国会衆議院 総務委員会議録

平成13年11月27日(月曜日)

○矢島恒夫君
  市町村合併について質問したいと思います。まず、その中の住民投票の問題でお聞きしたい。第26次地方制度調査会の審議の中で、これまで一般的住民投票について論議されてきた。昨年9月6日の専門小委員会では、答申案の意見集約を事務局から説明したと、こういうふうにされている。ところがその後突然合併のための住民投票制度導入方針が出てきた。答申案に盛り込まれた。何のためにこんな不可解な行動をとったのか、非常に問題だと思う。その計画について総務省説明してください。  

○芳山自治行政局長
  住民投票制度の論議につきましては、住民自治の充実ということで具体的論議が小委員会で進められてまいりました。その中で積極意見、慎重意見、両方出たわけでございまして、積極意見としては、住民参加の機会の拡大のために、住民投票制度の導入を検討すべきではないか、また議会の活性化のためにも住民投票制度を導入すべきではないか、また慎重な意見としては、議会や長の責任との関係をどう考えるのか、また地域社会の合意形成に及ぼす影響はどうなのか、また、住民投票制度導入に適する事項、適さない事項はどういうことか、という両方の意見が見られた。ということで引き続き検討という具合に相成ったわけでございます。ただ、答申の10月の段階で、御議論の中で、合併については地域の問題等々あり、また、地方団体の存立そのものの問題ということで、住民投票になじむということで答申が出されたという具合に承知しております。

○矢島恒夫君
  この日の調査会に配付された資料によりますとね、この日の議事日程は、意見集約取りまとめの段階と、こうされていたんですよ。なぜ、それまで出ていなかった合併のための住民投票制度導入、こういう方針が、唐突にですよ、第26次地方制度調査会の答申に盛り込まれたか、極めて不可解であります。この問題で少し論議したいと思うんですが、これは先ほど黄川田委員からも出された問題で、私もそうだろうと思うんですが、あれは三重県海山町の原子力発電所の誘致の是非を問う住民投票なんです。その結果については繰り返しません。黄川田議員も言ったとおりであります。反対の住民の意思が7割に達した。地方自治の制度の一つとして、一般的な住民投票、こういう中で住民の声を安定的に普遍的に反映させる機会、これを保証するというのは、やはり重要な問題だと思うんです。なぜ、合併のための住民として、一般的な住民投票の制度を使わなかったのか、ということについては先ほど、総務大臣も、なお慎重な検討が必要だと、いくつかの問題点をお挙げになりました。国民主権や住民自治の考え方は、代議制度や代表民主制の仕組みとともに、いつでもどこでも住民が主人公なんだという立場を徹底することを求めてると思うんです。従って、住民の意思を普遍的、安定的に反映する機会の一つとして、住民投票制度の必要性を否定することはできないと思うんです。住民投票で住民の意思を問うことというのは、首長や議会にとって自らの判断の正しさを検証する機会ともなると思います。地方自治の発展にとっても私は有効だと思うんです。そこでお尋ねいたしますが、過去の合併に対する住民投票制度というのは1953年に制定された旧町村合併促進法では有効投票者数の3分の2以上、制定当初は有権者の5分の4以上となっておりましたが、この賛成で決めることとされていました。1956年制定の新市町村建設促進法では、合併に関する住民投票では、有権者の過半数で決めるとこうされていた。ところがこの法案では有効投票数の過半数で決める、こういうふうになっている。過去の制度からみて大幅に緩和しているわけですが、大臣の一般的投票についての問題点、今後検討という中にもありましたが、代議制あるいは代表民主制この議会決議を無効にするという住民投票の成立要件票数を緩和したわけですから、大臣の先ほどのお答えと矛盾するんじゃないかと思うんですが、いかがですか。

○片山総務大臣
  それはね、一般的な住民投票制度じゃないんですよね。今回の住民投票制度は住民発議で、合併協議会を作れっていう発議をやったものが、関係の議会で否決された場合なんですよ。その場合に再度ですよ、住民投票を求めて、住民投票で協議会を置くんですよ。合併そのものの是か非かじゃないですよ。合併協議会を置くか置かないかで、私は今の考え方でいいと思います。基本的には間接民主主義っていいますか、議会制民主主義をね、否定するような住民投票制度というのは、慎重に検討しなければいけません。そこの兼ね合いで、住民投票ということの意味を否定するものでありませんけれど、それは議会制民主主義に取って代わるということならね、なお慎重な検討をして、国民的なコンセンサスがない限り、それは軽々にいかないなって、今回は何度も言いますけれど、協議会設置が議会で否決された場合のもう一編の揺り戻しなんですね。そういう住民投票であります。

