第百四十五回国会
参議院行財政改革・税制等に関する特別委員会会議録

平成11年7月7日(水曜日)

○吉村剛太郎君 何となくわかったようなわからないような感じもしますが、そこはやっぱり組織が、いずれにしましても人間がやることですから、人によってはと思いますが、しかし何といいましても内閣機能の強化、そしてその一つのポイントとなります局長級の人たちのこれからの活動といいますものは大変重要な意義を持っておる、このように思っております。

 この問題は終わることにいたしまして、地方分権の方に質問を移らさせていただきますが、参考人、それから昨日私は公聴会で神奈川の方にも参ったんですが、私はやはり分権ということは、必然的に今の三千三百ございます地方自治体を大くくりで合併させていかなければなかなか受け皿として力を発揮できないのではないかな、こう感じております。

 といいますのは、やっぱりこれからは自治体間の競争にもなるわけでございます。当然、自治体として一定レベルの行政サービスは断行していかなければならない。そのためには、力が弱ければできないから合併をしていくということが非常に大切なことではないかな、そうしないと落ちこぼれが出てくる。

 したがって、この合併問題については私は一気呵成に、数年のうちにできればやっていった方がいいのではないかなと。これが先送り先送りになってしまうと大きな格差が出てくる。そうすると、今度は合併しようにもなかなか相手が見つからないというようなことで、いつまでも弱体自治体として残っていく。それが一つの日本の社会のお荷物になってくる。国からいつも援助なり補助をしていかなければならない。これじゃ本当の地方分権といいますものの理想にはマッチしないのではないか。そう思いますときに、私はある意味では自治体の合併といいますものは一気呵成にやった方がいいのではないかなという意見を私は個人的に持っております。

 ところが、先般の参考人とかきのうの公聴会で、割とのんびりしておる。やっぱりそこは住民の意思がなければできないとか、そういう学者の方とかが非常に多いように感じたわけなんですが、私は逆に、この点こそ政治がリーダーシップを持って一気呵成にやっていく、これがこの地方分権を成功させるかどうかの一つの大きなポイントではないかなと、こんな感じがしておるわけでございますが、自治大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(野田毅君) 特に市町村の合併問題について、まず住民自身が合併をすることのメリットなり必要性ということを十分認識していただいて、言うなら地元主導の中で、住民主導の中で行われるということが一番望ましいことであるということは私どももそのように考えております。

 しかし、それだけで事柄がうまくいくんだろうかということになりますと、ややそういう百年河清を待つという状況で本当にいいのか。特に自治体の行います仕事そのものが相当変遷があると思っています。明治初期のころにおける地方自治体の行うべき事務の範囲、それから戦後になり、今日非常に福祉に関する行政事務がどんどんふえてまいりました。そういう点で、自治体の仕事そのものが、期待される仕事というものがどんどん広がってきておる、内容も高度化してきているということにおいて、包括的、一体的な形として行政主体としてどれだけの物事が処理できるのか。そういったことを考えますと、これからさらに高まってきているニーズに十分こたえていくための行政主体としての組織力、財政力、そういった基盤を強化するということが極めて必要である。

 特に、とりわけ今回この法案をお願い申し上げておりますが、従来以上に国がなすべきであると言われてきた仕事をさらに地方自治体自身の仕事としてやっていただく、地方分権をさらに推進していこうということになればなるほど、その自己決定あるいは自己責任、こういった世界の中で、自治体自身の言うなら体力を強化するといいますか、対応力を高めていくということがもう一方でどうしても必要な事柄でありまして、そういう点で、ある程度の期間の中に一気呵成に進めるべきであるというのは私もそのように認識は一致をしておるつもりでございます。そういう点で、既に合併特例法が今日まで国会で成立しておりますけれども、今回の一括法の中で、それだけではなくて、さらにいろんな形での支援策を盛り込んだわけでございます。

 そういう点で、いつまでもいいということではなくて、ある程度の期間を定めた中でアクセルを踏んでいきたいということもございまして、合併特例法の期限であります平成17年3月までに十分な成果が上げられるように積極的な努力をしてまいりたいと考えております。

