国会衆議院 総務委員会議録

平成13年12月4日(火曜日)

○黄川田徹君
  第27次地方制度調査会では、市町村合併が進んだ段階の都道府県のあり方から道州制への議論にも進むようであります。小泉首相も国、都道府県、市町村の三層構造のあり方も議論すべきであるとしていると聞いております。2年任期の間の地方制度調査会で、市町村合併がどこまで進むか分からない中で、少々飛躍した議論でありまして、現状では着実に市町村合併を推進することが先決であると思っておりますが、この点についての見解をお聞きしたいと思います。  

○遠藤副大臣
  片山大臣もしばしば明言されているんですけど、21世紀は地方の時代だと、なかんずく市町村の時代だと、これは、私ども一致してそういう認識をしております。国と地方の間というものを考えていくにあたって、住民に一番身近な自治体でございます市町村、これをもっとこれからの住民の大きな増大する多様なニーズに応えていくためにも、実力のある、力のある団体になっていかなければならない、そうでなければ責務も果たしていけないと思っておりまして、政府はただいま与党の、今3223あります市町村を平成17年3月を目途に1000くらいにするという合意に基づきまして、私ども地方自治体の皆さんの自主的な努力をいただきながら、その目標を達成したい、このように考えているところでございます。今、全国の市町村で約半数を超える1657市町村で具体的に検討が進んでおりまして、市町村合併に対する熱意がだんだんと波及しておると、このように思っているところでございます。さらに一段と皆様の御協力をいただきながら進めてまいりたいと考えているところでございます。

○黄川田徹君
  市町村の合併、そのとおりでございますけど、道州制についても過去いろんな議論がなされております。私は将来の課題として隣接する県同士の連携あるいは合併の可能性があると思っております。私の地元の岩手県の場合でありますけど、隣り合う地域環境が類似している青森県、そしてまた秋田県と一緒に産業廃棄物処理の共同化の他、福岡県に三県合同の九州事務所を開くなど15前後の連携事業を進めております。現在の事務処理方式は変えずに、統合化でコスト削減を図ろうとするものであります。そこで、制度論から入るのではなく、実際に一緒にできることを考えるシナリオの方が現実的と思うのでありますけど、大臣の長期展望はいかがでしょうか。

○片山総務大臣
  道州制の議論がにぎやかでございますけど、なかなか、直ちに道州制ということには、私は少しまだ時間がかかるのではと、私はこのように思っております。そういう中で、黄川田議員言われましたように、都道府県間の連携や事務の共同処理ということはあり得ると思います。かなり昔にね、中京、愛知、岐阜、三重の三県の合併だとか、阪奈和ですね、大阪、和歌山、奈良の合併がかなり議論されたことがあるんですよ。しかし、いざとなるとなかなか難しいんですね。私はそういう意味で、合併よりも個別の事務について共同でやる、あるいは連携を密にとっていくということがベターではなかろうかと思っておりますが、いずれにせよ、基礎的な自治体である市町村の再編成に目途がつくとすれば、次は広域的な自治体である都道府県制をどうやっていくか。これを本気で考えていかなければいけない、こういうふうに思っておりまして、今後とも、地方制度調査会や地方分権改革推進会議での御議論を待ちながら我が省としても検討を重ねてまいりたいと思っております。

○黄川田徹君
  それでは、次に先の全国町村長大会等で強く要望されている課題も含めて、三点、お尋ねいたしたいと思います。全国町村会では21世紀の日本にとって農山村がなぜ大切なのかの提言をしております。その中では、農山村と町村の実態に関する基本認識を欠いたまま、都市と農山村の対立をあおり、複雑なことがらを単純な二分法で割り切ることによって、真の問題から人々の目をそらそうとする議論の仕方は構造改革を進める上で、実りある合意形成には決して役立たないというべきではないでしょうか。産業の新旧交代によって、職を追われ、あるいは過酷な企業競争の中で辛苦を余儀なくされている都市住民のいらだちや不満を農山村と町村に向けさせて、それで都市住民の支持を得られるものでしょうか。もし得られたとしてそれが本当に日本の再生につながるのでしょうか。都市住民が求めていることは農山村との対立を鮮明にして、かろうじて農山村と町村を成り立たせてきた財源を都市に取り戻すことなのでしょうか。そのようにして農山村をさらに疲弊させて、どのような利得が都市住民にあるというのでしょうか。都市も農山村も今までのあり方を真剣に反省し、互いに学びあい日本再生に向けて新たな国民の合意を創り出すことが時代の要請であるはずだと思います。このように訴えているわけなのであります。そこでまず市町村合併を促進する過程で、合併の強制を意図した交付税算定の見直し等が行われていないことを望む次第でありますけど、総務省の見解はいかがでしょうか。

○香山自治財政局長
  現在、私どもが検討しております段階補正の見直しに関連してのお尋ねと思いますけど、行政経費につきましても、いわゆるスケールメリットが働きますので、人口1人当たりの行政経費見ますと、小規模団体、どうしても割高になることは避けられない。そういうことで、そういう団体に割り増しをするための段階補正というのを適用しているわけでありますけど、この段階補正、私どもといたしましては、国が法令で地方団体にいろんな歳出を義務づけをしているという制度のもとで、そういう市町村の合理的な財政事情と関係なく合併促進のために交付税を減額するというそういう考え方は持っておりません。それは交付税の趣旨に反するものと考えております。現在、私どもが検討いたしておりますのは小規模団体でありましても、職員の兼務であるとか、外部委託を進めるとか、そういったことで、合理的、効率的な財政運営に努めている団体があります。そういう実態を反映したような割り増しの係数を見直してみようということで、作業をいたしている次第でございます。そういう意味でこれらの団体も法令に義務づけられたような仕事を行うように、行うために支障が生じないように、私ども対処するつもりでおります。その意味で合併の強制をいたしたものではないということで御理解いただきたいと思います。

