戦略会議で、全国三千二百ある市町村を少なくとも千以下に減らすというようなそういう目標の答申が出ておりますけれども、そのためには、小規模自治体の不利な点はこうだとかある程度具体的に指摘したり、合併しないと不利ですよというような具体的な話をしていかないとなかなか難しいんじゃないか。

 そこで、全国の市町村数とかあるいはそれぞれの規模というのを何か自治省ではお持ちなのかどうか、その辺についてはいかがなんでしょうか。

○国務大臣(野田毅君) 先ほども申し上げたんですが、市町村合併について、それぞれの歴史的、文化的あるいは地理的な背景、人の交流、いろんな諸条件が重なっておりまして、なかなか画一基準でもって対応することは難しい。そういう意味で、機械的にようかんを切るようなわけになかなかいかぬところもあるということで、数についての対応であらかじめ数字を決めてどうのということはなかなか言いがたいところではあると思っております。

 しかし、実際、戦後、市町村の合併を言うなら国策として推進したとき、約一万ぐらいありましたものが三分の一に減ってきた。それから、それぞれ政党においてこの問題について御議論をいただいている中で、自民党においても自由党においても、政策担当者の中で意見交換をしていく過程の中で、現在おおよそ三千三百あるものを当面今御指摘がございましたような千程度にするというのも、大方そんなところかなというような雰囲気もあるというふうに承っております。中には、いずれそれを三百まで持っていくんだということを主張している、基本政策としている政党もございます。

 ただ、一足飛びにそこに行くのはなかなか行きにくいかとは思いますが、少なくとも当面そういった形で、千程度というのはおおむねの方向性として各党の中でもほぼそういう形に話が進んでいるのではないかというふうなことを念頭に置いておることも事実でございます。

 しかし、大事なことは、やっぱり住民自身がこの点について、自分たちの主体性によって進めてもらうということが本当は一番大事なことなので、何とかそこを理解していただいて、そういう手順で進められればなというふうに考えております。

○石渡清元君 規模論議はもうこれで終わりたいと思います。

 それでは、厚生大臣、来年の4月から実施される介護保険制度でございますけれども、広域行政を推進することによって、いずれは合併という可能性を探る上でもいいチャンスと思っておるわけでございますけれども、広域での事業が、ことし3月で現在四百四十二市町村で全体の13%程度しか広域で介護保険をやろうというような数字は残っていないのでございまして、もっと私は広域処理を積極的に介護保険導入に当たってすべきじゃないかと。いろんな問題はありますよ、財源の問題。と思いますけれども、広域行政、市町村合併等々の観点からは、介護保険を軸にしたときにどのようにお考えになっているか、ちょっとお伺いをいたします。

○国務大臣(宮下創平君) 介護保険制度の実施につきましては、法定されているとおり来年の4月からこれを実施する方針はいささかも変わってございません。市町村その他保険者の大変な御協力、あるいは事業者の関係者の御協力等をいただいて、これが積み重なってきて努力がなされておるという現状でございます。

 そのうち、認定につきましては、本年10月から正式な認定が開始されますが、この認定事務につきましてはかなり広域化しようという市町村が多うございまして、これは、介護認定審査会の委員の確保がなかなか困難であるというような点、医師、看護婦等でございますが、効率的な事務処理をやるためには一部事務組合等で広域化した方がよかろうということ、それから公平な認定を各市町村間でやる必要があるというような観点から私どもとしても望ましいものと考えておりまして、認定はかなり進んでおりまして、今、全国の四百五十一地域で二千五百以上の市町村で広域化の認定をやろうということに相なっております。

 一方、今御指摘の点は、介護保険財政面における介護保険の事務全般を広域化することについてだと存じますが、これは広域化いたしますと、市町村間の保険料の格差が解消できる、それから安定的な財政運営が比較的容易に行われ得る、それから施設とか在宅サービスに関する介護保険事業計画を定めることになりますが、これを共同で作成することによりまして広域的な区域で均衡のとれたサービス基盤を効率的に整備できるというような利点がございますので、私どもとしては、法律の建前はあくまで保険者は行政主体である市町村にお願い申し上げておりますが、その広域化も否定するものではございませんので、そういった見地から、広域化についてはなお一層地方の選択が行われればこれを積極的に事務体制の整備その他で御支援を申し上げ、広域連携のシステムを充実させていきたいというように考えておるところでございます。

