国会衆議院 総務委員会議録

平成14年11月13日(火曜日)

○春名 真章君
  急に段階補正が見直しということが声高に叫ばれるようになったのか、率直にお聞きしますけどね、気を悪くなさらないで、要するに市町村合併の推進にはですね、アメも必要だけれども、ムチも必要だと、こういうことではないんですか。  

○片山総務大臣
  私はムチと認識してないんですよ。しょっちゅうあちこち聞かれるんですよ。地方六団体の会議その他いろんな講演会、ムチですか、ムチですかと、私はムチでないと言ってるんです。ただ、今までの段階補正が過度に優遇だという受け取られ方をされると、皆さんも大変ですよと、過度の部分があるとすれば、それは実態と比べてみて、過度は直した方がいいんじゃないでしょうかと、その方が段階補正も長続きしますよと、私は申し上げてるんです。ムチなんて意識してません。

○春名 真章君
  過度に優遇してるっていうふうに言ってるのは、一部の意見だと私は思いますね。例えばね、9月の29日、30日に日本世論調査会が公共事業、交付税に関する調査結果というのを世論調査やってね、新聞全部出してますよ。250地点でまんべんなくやって、ひとりひとりの有権者にですよ。2000人くらいの回答があって、公共事業減らすべきだという声は72%、かなり大きいです。しかし、交付税の配分について、これまでどおりで良いというのが38.3%、地方への配分を今より増やすべきだというのが31.1%、あわせて70%なんですね。地方に対する地方交付税というのは、70%は今か、あるいは増やした方がいいと、しかもですね、都市への配分を増やすというのが20%、地方への配分を今より増やすというのが31%、こういう結果出てるんですよ、国民的な世論調査ではね。ですから、優遇しているというふうに言われるのは、本当にね、私はね、誰の意見かと思ってしまうんですね。しかも、地方自治体は本当に苦労しててね、効率的な運営をしてないんじゃないかって言われるかもしれないけども、そういう努力の上に立って、今は運営しているわけであってね、どの自治体でもね、そこがね、私はよくわからないんですね。それで総務大臣一点聞きますけどね、8月30日に経済財政諮問会議ではこういう御発言をされてるわけです。塩川財務大臣が町村合併については、相当なインセンティブを与えてやらせて欲しい。そうでないといくら言っても地方分権は進まないという発言を塩川大臣がされた。これに対して片山大臣は、アメをということだが、本当はムチ的なものも要る。アメはもう与えている。各省のアメも付け加えてアメだらけになっている。本当はムチ的なものも必要だと思う、いうふうに片山大臣自身、8月30日発言されてるんですね。私は、段階補正はムチ的なものではないというふうに今おっしゃってるわけですが、大臣が言っておられるムチ的なものも必要というのはどういうことなんだろうか。私は、段階補正というのは、あなたがそういうふうにとらえてないかもしれないけれど、地方自治体は完全にそうとらえざるを得ない状況があるということを思うんですね。これはどういう発言の意図なんですか。  

○片山総務大臣
  それはね、内閣に合併支援本部というのがあるんですよ。私が本部長で、各府省の副大臣全員が本部員ですけども、そこで合併の支援をするというのはみんな一致した認識なんですけども、そこで合併が本当に必要なら進めなきゃだめじゃないですかと、今の総務省の、総務大臣のやり方はアメだけじゃないですかと、ムチがないとですよ、進みませんよと、私も今までの昭和の大合併をですよ、役人でありませんでしたから、見ておりましたが、あとでいろいろ聞きましたが、進めるにはそういう点も必要性があることは私は認識してます。塩川大臣は大合併論者ですから、だから、進めろ進めろとおっしゃいますんで、今のアメだけではなかなか進まないんではないかっていうのは、議論になってるんです。本当に進めるんなら、私はアメだけじゃなくて、ムチも要ると思いますけれども、ムチはやらないと私は言ってるんです。今まで公にもね。そういうことをその場で発言したんで、合併のムチをやるつもりはありません。粘り強く啓蒙して説得していきたい、こういう姿勢であります。