○黄川田徹君
  併せてお尋ねいたしたいと思いますが、今日、山村では、地勢、立地の制約、それから住民の生活実態等からみて、また周辺も同規模の市町村ということで、国や都道府県が指導する方向での市町村合併が困難な状況が見られるところもあります。これらに対し、地方交付税の段階補正の見直しなどによる合併を誘導することは、山村自治体の存立と山村住民の生活基盤を弱体化するおそれがあるわけであります。これらの地域は、国土と環境の保全等の機能を担い、そしてまた下流域の都市住民の安全で健康な生活を維持していることを認識して欲しいと思うところであります。この視点の大臣の所見を伺いたいと思います。

○片山総務大臣
  我が国は山村が大変多い国でございますけれど、国土の保全だとか、水資源の涵養だとか、自然環境の保全等の上で、重要な役割を果たしていると、こういうふうに思います。現に山村振興法だとか、過疎対策特別措置法だとかありましてね、法的にも国が援助をいたしているわけでありますが、一方、山村は極めて過疎化、高齢化しておりましてね、一つの自治体としてちゃんとしたサービスをやるとか、いろんなことで存立していくことが、条件が厳しくなっておりますね。山村どうやっていくかということは、私はこれからの地方自治行政の大きな課題だと、こういうふうに思っております。できるところは合併を検討していただく、できないところをどうやっていくかですね。合併を検討していただく場合にもですよ、山村の特色やその地域が一体的な整備ができるような何らかの方法、例えば地域協議会なんかを作ってもよろしいと、合併してもですよ、旧村単位で、そういうこともいっておりますんで、旧村単位の地域協議会の活用だとか、特別にその地域についての何らかの援助、財政援助を含めて何らかの援助をやるとか、そういう方法を検討しながら、合併を進めていきたいと思いますが、どうしても合併できないところ、これにつきましては、これからの市町村行政の体制をいろいろ特色において差をつけていくと、そういう御意見もありますんで、そういうことの中で検討していきたいとそういうふうに思っております。

○黄川田徹君
  総務省によりますと、市町村合併により、原則として、住民の負担を増やさずに、行政サービスの質を落とさずに、財源を捻出することが可能になる例として、次のように述べております。すなわち、全国の市町村の決算統計でみると、行政サービスの水準ではあまり違いがないにも関わらず、人口1人当たりの歳出額の平均は人口2000人の町村では150万円であるが、人口10万人の市では30万円であり、財政規模のスケールメリットが働くこととなる。また、財政基盤においても、人口5000人の町村と人口10万人の市の財政指数を比較すると、財政力指数では前者が0.20、後者が0.81であり、決算額歳入の合計に占める市町村税と地方交付税の割合では前者がそれぞれ9.2%、43.3%であるのに対して、後者がそれぞれ43.3%、11.4%と大きく異なることが分かるとしております。そこで、伺うのでありますけど、この試算には土地面積当たりの人口集積密度等の考え方が入っておらず、私は疑問を感じるところもあります。例えば、面積が広大な県の場合は、いくつかの中山間地の町村が合併し、10万人規模の新しい市が誕生しても、スケールメリットが働かず、総務省の計算例のようにはならず、たぶん合併前の元の町村の指数に近い値になってしまうのではないでしょうか。総務省は市町村合併の促進をPRする立場もあるでしょうから、様々加味した計算例を提示してもらいたいと思っておりますけど、副大臣のご見解はいかがでしょうか。

○遠藤副大臣
  スケールメリットというものは人口別に単純に概算で計算をしてお示しをしたというものでございまして、御指摘の人口1人当たりの歳出額の平均でございますけど、人口区分ごとにですね、例えば2000人の時はこうだ、10万人はこうだとか、該当団体の人口と歳出額から1人当たりの歳出額を算出したものでございます。財政力指数についても、人口別にもっとも多い市町村累計における各数値を比較したものでございます。市町村合併にはいろいろなメリットがあるわけでございますけど、例えば総務とか企画部門、管理部門ですね、それを効率化することによって、コストの削減に効果が及ぶ、役場の中ですね、こういうこともございます。今、お話のございました面積とか人口の集積、こうしたものがどのような効果を及ぼすのかという問題は大変重要な問題でございますけど、いろんなパターンがあるものでございまして、それを個別に類型化してお示しするのはなかなか難しい。これは地元で計画をお立てになっていただくことが、大変重要でございまして、そのために御協力をさせていただきたいとこういうふうに考えております。それから総務省が持っております資料で、人口だけではなくて、産業構造ですね、この要素によって市町村を類型化した類似団体別市町村財政指数表というものが作成されておりまして、例えば人口だけではなくて、同様の産業構造を有する地域ですね、例えば農林水産業が多い地域だとか、製造業が多い地域だとか、鉱工業が多いところ、商業、サービス業などの産業の人口分布がよく似ている地域だとか、そういうところがどうなっているか、そういう一応の資料は持っているわけでございまして、そうした面で、あるべき市町村の姿の参考になればと、こういうふうなものは考えているところでございます。

○黄川田徹君
  例示団体の比較ということで様々ありますし、一元的には地元がいかにその地域がどうあるべきかということが一番大事であると思いますけど、いろんな指標を使って、いろんな提示をしていただきたいと思います。


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