国会衆議院 総務委員会議録

平成13年12月4日(火曜日)

○矢島恒夫君
  市町村合併の問題、とりわけこの合併を推進していくところのテコとして使っているところの通達類の問題について、まず質問したいと思います。平成11年8月6日の「市町村の合併の推進についての指針の策定について」という通達が出ております。平成13年3月19日「『市町村の合併の推進についての要綱』を踏まえた今後の取組(指針)」について、という通達が出ております。この二つの通達の目的と性格について、正したいわけであります。この通達というのは技術的助言なのか、勧告なのか、あるいは是正措置の要求なのか、指示のどれに該当するのかという問題であります。時間の関係で併せて、この平成13年3月19日の総務事務次官からの各都道府県知事に対する通達を見ますと、平成17年3月31日までに市町村数を1000にすることを目標に「各都道府県におかれては、今回お示しした新指針を参酌して、要綱を踏まえ、貴職を中心に全庁的な体制をとって、管内の市町村の合併に向けた取組についてより積極的な支援に努められるよう要請します。」こういう内容になっているわけです。そこでもう一つ問題として、この自治事務である市町村合併に対する政府の関与のあり方、この通達は、法定主義の原則、一般法主義の原則、公正、透明の原則、こういうものに反して、いわゆる自治権を侵害するものではと思うのですが、この二つの問題について、大臣の考え方をお尋ねしたいと思います。  

○遠藤副大臣
  ただいま、お話がございました両事務次官通知に示された指針ですけれど、いずれも市町村合併特例法第16条第1項に基づきます「必要な助言、情報の提供」を行ったものでございます。

○矢島恒夫君
  後半についてお答え願います。

○遠藤副大臣
  両方とも同じでございます。

○矢島恒夫君
  助言というのは、辞書を引けばすぐ分かることですが、「傍らから言葉を添えて助けること」とこんなふうに書いてあります。それから地方自治百科大辞典によりますと、行政用語として、「地方自治の内容を質的にも向上させるため、国等が技術、知識、経験をもって地方公共団体に援助協力すること」とこのように定義されております。そうしますとですね、私が先ほど申し上げましたように、13年3月19日の通達というのは、目標と期限を定めて、合併計画立案の任務の遂行を求める、これはもう助言の範囲を超えてるんじゃないですか。いわゆる指示の範囲に入るものだと私は思うんです。地方自治法の245条の4は、大臣はその担任する事務に関し、必要な助言をすることができる、と定めたものでありますけど、大臣権限の事務でもなく、本質的に自治権に属するところの市町村合併の計画を、計画を立案する、目標と期限を定める、そしてその遂行を自治体に要求する、これ、大臣の権限を逸脱してると思うんですが、大臣いかがですか。

○芳山自治行政局長
  御指摘がありますが、総務省の設置法ないしは合併特例法におきましても、自主的市町村合併の推進については自治大臣ないしは総務省の任務となっております。先の合併特例法の改正の時に、そこの部分、改正になりまして、都道府県に対して、総務省として、国として、助言をするという具合になりました。この背景としましては、地方分権推進委員会の12年11月27日の市町村合併の推進についての意見というものがございました。その中に合併推進についての指針への追加の中で、「各都道府県に知事を長とする市町村合併のための全庁的な支援体制を整備することの要請などを追加する」というようなことも踏まえつつ、今回、指針を出したものでございます。

○矢島恒夫君
  政府のずるいところはね、法律に基づく指導というのを避けて、通達で目的を果たそうとする、言うなれば中央集権的な手法だと思うんです。つまり合併勧告提起といたしますとこれは合併の強制になって分権時代には使えない、そこで政府通達で県を動かし、合併構想提起と、こういう形を取っている。つまり、中身は同じ目的を果たすために法律を使わずに通達で無理押しをしている。これは分権推進委員会がもっとも強く、廃止を迫ったところの通達行政だと、私は指摘せざるを得ない。次にこの問題について総務省お答えいただきたいんですが、総務省から都道府県に出向している職員数、主な出向先のポスト、どうなっているか、また政府全体の出向者数、どうなっているか、お答えいただきたいと思います。

