第百四十五回国会
参議院行財政改革・税制等に関する特別委員会会議録

平成11年6月30日(水曜日)

○山下八洲夫君 時間がございませんので先へ走りたいと思いますが、感想的に申し上げますと、権限移譲にしましても私はまだまだ不十分だと思います。特に税財源につきましては大変不満を持っております。

 きょうの委員会でも、余り権限を地方、地域へ移すと心配だというような質問もございましたが、私は、何といっても国民が主役であって、国民あって国があるわけでございますから、そういう意味で申し上げますと、まず地域も十分大事にしていただきたい、そのように考えております。

 ですから、先ほどもちょっと申し上げたわけでございますが、極論的にあえて申し上げますと、国で行うことは外交でございますとか防衛でございますとか通貨でありますとか、あるいは社会的規制が必要な道交法のような問題でありますとか、あるいは教育にいたしましても憲法に権利義務のことがきちんとうたわれているわけでございますからその範囲で後は地域に思い切って任せていく、やはりこれぐらい国が行うことによって大改革だなというふうに思われますので、これは意見として申し上げておきたいと思います。

 そして、地域主権を認めるためにはどうしても私は市町村合併を進めざるを得ないと思っております。住民に最も身近で基現的な地方公共団体でございます市町村の権限をいろいろと大きくしていかないといけないわけです。それと同時に、住民サービスを充実させなくてはいけない。そうしますと、今の三千三百の規模でいいか。これは皆さんはいいとは思っていないと思います、率直に申し上げまして。そういう意味では、一定の規模の団体が必要になってくるのは当然のことであろうと思うんです。

 ただ、市町村合併をするのも、あくまでも地域の住民が主役になった、住民の声を聞きながら自主的に解決、決定をしていく問題だと私は思うんです。

 今回の一括法案の合併特例法の改正を見ますと、都道府県知事による合併協議会設置の勧告が盛り込まれるているわけでございます。地域における自主的な取り組みを無視して、その裏では国が都道府県を通じて市町村の合併の推進を図ろう、そのような意図があるんではないかなという気がするわけです。そういうことをなされると地方分権、地域主権に反するんではないかと思いますが、自治大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(野田毅君) 基本的な考え方は、今御指摘がありましたようにそれぞれの地域の住民が主役でありますから、そういう意味で自分たちがまさに合併したことのメリットということをよく御承知いただいた上で、できれば本当は住民運動なり、あるいは自治体か基礎になってそういう合併協議会が形成されていくということが一番大事なことだと考えております。そういう意味で、本法案におきましても、国民の発議権をより重視するような形の改正も国は改正案の中に入っております。

 ただ、ではそれだけで十分な形が期待できるのかというと、今回いわゆる合併特例債なりいろんな形でのさらなる財政的な支援措置も盛り込んだわけでありますが、やはり市町村の合併ということであればどうしてもその地域を一番わかっている都道府県が、もちろん地元の市町村の意向を無視して強制的に、あるいはその市町村の意向とは全く違った合併構想を持ちかけるということはとてもとても想定できません。しかし、自治体が、市町村が合併のためにいろいろなことをやろうとしても、実際問題、都道府県の協力がなければ成果が上がらないということも現実問題でございます。

 そういった点で、本法案を成立させていただければ、できるだけ早期に合併に関するガイドラインをお示しして、その中でいろんな合併のパターンの類型などをお示ししながら自主的な合併が推進できるような方策を、そしてそれを都道府県が協力してもらうというような形をぜひ構築していきたいと考えております。

○山下八洲夫君 現行法で市は五万以上とされているんです。特例で今四万人になされているわけでございますが、三万以上五万未満の市は百五十三団体ございます。三万未満が六十九団体、合計二百二十二団体あるわけでございますが、一たん五万をクリアして、今特例で四万をクリアして市になりますと、もうこれが三万になろうと二万になろうといつまでたっても市でいることができるんですね。こういうことですから、またなかなか住民が中心になって市になろうということにならないと思うんです。

