第百四十五回国会
参議院行財政改革・税制等に関する特別委員会会議録

平成11年7月2日(金曜日)

○依田智治君 そこで、市町村合併ですが、この自治省の方からいただいた資料、明治に七万以上あったのを明治の大改革で五分の一に減らした。それから、昭和に入って昭和の大改革、28年にはまだ一万近くあったのが今日に近い三千台になった。それで、その後、自治省は市町村合併に関する特例法みたいなものを大分出したり延長したりしているけれども、ほとんど進んできていない。特にここ平成に入ってから、いろいろな試みがなされているけれども、進んでいないというのが実態ですね。

 そこで、自由党には自由党としての考えはありますが、自治大臣として、今三千二百以上もある市町村の規模というものを大体どのぐらいに、今度特例法を、いろいろ審議会等の意見も入れて従来よりも大分前向きな法案を提出しておりますが、自治大臣としては、この三千二百以上あるのを当面どのぐらいの形をねらいとして合併を促進しようとしているのか、それからそれに到達するためには何を重点にやろうとしているのか、この点を御説明していただければありがたい。

○国務大臣(野田毅君) 今御指摘がございましたように、明治の時期、それから戦後、この大改革に比肩をして今いろいろ議論が行われておるわけです。ちょうどその当時、市町村の合併が同時に行われておりまして、結果としておおむね三分の一ぐらいに、それぞれの時期に、若干の時間的誤差はあるかもしれませんが、そういう形で整理が進んできたということが実態でございます。

 そういう点でいえば、今約三千三百弱ある市町村、三千二百を超えている市町村をおおむね三分の一程度というのは、一つの考え方として議論がなされておることは私もよく承知をいたしております。ただ、初めにそういう数値目標を出して、しゃにむにそういう形でいくというと、何かそれだけでひとり歩きしてもかえって誤解を招いたり、逆に弊害を伴うこともあり得る。何とかやはりそれぞれの自治体なりあるいは住民が合併を進めていくということが結局住民の福祉の向上につながるのであるという、このことにしっかりと思いをいたしてもらいたい。

 そのためにいろんな、例えば今回は合併特例債であったり、あるいは合併をしたら取り残されてしまうのではないかというような不安感、これをどうやって除去して、合併後においてもそれぞれの地域におけるきちんとした意思を反映することができるのか、そういう仕組みをどうするかということで地域審議会を新たに位置づけして規定をしておる、こういうような形で、今までにない強力な形での合併支援策を今回盛り込んでおるところでございます。

 私も、この問題は、本当に真の意味で地方分権、地方自治を強化していくという上で、市町村合併問題は本当に致命的に大事なテーマであると心得ておりまして、この問題にしっかり取り組んでまいりたいと考えております。これは、やはり余り長い時間をかけてずるずるやるべきテーマではないと思っています。

 それから、何よりもぜひ御理解を住民の皆さんにもしていただきたいのは、市町村の担うべきいろんな住民サービスのニーズというものが非常に広域化、高度化、専門化してきております。そういったことに広域連合とか、いろんな広域行政だけで本当に対応できるのか。やはり組織力なり財政力なり人材確保をしていこう、そういったことを考えますと、行政主体として一体として包括的な総合的なサービスをやれるようにするということが非常に大事な、これからの地方自治を進める主体としての、主役を演じてもらわなければならない行政主体としての強化ということにぜひ御理解をちょうだいしたいというふうに考えております。

○依田智治君 今、広域連合という話がございました。地方自治法では、広域連合とか一部事務組合とか、各市町村が寄り集まってある特定の、廃棄物処理とか火葬場とか、今度介護保険というような問題が大きな問題になってくるんですが、そういう形で市町村としては維持しつつそれをやろうという動き、これは私は個々の自治体が個々でやるよりはその方がましでいいな、こういう感じは持っていますが、ただあくまでも個々の小さい市町村が存続する限りは、それはいろいろ庶務もあり総務的なものもあり議会もある。ある事務については組合をつくったり連合しても、結局基本は残っているということですから、これはやっぱり私は行革の受け皿というものとしては、どうしても適正な市町村規模というものをしっかりと確立してやる。

 それで、国としても適正な省庁というものを再編し、また自治体の方も受け皿としてしっかりとそれを確立する。そして、その中で国としても財源というものもしっかりと見ていく。それが今は上から下までばらばらですから、なかなかしっかりした統一、あれができないというのが実態じゃないか。

 そういうことで、私はやはり市町村合併という点を中心にやっていくべきで、こういう動きになってくると、どうしても合併は自分らの発言も遠くなったりいろいろあれだから嫌だ、ついては何とかするためには連合しようというような動きがこれからふえてくるのかどうか、あるいは合併がスピードダウンしちゃうということは非常に問題だと思いますので、広域連合とかこういうものに対して、自治大臣としてはどういう御見解を持っておられるのか、この点をお伺いしたいと思います。