○團官房長
  総務省から都道府県への出向者数のお尋ねでございます。昨年8月のものが一番新しい数字でございまして、今年もあまり数字は変わってないと思いますが、昨年8月時点におきまして、旧郵政省から16名、旧自治省から203名及び旧総務庁から2名、合計で221名のものが出向しているという状況でございます。なお、出向者の配置ですけど、都道府県からの要請を受けて配置をされているというものでございますけど、結果的にその主な配置されている部局ないし課につきましては、部局では、総務関係、企画関係、商工労働関係部局が多うございます。課につきましては、財政課、市町村課、企画調整課等が多いという状況でございます。

○大坪人事恩給局長
  政府全体での出向者数につきましては、私の方から御説明申し上げますが、先ほど総務省の数字説明ありましたけど、それを併せまして、平成12年8月15日現在で1226人が政府全体の都道府県への出向者数になっております。

○矢島恒夫君
  221名、自治省関係、旧郵政省あるいは総務庁関係、その先がポストとしては、総務部長、企画調整部長だとか、市町村課長だとか、あるいは財政課長だとか、それぞれのポストいってます。つまりね、私が言いたいのは、自分で作った、先程来、私が問題にしている通達、これを出先で自分たちで受け取って、住民が知らないところで市町村合併の線を勝手に引いて、合併の企画立案書を作ったと、これを政府に報告したと、期限を決めて市町村にその達成を迫る。つまりそういう仕組みになってるんです。つまり、通達で出すと、通達を受け取るのが、総務部長とか、企画調整部長とか、それぞれ出向者だ。一体となって、企画立案書を作って。こういうやり方というのは、私は、やはり強制的な市町村合併には反対だという全国町村長大会での垂れ幕や決議、こういうものになって表れるように、強制してません、強制的してません、自主的ですとこう言ってんですよ。しかし、実際の中身というのはこういう仕組みになっているということを指摘せざるを得ない。いかがですか。

○遠藤副大臣
  国と地方の職員の人事交流というのは、ともに同じ立場、共同でいろんな情報交換するあるいは研修にもなる、そういうことでやっているものでございまして、対等の立場で行っているのが基本でございます。また、国から地方に行っている職員は、そもそも地方から要請されて、それに応えて行っているわけでございまして、何も私どもが、国の意思を地方で実現する意志をもって派遣しているものではございません。

○矢島恒夫君
  確認しておきたいんですが、静岡大学のミツハシヨシアキ先生が「住民と自治」の中で、こんな指摘をされてます。憲法の定める地方自治の原則からすれば、市町村合併の問題は市町村や住民の自主的かつ民主的な判断に委ねられるべき自主的な課題である。大臣、市町村合併、自治、民主、公開、これが原則であると私は思うんですが、その点はよろしいですか。

○片山総務大臣
  当委員会で何度も申し上げておりますようにね、今回の合併は自主的な合併、ただですね、やっぱり保守的な雰囲気もありましてね、首長さんや議員さんには、今のままでうまくいっているのに何で変えないかんと、こういう感じがあるんで、やっぱり将来の地域社会の有り様を考えてください、そういうことの指導やね、啓蒙は我々の役目ですから、これはさせていただきます。その上で最終的にお決めになるのは、その地域の住民であり、あるいは具体的に言うと、議会の議決がいりますんで、あるいは首長さんの進達がいりますんで、そういうことで進めると、こういうことであります。

○矢島恒夫君
  私、先週と今週、2回にわたって、この問題をとり上げてまいりました。市町村合併、これを強制するような通達は撤回すべきだと思いますし、一般的住民投票制度の導入、積極的に進めるべきだということを申し上げて、もう一つの問題、住民訴訟の問題で残り時間お聞きしたいと思います。


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