 そこで、せっかくですから、どういうところを今回の中でより従来以上にアクセルを踏んでおるかということを若干申し上げますと、それは合併に伴って取り残されるんではないかという懸念がございます。そういったコミュニティーにどういう意思を反映させるか。そういう意味で地域審議会を設置して、そのコミュニティーとしてもとの町村単位の地域審議会の意思を反映するような仕組みを今回新たにつくった。それから、財政支援の中で、合併特例債、これは現在過疎債で認められているようなかなり手厚い財政的な裏づけをそれに準ずる形で設けよう。それから、どうしても都道府県自身がある程度その県内の実情をよく知っておられるわけですから、都道府県の協力も必要ですし、そのリーダーシップをも期待したいということで都道府県知事の合併協議会設置の勧告ということも位置づけをし、そして住民が主導してやっていただけるということで住民が発議をしてそういう合併協議会をつくってくれという場合に、少し専門的になりますが、一定の場合にその合併協議会の設置を義務づけるというようなことも入れたわけです。

 今回この法案の中には入っておりませんが、私は、さらにいろいろ検討しておりますが、法案ではなくても、例えば都道府県が、統合補助金の話もありますが、県内の市町村に対する都道府県の補助金をできればそういう合併に際して統合して運用していくような手法というものも開発できるのではないか。あるいは事務権限の配分について、都道府県が持っている権限を合併ということに関連してその市町村に対する権限移譲ということも条例においてできるような仕組みでもあるわけですから、そういったことをも含めて、国だけがやるというのではなくて、ぜひひとつ都道府県の御協力、そして何よりもやっぱり住民自身の合併に対する熱意ということをぜひ高めてまいりたい。

 長くなって恐縮でございましたが、冒頭、三大時期の改革のお話がございましたが、明治のころあるいは終戦直後、いずれもおおむね市町村の数が約三分の一程度ということになっているというのは一つの参考数字であるかもしれませんし、あるいは総理の諮問機関でございました経済戦略会議においてもそれなりの数字も出ておるわけでございます。これは一つの参考資料だと思っております。

○吉村剛太郎君 官房長官、先般は自治大臣に御質問いたしましたが、政令指定都市の位置づけということ、もう質問の内容は官房長官の方がよくおわかりじゃないかと思いますが、私も政令市で県会議員をやりましてそれなりの悩みがございました。長官も副知事も府議もされたわけですが、特に京都市といいますのは人口においても五十数%、予算規模においても京都府を上回っておるというように聞き及んでおります。

 そういう中で、政令指定都市というのが全国に十二ございますが、人口からするともうこれで二千万あるんですね。これがどうもまだ今のところ中途半端という感じがして仕方ありません。それについて長官の体験の中から御所見をお聞かせいただきたい。このように思います。

○国務大臣(野中広務君) 体験の中から話をせいということでございますので、政府側の答弁にならないことをあらかじめお断りを申し上げておきたいと思うわけでございます。

 今、お話ございましたように、昭和28年から30年にかけて第二の改革と言われる大合併が行われましたときに軌を一にいたしまして、大阪、神戸、京都、名古屋、横浜、こういう五つの府県庁所在地の大都市が府県から独立をして、そして自分たちはその行政監督下に置かれないでやっていこうというお考えが強うございまして、政令指定都市制度が昭和31年にスタートをしてこの五つが政令指定都市になり、その後、北九州が38年、福岡が47年ですか、それぞれ十二の政令指定都市になってきたわけでございます。

 取り残してきた問題は、私は大きく分けて二つあると思います。

 一つは財政制度のあり方、府県と政令指定都市、権限は社会福祉や保健衛生あるいは都市計画や土木というような身近なものは政令指定都市に府県から移しましたし、今度も都市計画などを移しましたけれども、財政制度というのを、府県のままに税等を残しまして、地方道路譲与税ぐらいがその後政令指定都市に行ったぐらいで、当時としては政令指定都市が財源も余裕がありましたから、金より実をとりたい、名をとりたいということで府県の支配下に置かれたくないという気持ちが強うございまして、結局は財政のあり方を十分議論しないまま今日に来た。だから、今日もなお取り残された問題だと。

 もう一つは、私は、都道府県会議員の政令指定都市内における議員の数の問題が残されてきたままで、今日これから本当に地方自治を政令指定都市と府県間が切磋琢磨してやっていけるために、そして政令指定都市が政令指定都市として真の地方公共団体としての歩みを健全に続けていくためには、一つは現在の府県の持つ財政をどのように政令指定都市の中にきちっと位置づけていくか、もう一つは、この都道府県会議員のありようというものについて徹底した議論を行わなければ政令指定都市と府県の問題というのは解決がつかないんじゃないかと。残された大きな課題だと思っております。

○吉村剛太郎君 若干時間は早うございますが、総理の御予定もあるということでございます。自治事務に対する関与の問題その他質問もしたかったわけでございますが、同僚の協議員に後を譲りたい、このように思います。

 ありがとうございました。(拍手)

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