 ですから、私はある意味ではペナルティー的なことを考えてもいいのではないか。五万の市の要件を満たした。満たしたならば、例えば五万を割ったということになれば、これは五万を割ったからすぐ市を取り消しますというのでは余りにもむごいですから、やっぱり五万を行ったり下がったり行ったり下がったりするようなこともあるでしょうから、三年ないし五年ぐらいは猶予期間を持ちまして、その間にずっと五万を割っていますと町になりますよと。そうすれば、そこの市の行政面の皆さんもあるいは住民の皆さんも、これはもう町になってもいいじゃないかという議論の結論でなられるかもわからない。いや、町になるのは格好悪い、やっぱり市でいたいよと言って住民が騒いで、では隣の町と合併しようかと。こういう住民が主体になって合併して、また市を維持していく。そういうことになれば、少しずつでも合併が住民主体で促進するものではないかなと思いますが、そういう考えについていかがお考えでしょうか。

○国務大臣(野田毅君) よく御理解をいただいている上での御議論をしていただいていると思っております。率直に言って悩ましい問題であります。

 町村の合併を進めていこうということであれば、ある程度人口規模が五万ではなくても四万でも市として扱うという特例措置をやりましょうということによって町村の合併を促進しようという考え方がございます。これはもう既に現に行っている措置であります。

 一方で、一たん五万という市ができたものの、その後どんどん人口が減少して三万を切っている市もございます。そういったところがむしろ周辺の町村とさらなる合併をしていくようなインセンティブを与えるべきではないかという今の発想法であります。そのことをもちろん考えておかなければなりません。

 ただ、今現在は、少なくとも市ということによって認められたいろんな行政サービス上の議員構成等々、そういったところから、それを人口が減ったことによって、ではサービスをレベルダウンしていいかというとそういうわけにはいかないということもあって、そのまま市としての存続ということになっているわけです。そういったところももう少し突っ込んで見直せ、インセンティブを与えるようにしろという今の御指摘でございますが、なお検討し前進させてもらいたいと思います。

 いずれにしても、趣旨は、市をやめて町村にさせるということ自体にこのお話のねらいがあるのではなくて、むしろ合併を促進しよう、小さな市は周辺の町村と合併をできるように、そっちにアクセルを踏んでやったらどうだという意味でのお話であると受けとめまして、これから都道府県に示す、先ほど申し上げました合併のいろんなパターン、いろんな例示の中にそういったことをも念頭に置いた検討をさせていただきたいと考えております。

○山下八洲夫君 現在は市町村合併だけにちょっと目が向いているなというような気もいたしております。特に自治大臣は、私の目からあるいは耳からの範囲では、何となく道州制をイメージなさり、そして全国三百団体ぐらいがいいんではないか、そういうイメージを持たれた大臣だろうというふうに私は思っております。

 それで、市町村合併ですら大変難しいんです。これが都道府県、県の合併になりますともっともっと難しいんではないかなというふうな気がいたしております。四十七都道府県、これで本当にいいんだろうか、これもある意味では合併したっていいんではないかな、逆にまた促進させてもいいんではないかなというような気がいたしております。

 それぞれの関係の議員さんには勝手に県名等を出しますので御容赦いただきたいと思うんですが、例えば四国四県でざっと四百万の人口です。あそこはひょっとして二つの県に、二県ずつ合併してしまいますと本四架橋も三本も要求しなかったんじゃないかなと。二本で済んだのかもわかりません、正直言いまして。一県だけはどうしたって瀬戸内海を向いていないものですから、かけようがないものですから三本で我慢したのかなと思ったりしているんです。

 あるいは島根県と鳥取県、これはもともとは一県だったんです。それが分かれちゃったんです。一県にしたっていいじゃないか。

 あるいは大臣の九州、沖縄県はああいう島がたくさんございますから別にしまして、沖縄県を除きます九州七県、九州七県で人口が一千三百万人なんです。そしてし面積が四万二千平方キロ。北海道は、あれは道をいっていますけれども一つの県です、行政的には。あれは八万三千平方キロで、そして人口が五百七十万なんです。そうしますと、思い切って九州も二つぐらいに分けて、四対三がいいのか別にしまして、これも合併を促進したらいいんではないか、こういうような気もいたしております。

 もう時間がございませんので次へ進んでいきたいと思いますが、それを合併させるためには、今、政令指定都市ですよ。政令指定都市は五十万以上の市はできますよといって政令で定められているんです。それが、行政指導だと思うんですけれども、八十万から百万にならないと政令指導都市になれない。ひょっとしまして、熊本市は六十数万人の人口でございますので、熊本市を政令指定都市にすれば、熊本県の県知事はちょっと力が落ちますけれども、残念ですけれども、じゃ熊本県も合併しようかというような気持ちになるかもわかりません。