○石渡清元君 確かにこの介護保険というのは国からの事務や権限の移譲ではございませんけれども、非常に市町村にとっては大きな仕事になるわけでございまして、特に新たな住民負担も加わってくるわけでございますけれども、市町村によっては、とにかく今までの、これから行われるであろう介護保険のレベルよりももっと自己責任において充実したものにしようという市町村もこれあり、一方では、全部介護保険というのは国民同じレベルじゃなくちゃいけないんじゃないか、そういったような議論がござまして、これをどう調整するかというのは非常に難しい問題かと思います。僕は、この介護保険というのは、やり方次第ではこれからの市町村のあり方を変えていく可能性が非常に大きい大きな制度ではないかと思うわけでございます。

 そこで、よりすばらしい、よその市町村よりもいいサービスを行おうというそういう市町村と、片や介護保険というのが全国一律横並びのものじゃなきゃいけないという考え方、そこに保険料の差も出てくるわけでありますけれども、この双方の考え方については、厚生大臣としてはどういうふうに考えられるのか。

○国務大臣(宮下創平君) この制度をつくるときの基本的な考え方といたしまして、保険者を全国一律にしたらどうかという議論が立法過程であったようにお伺いしております。しかし、また介護というのは地域住民と極めて密接な関係を持っておる行政でございますから、これは地域に任せた方がいいということで、保険者を行政主体に任せたほうがいいという両論があったようでございますが、結論として、国会の御意見も市町村を単位として保険者とするということになりました。

 しかし、これは強制保険でございますし、一応国が基準を定めてやる保険でございますから、余り地方団体によって格差があることは好ましいことではございません。したがって、格差のあることは前提としつつも、つまり今の福祉政策でやっている介護の実態が市町村によってばらつきがございますから、それを前提とした場合には当然保険者が市町村であればばらつきはある程度生じますが、将来的には保険料とそれから給付の関係のバランスがとれて、委員のおっしゃるようにある程度平準化していくことが極めて望ましいと思います。これは将来の課題だと存じます。

 一方、今行われておる広域化の問題は、一部事務組合ないし広域連合の形で行われておりますけれども、これによって地域間で自発的に協定していただいてその機能を広域化の中で果たしていただけるということであれば、私どもとしてはこれは否定すべき問題ではなく、むしろ歓迎したいというようなつもりでございますから、一部事務組合、広域連合による保険者の統合運用も大いに歓迎はしたいと思います。

 一部の県におきましては、政令指定都市を除きましてほとんど広域連合でやるという動きすらございますけれども、ある程度適正な規模でやる必要もございますので、府県単位で全部統一するというような考え方はございませんが、ある意味で広域化を進めていただくことに対しては、いろいろの面で先ほど申しましたような助成策を講じていきたいというように考えておるところでございます。

○石渡清元君 いずれにいたしましても、行政サービスの受け手である地域の方々の選択にもよろうかと思いますけれども、結局は、合併等々は財源措置をどう手当てしていくかということに相なろうかと思います。

 今回の一括法において、普通交付税の算定において、合併しなかった場合の交付税を十年間全額保障、あるいは合併特別債の発行が認められ、その元利償還金を基準財政需要額に算入するという措置が盛り込まれております。今後、優遇措置の内容を強化して、ぜひひとつ総理がリーダーシップをとって市町村合併、いわゆる広域化を推進していただきたいと思いますけれども、総理の御決意をお願いいたします。

○国務大臣(小渕恵三君) 市町村合併のインセンティブを高めるための優遇措置として、本法案中に市町村合併特例法の改正といたしまして、第一に、合併市町村の一体性の確立のための公共的施設整備事業や、旧市町村単位の地域振興等のための基金を積み立てるなどの財政需要に対応するための合併特別債の創設が含まれておるわけであります。

 第二に、合併後につきまして、合併前と同程度の普通交付税の額が保証される算定特例期間、合併算定外の期間の延長でありますが、従来五年のものを二倍の十年に延長するなど思い切った措置を盛り込んだところでございます。

 このほかにも、合併後の町づくりの支援や合併の障害の除去などのためのさまざまな支援措置を検討しておりまして、これらの措置によりまして市町村合併を積極的に推進してまいりたいと存じます。石渡委員御指摘のように、せっかくのことでござますので、ぜひそれが助長できますように政府といたしましてはあらゆる手段を講じて努力をいたしてまいりたい、こう考えております。

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