○矢島恒夫君
  それでは、お尋ねしますが、地方自治法等の一部を改正する法律案の中の市町村合併の特例に関する法律の一部を改正する部分、つまり第4条の10項、合併協議会設置協議会について、合併請求市町村の議会が先ほど言われたように否決した場合、合併請求市町村の長は、10日以内に限り、選挙管理委員会に合併協議会設置協議について選挙人の投票に付するよう請求することができるものとすると、第14項の方見ますと、選挙管理委員会は政令で定めるところにより、投票に付さなければならない、第17項見ますと、住民投票において、合併協議会について、有効投票数の過半数の賛成があったときは、合併協議会設置協議について、合併請求市町村の議会が可決したものとみなす、こういう規定になってると思うんです。これは、議会が住民の合併反対の意思を反映して合併拒否の態度を決めた場合に、長の意思でこれをひっくり返して、あくまで合併を推進しようと、こういう措置なんですか。

○芳山自治行政局長
  御指摘ありましたように、市町村の議会で否決をした場合に、改めて要件6分の1という、発議の要件6分の1の署名を集めて、市町村長が投票に付するのを判断するか、または判断しない場合に6分の1の署名要件を集めて、集まった段階で過半数の賛成があれば、議会の議決とみなすという具合にしておりますが、あくまで合併協議会設置のことであります。合併協議会の設置は、合併協議会そのものは、合併の是非を判断する協議会でありまして、それについて関係市町村で協議の上、合併についての検討をする。そして、協議がまとまった段階で、改めて地方自治法の世界にいきまして、議会の議決をとるというこういう段取りであります。 

○矢島恒夫君
  だから、私が聞いたのは、議会が住民の合併反対だという意思を反映して、議会の方で合併拒否の態度を決めたと、ところが長の意思でこれをひっくり返すことができるんですねということで、これはできるんですよね。私はですね、合併反対の住民の意思をはじめから無視して切り捨てていくんじゃないかと思うんですよ。合併の推進という目的を押し進めるための制度になってるんじゃないかと、つまり、ここには合併の可否を住民自身の判断で決めるという考え方が極めて薄いんじゃないかと、そこでお尋ねしますがね、住民の意思を聞かずに合併協議会を設置しないことに問題があるという認識から、住民投票制度を導入するというならば、逆にですよ、今度は、住民の意思を聞かずに合併協議会を設置することにも問題がある、こういう認識に立つのが当然だろうと思うんです。つまり住民の意思を安定的普遍的に反映する機会の一つである住民投票制度の立場に立てば、議会が合併協議会の議案を審議する前に、本来ならば合併そのものに対する住民の意思を投票で問う制度とすべきではないかと、このことについてはどうお考えですか。

○片山総務大臣
  何度も言いますけどね、基本的には議会制民主主義でいくと、議会の意思が団体の意思なんですよ、その市町村の。ただですよ、住民が発議して、合併協議会作ってくれって言ったものを、議会が否決したんですから、もう一遍住民にチャンスを与えようと、議会にもう一遍考え直してくれと、合併そのものを決めるんじゃないんですよ。住民が元々発案した合併協議会置いてくれって言ったやつを否決したんだから、もう一度住民からそういう請求をさせて、住民投票でおくことをあれしたらどうかと、こういうわけでございましてね、本来、そういう意味ではこの部分については、間接民主主義、議会制民主主義の一部の修正案ですね、その限りでは。これは極めて限定的な、私は、修正だから、これは容認できると、こういうわけでございましてね、合併しようということを議会が決めた場合や、本来は議会の意思で良いんですよ。合併の是非じゃないんですよ、何度も言いますが、協議会を置くか置かないか、しかもこれは住民が提案したものでありますから、もう一遍投票で議会に考え直してもらおうと、いうことであります。

○矢島恒夫君
  私はその問題では、いわゆる反対の場合、今の合併協議会設置という問題で、住民の意思を聞かずに合併協議会を逆に設置しちゃう、その時に住民の意思というものを反映できるような制度にすべきだと、このことを指摘しておきたいと思うんです。
 次ですね、片山大臣は11月13日の当委員会でですね、春名議員に市町村としての適正規模があるんですよと、適正な規模と能力を与えることも必要なので、そこの兼ね合いなんですよ、こういう答弁をしておられるわけですが、適正な規模とは人口どの程度のことをお考えになってらっしゃるんですか。

