国会衆議院 総務委員会議録

平成13年11月27日(月曜日)

○重野安正君
  ちょっと角度を変えて、今、行政改革大綱をめぐって、いろんな角度から議論がされているが、その中で与党が市町村を1000程度にまとめる、内閣がこの方針に基づいて行革大綱を作った。2005年以降には、現在の市町村の数は約3分の1になる。そうなると、ほとんどの町村は、合併によって新しい市を作るか、あるいは中核的な市になるわけで、要するに、合併によって、1自治体の人口は現在より増えることは間違いないでしょう。そうなると、94条というのはどうなるんだろう、現実にこれを採用しうる自治体があるかないかという問題ではなく、法理論上、現に地方自治法に規定されている94条に基づく町村総会は条文上まったく意味のないものになるのではないかと思います。憲法に定める地方自治の本旨の構成要素が一つの特例法によって空文化するという、そういうことが許されるのかという理屈も成り立つのではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。  

○片山総務大臣
  重野委員ね、1000にはなかなか大変ですよ。それはあくまでも目標で、できるだけそれを目指してね、これから3カ年努力するということだと思いますけれどもね。仮に合併が我々が思うように進んだ場合に、自治法94条の町村総会ができるかっていうと、今ですら町村総会を選択している町村はないわけですから、今度の合併によって私はもっとなくなると思いますね。こういう意味では制度としてはあるけれども、実際は使われないと、私はそういうことになると思いますね。しかし、町村総会という制度というものを残す意味はあると思います。

○重野安正君
  地方自治法上、町村総会は残すと、一方ではこの規定はどんどん空文化していくという現実がある。そういう町村合併、大きくしていこうという国の意思があるわけですね。なにか私は理屈の上で大きな矛盾を感じるんですね。そうであれば町村総会の規定というものをスパッとなくしていけば、そういう悩ましいことを考える必要ないんですが、そんなことは大臣お考えになりませんか。 

○片山総務大臣
  重野議員ね、町村制の時だってほとんどなかったんですよ。神奈川県の一つでしょ。それから地方自治法の時に、八丈村ですか、なんかでございますからね。まあ、元々この制度を使うというところはなかったと思いますけれどもね、それは落とすか落とさないかは、立法政策の判断で、最終的には国会がお決めになることだと思うんですけど、今、我々としては、総務省としては、この規定を削除することは考えておりません。

○重野安正君
  現実問題としてね、町村総会を採用する可能性のある町村があるかないかっていうのは分かってる。これは百も承知しているわけです。しかし、市町村数を合併によって再編するという政府、内閣の目的があります。憲法92条に基づく地方自治法の個別条文が実体的に意味のないものとされることが許されることなのかという思いがあるんですね。しかも、1989年12月の第22次地方制度調査会の答申、大臣も知ってると思うんですが、このときの答申では小規模町村がその判断により町村総会の制度の活用を図ることができるよう検討する、こういうふうに地方制度調査会は言ってるわけですね。そういう見解について大臣はどのように受け止めるんですか。

○片山総務大臣
  それぞれ、その時いろんな状況に基づく判断があると思いますしね。私は重野議員の思いは十分分かります。だから、これは私の個人の考え方ですが、ITがずっと進みましてね、インターネット、オンライン時代になるんですよ。そういうことになるときに市町村の住民の意思を直接聞いてみよう、そういう制度ができればね、町村総会が形を変えて生まれ変わってくると思いますけどね、最終的には何度も言いますけど、国会のご判断で、立法府のご判断で、ただ、この制度は、長い、町村制からの制度ですから、これをどこも使ってないからっていって、積極的に削除するという必要は私はないんじゃないかと思います。

○重野安正君
  私はこれをなくせばいいっていうような理解で言ってるんじゃないんですね。いわゆる住民と為政者との距離がより近くあるべきだっていうことを象徴的にこのことが言ってるんじゃないか、だから、政府も簡単に時代と合わないからこれは要らないとは言わないだろう。だから問題はこの条文が言わんとしてることですよね、これをどう受け止めて、どうするかっていうことが問われてる、こういうふうに私は思うんです。結局、そういうものがありながら、地方財政は非常に厳しくなっている、そのもとで自治体の行財政運営の効率化ということが非常に強く強調されて推進されていく、そのためには、平成の市町村合併だ、こういうふうになるわけですね。内閣の本音もそこに尽きるんだろうと私は思うんですが、しかし、今、私が申し上げましたように、この法理論上の自己矛盾こそが、私は地方自治の本質というものを曲げない証になるんではないかと、そういう意味ではこれが言わんとしているこのことが、積極的に受け止めていただけたら、そういう思いを持つんですがいかがでしょうか。

○片山総務大臣
  スイスがね、地歩自治や民主主義の非常に進んだ国だと、コミューンというのがあって、それは全員参加で、まさに町村総会みたいなものでものを決めてるということを我々は教わりましたよね。これが一つの理想であることは事実ですけども、しかし、それは現在のような状況の中で町村総会という形で、町村議会の代わりができるかっていうと、それはなかなか難しい。こういうことではないかと思いますね。ただ先ほども言いましたが、将来世の中ずっと変わりますからね。おかげさまで、電子投票のトライアルの法案も参議院審議を賜るようになりました。トライアルでございますけど、ずっと将来はですよ、形の変わった直接民主主義が地方制度の中に導入していくべきだということになるかもしれないと思います。そういう意味ではこの規定は大切に残していきたいと思います。

○重野安正君
  またですね、先ほど言いました1989年の第22次地方制度調査会、この中にこういうことも書かれております。小規模町村の実状、事務事業の性格に応じ広域市町村圏の中心都市または都道府県のいずれかが事務を補完、代行することができるよう新たな仕組みを検討する。事務配分の特例についても今後検討する。このことが地方分権を市町村中心にさらに進める上でも検討しなければならない重要な課題ではないのか。合併によるいたずらな規模拡大よりも規模に応じた事務の再配分、そして都道府県による補完、代行、こういうありようこそがふさわしいのではないかという私の思いもありますが、そのへん大臣はどのように考えますか。

○片山総務大臣
  何度も答弁させていただいておりますように、21世紀は地方の時代でありそれは住民に身近な市町村の時代であるというふうに考えております。そこで委員が言われました人口規模による差をつけろと、これは今ね、かなりできてるんですよ。特例市、中核市、普通の市と、こういうふうになってますしね。現に過疎山村では都道府県代行で道路や下水道を代行してるんですよね。そういう意味ではそれはかなり進んできてるんじゃないかと思うんですけど、21世紀に入りましたんで、この今の都道府県、市町村の二層制含めて、全体の制度をもう少し、研究してみる必要があるんじゃないかということで先だって総務省に研究会を作らせていただきましたんで、委員のいろんな思いやお考えを聞きながら、研究会でいろいろ勉強させていただきたい、こういうふうに考えております。

○重野安正君
  時間も来たようですので終わりますが、今日は住民自治における直接民主主義と間接民主主義の問題を町村総会の規定に基づきながら質問させていただきました。必ずしも大臣の答弁、なるほどそうだと、みえない部分もたくさんあります。そこで次の機会があれば、間接民主主義と今回の市町村合併に関わる手続き問題を中心にまた大臣の話をききたいと思います。


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