○春名 真章君
  それは、現場の市長さんなんかの認識と全然違いますね。このまま頑張って頑張っても段階補正減らされて、交付税は毎年毎年削減されて、住民に行き渡るサービスできなくなって、一体どうするのかと、兵糧攻めだと、そういう声になってるんですよ。そこからどうしたらいいのか、今悩んでるわけでしょ。兵糧攻めだと言ってますよ、みんな。ムチそのものなんですよ、下からとってみれば。特に小さい自治体はそうでしょ。小さい自治体ほど、段階補正の見直しによって大きな影響を受けるわけですから、このままいって本当に大丈夫かと、合併せざるを得ないというふうにもう誘導されている。それは議論すればですね、自治体のところに行ってお話しすればですね、高知県なんてのは小さい自治体ばっかりですからね、そういう認識になってるっていうのはね、ちゃんと自覚してこの問題について、大臣は今お話あったようにね、ムチ的なものはしないと、非常に私は大事だと思うんだけれども、もしこの段階補正の見直し、今まで3年間、4年間やってきて、これからまたやっていくと、もっと強烈にやっていくと、いう話が出てるときにですね、こういうムチも必要だという発言を8月30日にされている、これは段階補正の見直しとリンクしているなと思うのは当たり前じゃないですか。そういう認識を持たないと、私はだめだと思うんですが、どうですか。  

○片山総務大臣
  ものを進めるにはアメとムチというのはありますよ。ただ、合併にもそうだと思うけれどもムチはやらないって言ってるんですよ。それでね、議員にどういう市町村長がどう言われたか知らないけれど、現状を改革しないっていうのはだめなんですよ。やっぱり我々は常に現状を変えていかないといけない、見直して、現実に即して、とにかく今ぬくぬくしてるからいささかも変えたくないっていうのは、それは困るんですよ。我々は聖域なき構造改革を今からやるわけですから、市町村行政についても、地方交付税についても、実態と遊離して、仮にその補正が過度であるとすれば、それは実態にあわせて見直していく方がずっと正しいし、それは自分だけ良ければいいっていうのはいけません、全体が良くなきゃいかんので、我々はそういう立場で地方交付税の改革、見直しっていうのをやります。

○春名 真章君
  自治体は努力してますね。そこんところを見てもらいたいと、そして段階補正の見直しっていうことが上からばーっと出されてくれば、そのことがどういう影響を与えるかっていうことをよく自覚していただきたいということを私は申し上げてるわけです。だいたいこういうムチ論が出てきた経過はですね、さっきお話出たけども、経済財政諮問会議に5月18日に牛尾委員と本間委員がですね、資料を出してですね、自立しうる自治体という項目がありましてですね、そのための二つの提案が出てくるんですよ、その二つの提案の一つが年限を切った市町村の再編ともう一つが段階補正の縮小、段階補正は廃止に向けて来年から縮小していってはどうか、廃止をしたい、来年から縮小していってはどうかという提案を5月18日にされる、その時の会議のなかで、議論で、本間委員は市町村は合併に消極的だが、その原因には財政状況が悪くなれば完全補てんする地方交付税制度があって、合併に向けてのインセンティブ付与を十分に考えていく必要があり、段階補正をどのように考えていくことになる、このような発言がいろいろされてる、これを受けて骨太方針に段階補正が効率化や合理化への意欲を弱めることがないようその見直しを図るべきであるということがうたわれる、こういう経過になってるわけですね。いろんな資料見れば、はっきりしてるわけで、逆に言えばですね、今の段階補正が自治体の自立化を妨げている、もっと言えば、合併推進のネックになっているというのが小泉内閣の基本方針や認識だというふうに私は受け止めましたが、総務大臣もやっぱり同じ認識なんですか。  

○片山総務大臣
  だから、経済財政諮問会議で民間側の委員が、そういうことになるから、私は反対したんですよ。年限を切った合併なんかできるわけがない、この合併は自主的合併だと、我々はね、地方交付税を減らしてやると一切思ってませんよ、地方交付税と地方税を足した地方に対する一般財源の確保に全力を挙げてるんですよ。地方交付税を減らす気はいささかもありません。ただ、その地方交付税を公平に、正当に配分いたしたいとこう思ってるだけであります。