○片山総務大臣
  これはね、なかなか一義的にいかないんですね。昭和の大合併の時は何度も言いましたけどね、あの時は8000人にしようと、少なくとも、8000人と、あの時の住民投票はですよ、5分の4なり、4分の3ですよ、これは内閣総理大臣勧告、知事勧告やりましてね、それを拒否した場合に住民投票かけたんですね。ある意味では強力に、強制的とはいいませんけど、強力に全国の市町村の再編成図ったんですね。やっぱり、戦後の自治制度をしっかりしたものにするために、今回はね、なかなか、人口はいくらだと、これは、私は、いろんな条件があるから、言いにくいと思います。しかしですよ、例えば、今の 5000未満だとか、そういうことなら、十分対応できるのかな?という感じがいたしておりますんで、そこで、我々が一律の人口基準を示すんじゃなくて、都道府県知事さんに、その都道府県内の事情を考えて、合併のそういうパターンを作ってくれ、たたき台を、それによって議論を起こしてくれ、そういうことをお願いしておりますんで、合併のパターンがある意味ではその都道府県知事さんが考えた、都道府県が考えた、私は一つの適正規模だと考えております。

○矢島恒夫君
  時間がなくなりそうなので、すぐ先いきますけどね、適正規模というのがどういうものなんだと、例えばですね、離島だとか、過疎自治体、こういうところに住む人たち、要するに憲法の実現ですね、自治体の行政サービスを通してですね、福祉を保証する義務、こういうものを適正規模以下の自治体には必要ないのかと、こういう問題があるわけです。というのがですね、ある自治体の場合、あげても良いでしょう、実際出てるんですから、上尾の場合です。これは、さいたま市への合併問題がいろいろと議論されて、住民投票が行われて、合併しないという結果になったんですが、一緒にならないということになったんですが、そのときに合併推進派の方々の「政令指定都市を目指して上尾の未来市民委員会」というところが作ったビラなんですが、すべての状況が単独市で残ることが難しくなっている、このまま単独市で残れば住民サービスの低下、市民税の増税しか考えられないというんですが、政府はですね、全国の自治体にですよ、単独市、過疎の村ではなくて、上尾のような市のことですが、単独市では生き残れないような政策を進めているんですか、そんなことないんじゃないですか。

○片山総務大臣
  全くありません。しかも今度の合併はね、何度も言いますように、明治の大合併とも、昭和の大合併とも違うのは、あくまでも自主的にですよ、関係の皆様の総意を集めて、こういうことをお願いしているわけであります。

○矢島恒夫君
  そこで私は財政効率の問題で質問したいんです。今日、地方財政の危機という状況にあります。しかし、この原因は政府の景気対策でですね、地方財政を動員した結果と。宮沢大蔵大臣もですね、当時のですよ、元大蔵大臣も、地方に迷惑をかけたと、こういう答弁をしていらっしゃる。やはりですね、私は、地方自治体というものの適正規模と財政効率という問題、これをもう少し深くですね、検討する必要あるだろう。総務省に聞きますが、自治体の人口数と公共事業関係を除いた住民1人当たりに歳出額について大阪市の場合と三重県御薗村について、数値を示していただきたい。

○香山自治財政局長
  11年度の決算で申し上げますけれども、大阪市の場合は247万人強で、人口1人当たりの歳出は60万6千円、三重県の御薗村の場合は、人口8750人強で22万6千円となっております。

○矢島恒夫君
  合併して自治体を大規模にすれば、1人当たり歳出額が減るから財政効率が高まる、こういう主張は残念ながら客観的事実に反してると思うんです。私ですね、お手元に資料を配付させていただきました。その中で時間をかけて作り上げたグラフが入ってると思うんです。そのグラフは2581の市町村、へき地だとか、離党だとかいうのはですね、大都市と同列に見ることができませんから、常識的に外しました。そして2581の市町村について、財政効率を自治体の人口規模比較で、人口1万人前後から337万人の横浜市程度までの状況を調べたわけです。それを点でそれぞれ表しました。これを見てですね、いわゆる相関関係というのは出てこないんですよね。ちょうど円形になってるんですよ。一つの半円形に。一直線上に両側に並ぶという形にはなっていない。そういう一つのグラフであります。時間が来てしまいました。私、その資料も後ろに重ねてあります。これは財政効率の問題を論議したいということやあるいは合併が自治、民主、公開を原則としたものでなければならないということやあるいは、合併についての総務省の通達の問題などなど質問通告の中で既に出しておいたんです。しかし、到底そこまで今日の質疑時間ではいくことはできません。しかしまだ質問する機会があると思いますのでその時に譲りたいと思います。


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