 あるいは、今この関東では埼玉県でもめていますね、大宮市と浦和市が。とにかくあの周辺を合併して政令指定都市になろう。私の感じでは、大宮には新幹線がとまるから市庁舎を置くんだ、浦和には県庁があるから浦和に市庁舎を置くんだ、どうもこんなけんかをしているんじゃないかという気がしてなりません。そんな面倒くさいことではいつまでたったって合併できませんよ。そうしましたら、例えば大宮と隣の上尾とかあるいは浦和と隣の与野が合併して二つの政令指定都市にしちゃえばいいんですよ。

 人口五十万以上で見ますと、それこそ、現在二十市あるんです。そのうち十二が政治指定都市ですが、あと八つはもう自動的になるんです。四十万から五十万の人口というところは二十市もあるんです。そうしますと、これはちょっと隣と合併すればみんな政令指定都市になれるんです。そうすることがある意味では市町村合併の促進にもつながりますし、あるいはもう一方では、都道府県といいますか県の合併促進にもつながると思うんですが、その辺についていかがお考えでしょうか。

○国務大臣(野田毅君) 中長期の視点の中でどういうふうなやり方がいいか、いろんな考えがあろうと思います。そういう中で、今の四十七という都道府県の制度、これをもう少しどうにかならぬのかという議論が確かにあります。ただ、この点は地方分権推進委員会においても、都道府県の合併ということも視野に入れて地方自治の仕組みについて中長期的に検討を行うということで、引き続き検討課題であると。しかし、当面この問題と市町村合併問題は切り離しをして、まず市町村合併を全力を挙げてやっていかなきゃならぬというこのテーマがあると思います。今御指摘のとおり。

 そこで、それらがある程度進んでいく過程の中で、だんだんそういった都道府県の合併という問題に関する関心と、そういった問題がどこまで高まっていくのかいかないのかということは十分見ておく必要がある。

 ただ、いろいろ事情はあったにせよ、明治以降今日まで百年以上、この都道府県は現在かなり定着しているんです。そういう意味での県民意識というのは結構政治的にも実態的にも定着している。その住民意識を無視して、余り国の方からこことここはこう切りなさい、こことここ、県と県はこうしなさいということをちょっと私の立場から言うのは、それこそ地方主権に反するのではないか、こういう議論にもなりかねないので、私はそのことはもちろん頭の中から捨てるわけじゃありません。道州制の話もございます。

 しかし、そういったことは、今申しましたとおり、若干中長期的な検討課題ということにしないと、何か基礎工事と内装工事と、あらゆるものを同時にやったらみんな壊れてしまうということだってあり得るわけですから、まずここは着実に前進をさせていただきたい、こう思っております。

○山下八洲夫君 私もそんなに大臣と考え方は変わらないと思うんですが、私自身も合併というのは、一つはできるところからどんどんやった方がいいだろう、そのための環境づくりをしていくべきではないかなと。ですから、政令指定都市の問題も例示として挙げさせていただいたんです。五十万以上を政令指定都市にどんどんしてしまえば、間違いなく団体は若干に減ってくると思います。そうすると、今度は県も、大事なところをすぽすぽ抜かれれば、こういう状態でいいのだろうか、そういう考えも県知事さん、多く出てくるんじゃないかな、そういうところからまた合併の促進が生まれるかもわかりません。

 私もいろんな方から聞かれます。大体日本国民というのは、どこの出身と。有名な市でせ育っている方は別にしまして、私みたいに岐阜の田舎の中津川で生まれていますと、中津川と言ってもわかりませんので、岐阜県ですと。大臣のおっしゃったように定着しているんです。ですから、なかなか難しいんです。難しいから国民のあらゆる階層で議論していく、こういう場をどんどん与えていく、このことが私は合併促進になっていくというふうに思います。

 首相の諮問機関で、道州制検討の経済審部会報告、これを本格的な議論の契機にという。この中には難しいことばかり書いてございます。結論を言いますと、できませんということを書いたのと同じだなというふうに読みました。それだけ難しいんですから、まず国民世論を喚起していく、そういうことをぜひお願いしたいなというふうに思います。

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