○春名 真章君
  それだったらですね、私、もう一回元に戻ってお聞きしますけども、今手厚すぎると、段階補正っていうのは、だいぶ年限経ってるんでね、今は小さい自治体に手厚すぎると、いうことが議論になって、その方向で見直すということで、削減されるという方向なんだが、どういうことをもってして、手厚すぎるということを大臣自身は認識しているのか、ちゃんと聞いておきたいと思います。  

○片山総務大臣
  専門家に聞いていただいた方があれですけど、実態と離れているんじゃないかっていう指摘があるから、今、実態調査をしてるんですよ。実態と離れている部分があれば、それは直したい、こういうことでございましてね、離れている部分があれば、そこが手厚いと、そういうことであります。

○春名 真章君
  例えばね、私、高知県ですけどね、人口規模が小さい自治体が多いわけですね。実態と離れて、減らさなければならないっていう実態はどこにあるのかっていう不思議でしょうがないんですが、例えば、12年度の国勢調査で人口4000人未満だった22町村、この普通交付税が、段階補正見直し前と比較して約3億1200万円削減されたんですね。この削減に対して、小さい自治体ほど、大きな影響受けてまして、ごっくん馬路村なんていうのを作って元気な村で頑張っている馬路村という村があるんですが、1500人くらいの小さな自治体ですが,そこの村長さんは例えばこういう発言をしてる。中山間地域は少ない人口で大きな面積を管理している、その経費が減らされていくと、結果的に環境破壊にもつながると思うし、とても納得しがたい。これらの声が随分あるわけなんですね。大臣はよく御存知のとおり、全国町村会ですよね、そのパンフレット出してますでしょ、21世紀の日本にとって、農山村がなぜ大切なのか、パンフレット出してますよね、なぜこのパンフレット出したか、冒頭、はじめにの部分、こう書いてありますよ、農山村の地域の人々が改革に伴う動きの中に大きな困惑を感じ、その行方に危機感を強めいているものがあります。例えば、どんなに小規模で財政効率が悪くても、地方交付税で財源保障がなされている限り、町村が自主的に合併を進めているはずがないといった議論です。それが大幅に地方交付税を縮小すべきだ、交付税の段階補正をやめるべきだというような改革論と結びつけられると、農山村地域の人々はこれからどうなるのかという不安や結局農山村は切り捨てられていくのではないかという疑念がわいてまいります。ということを冒頭のはじめにに述べてそういう問題意識から農山村の果たしている役割の大きさやこれからどういう風な役割を果たしていくのかという、政策提言でパンフレットでまとめているものですね、お読みになったとおりでありますけど、このことを考えますとね、本当に今やってきていること、これから来年度からやろうとしていること、このことが自治体に対しどういう問題を投げかけて影響を与えているのかということを私は自治を預かる総務大臣としてはね、真正面から受け止める必要があると思うんですね、この市町村合併を推進していくことの、結果的になるかどうかわかりませんが、誘導的なことになっていく、段階補正の見直しというのはですね、そういうやり方は冒頭に私、言いましたようにやらない方がいい、やめるべきだと言うことを私は強く思っているわけなんです。大臣、どうでしょう。私のこの考え。  

○片山総務大臣
  市町村がですね、市町村としてあるのは、それは住民のために仕事ができなきゃいかんのですよ。小さければいい、小さい方が楽でいいですよ。それは全部交付税かなんかで補てんしてもらえれば。そういう自治は成り立たないんですよ。自立する自治でなければいかんので、市町村として適正規模があるんですよ。適正な規模と能力を与えるということも必要なんで、そこのかねあいなんですよ。あなたの議論聞いてるとね、高知県かどこか知りませんけど、小さければいいって、5人、10人で市町村作った方がずっと楽ですよ。みんな議員になればいい。そういうことじゃだめなんですよ。極端なこと言いましたが、我々はそういう自治を推進しようとこれから思っておりません。

○春名 真章君
  適正な規模が必要なんだというそういう立場から御発言されてるんでね、そこがね、根底にあると思うんですよ、小さければいいとは言ってませんので、住民自治ですから。それぞれの自治体の大きさもいろいろあるでしょう。しかし、数が大きければいい、人口が多ければいいことにはならない、そこのところがですね、私は大きな問題だろうということを改めて認識いたしました。そのことを申し上げまして私の質問にしたいと思います。  


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