○国務大臣(野田毅君) 今御指摘ございましたように、それから先ほど私も少し申し上げたんですが、広域連合とか一部事務組合とか協議会とか、そういう形で特定の事務事業について連携をしてやっていくということは、その特定の分野においては成果が上がっておる、私はそう考えております。

 しかし、基礎的自治体として、それだけにとどまらないかなり広範な部分が今日の市町村の区域を越えて包括的、一体的に処理していかなければならないという現在のニーズが私は現にあると思っています。そして、やはりそういったことを乗り越えてやっていこうと思えば、対応力を強化する。地方自治の担い手として、受け皿としての対応力を強化するというためには、やはり市町村合併がそのことによって妨げられるというか、それがあるからもういいじゃないかという議論には私はならないと考えております。

 ただ、先ほど来申し上げておりますとおり、いろんなそれぞれの地域の経済的なつながり、文化的、歴史的な経緯、あるいは地理的な諸条件、人の交流、そういったことがありまして、なかなか画一的な論議がしにくいところもございます。

 そういった点で、地域の実情に応じた合併のガイドラインといいますか、人口二、三十万ぐらいの都市を目指していこうというような合併というのも一つの形であろうし、あるいは非常に山村というとなんですけれども、そういったところでどういうような形で、体制で行政サービスを責任持って供給できるのかという、それぞれの地域によってかなりパターンが異なっていると思います。

 そういった意味で、画一的に人口規模だけで全部一律にこうすべきだというやり方はなかなか難しいと思いますが、この法案を成立させていただいた後にそれぞれの類型的なパターンをぜひガイドラインとして自治体にお示しをしよう、こう考えております。

○依田智治君 地方財政の関係でいろいろ議論する中で、やはり憲法に言う地方自治の本旨というものを最大に尊重するということは大変重要で、いろんな行革の提言の中でも国、地方の対等な関係を前提としてやるというようなことが必ず入っている。

 そういう気持ちは大事なんですが、しかし私つらつら考えてみますと、東京都のように一千二百万人もあるというようなところから、県でも非常に少ない、また千人以下のような村もあるというような実態を考えた場合に、しかも国はどんな小さなところでも、自主財源がこれしかない、じゃあとは全体の中で交付税なりで面倒を見ようと。要するに、生活できるような面倒を見ておるわけです。

 これは当然なことだといえば当然なんですが、そうならばやっぱり小さいなら小さいなりに固まっていた方が居心地はいいということは間違いないと思うんです。そういう点を考えると、ただ合併せよ合併せよといったって、今の地方財政の仕組み、そういうものを残しつつ希望があったらと。しかし、いろいろ地方制度調査会等のアンケート結果を見せていただくと、やっぱりやらなきゃいかぬなという感じを市町村はみんな持っているようですが、その点、地方自治の本旨というのは、個々の住民やそれぞれ自治体の意見を最大に尊重して、希望がなきゃやらぬということでは永久にできない。

 やはり平成の大改革というぐらいで、国が責任を持ってしっかりとやる。そのかわり、実現した限りは、やっぱりよかったなという形がとれるような形のものを国がむしろ主導的な形で地方自治体の意見も聞きつつやっていく。それには、ある期間限って、それでできない場合には不利になるくらいな形も含めて強力な取り組みが必要じゃないか、こう思いますので、このあたりについて、最後に自治大臣の御見解をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。

○国務大臣(野田毅君) 確かに今日の状況で、極めて小規模な村、人口規模が少ないところでも、それだけの財政能力がないところでも、組織的能力のないところでも、別途国の方で何らかの財政的な裏づけをすることによって逆に合併機運を阻害しているのではないかという指摘があることも事実でございます。そういったことも念頭に置きながら、やっぱりある程度ノーマルな姿というものは考えていかなきゃなるまいというふうには考えております。

 ただ、それは財政的な側面だけでなくて、今御指摘ございました介護の問題等々、きちんとした責任ある行政サービスをやっていこうとすれば、それに必要な人材を確保するためには、決して財政力だけではなくてそれだけの組織力なり対応力というものが一方で必要でございます。

 そういう点で、合併のメリットということを、釈迦に説法とは思いますが、合併をすることによって専門的な職員を確保することができて高度な住民サービスの提供が可能になる。それから、財政規模も拡大するわけですから、そのことによって重点的な投資が可能となって基盤整備も進展をすることができます。あるいは広域的な観点に立って町づくりをやれるわけですから、効果的な展開もできるでしょう。さらに、公共施設の効率的な配置、利用も可能になるでしょう。あるいは合併によってもちろん管理部門の経費が削減できるわけですし、そのことによって新たな住民サービスの方に向けることができるだろう等々のメリットがあるんだと。

 だから、何もしないでじっとしているよりははるかに自分たちのプラスになるんだということをぜひ住民の皆さんも理解をし、PRもしていかなきゃならぬ。我々としてもそのことをこれから精力的に努力をしてまいりたいと考えております。

○依田智治君 しっかり推進していただきたいと思います。

 終わります。どうもありがとうございました。

(拍手)

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