国会衆議院 本会議録

平成14年2月22日(金曜日)

○春名真章君
  次に、現下の地方自治、地方行財政をめぐる焦点となっている市町村合併の問題について伺います。
  福島県の矢祭町議会は、昨年十月「合併しない宣言」を全会一致で決議しました。根本町長は、「矢祭町は歴史と地域の実情から、どこの町とも合併しない」「合併を前提にしたまちづくり、村おこしなどはあろうはずがありません」と述べています。町のホームページには、一日最大数千件のアクセスがあり、今もなお視察が続いているとのことであります。総務大臣、どうしてこれほどの反響があると思いますか。率直に感想をお聞きしたいと思います。私はここに地方自治の魂をみるのであります。今、国のなすべきことは、市町村合併に血道を上げるのではなく、厳しい財政事情の中でも、住民の暮らしを守るために努力している自治体を物心両面で応援することではないでしょうか。
  しかるに、政府は千を目標に合併するとの与党方針を閣議決定で確認し、2005年3月末までに市町村合併を推進するとしています。期限を切って、上から目標数値まで持って推進するやり方がどうして地方分権の時代に許されるのですか。これこそ乱暴な地方自治の破壊ではありませんか、答弁を求めたいと思います。
  こうした合併をアメとムチの政策で強行しようとしていることも重大です。最大のアメと言われるものが、財政の特例的な措置の数々です。合併特例債は、合併市町村にハコモノ建設などに限り、地方債発行を95%まで認め、後に元利償還の7割を交付税で措置するものであります。これは、合併推進という国の政策に、地方の共有財産である地方交付税を利用する政策誘導そのものであり、地方交付税の趣旨を逸脱していると考えますが、総務大臣、いかがですか。また、1000にするということは、ほとんどすべての市町村が合併特例債を活用するということを意味します。もし、その上限いっぱいを使ったとき、本当に全額地方交付税で手当てできるのですか。根拠をはっきり示していただきたいと思います。
  合併算定替は、向こう10年間地方交付税を合併前市町村に配分されていた合算額を支出するというものであります。しかし激変緩和措置が終わる16年目からは一体どうなるんですか、合併前の市町村に配分されていた交付税総額の7割、6割へと大きく削減されるのではありませんか。そうならない根拠はどこにあるのか、明確な答弁を求めたいと思います。
 最大のムチは、地方交付税の段階補正の見直しであります。人口が少ない市町村の交付税の割増を行ってきたこの制度を、今、見直ししなければならない合理的根拠がどこにあるのですか。総務大臣は、「ちょっと地方に優遇過ぎるのではないかという声がある」「とにかく今ぬくぬくとしているから、いささかも変えたくないというのは困る」と、人口の少ない自治体を敵視するかのような発言をされています。しかし、日本世論調査会が昨年9月末に行った世論調査でも「国土の均衡ある発展のためには地方に多く配分するのは当然であるとの意見もあるが、どう思うか」との問に、約7割の国民が地方へ厚くしている交付税を削減すべきでないと答えています。国民の声を無視するのですか。答弁を求めたいと思います。少なくない首長や自治体から「これは合併に向けた兵糧攻めだ」との反発と批判の声が上がっています。政府は「あくまで自主的な合併」と言われています。そうであれば、直ちに段階補正見直しを中止すべきであります。答弁を求めたいと思います。
  平成の大合併には、行政効率という角度だけで、団体自治、住民自治という地方自治の本旨の実現に資するという角度がありません。もし千の自治体に再編するとなればどんな事態となるのか。一例をあげれば、政令市、東京23区を除いて、現行57,000人の地方議員数が、法定上限一杯で計算しても、36,000人、約6割へと激減することになるのです。政府は、これからは、自己決定自己責任の時代といいます。しかし、住民自身が選ぶ首長も議員も存在しない、そういう地域を広範に作り出して、どうして、自己責任自己決定が強化されるのですか。逆行するのではないですか。明確な答弁を求めます。
  なぜ、上から合併を押し付ける、それは市町村合併を国から地方への財政支出を削減する自治体リストラの究極の手段、こう位置づけているからではないでしょうか。明確に答弁していただきたいと思います。
  日本共産党は、強制的な市町村合併を許さず、地方自治、住民の暮らしを守るため、全国の自治体、そして首長、住民の皆さんとともに、全力を尽くすことを申し上げ、質問を終わります。  

○片山大臣
  〜福島県の矢祭町の「合併しない宣言」、町長さんの考え、議会の考えで、そういう宣言されて、大変アクセスがある、来られる方が多いわけでありますが、一方、合併する方にもね、いっぱいアクセスがあって、いっぱい来られておりますからね、それはそれで地方団体のお考えで行きたい方に行っていただければ結構ではないかと考えております。
  「市町村数を千とする」という国の目標数値でございますが、これはひとつのね、何かことをやるときには、何か目標がいるわけでありますから、与党三党のいわゆる千を目標といたしたわけでありまして、あくまでも自主的な合併で、それぞれの市町村の関係の首長さん、議員さん、住民のみなさんが、あるべき地域社会の将来を考えて、御判断賜れば結構だと、こういうふうに考えております。したがって合併特例債もですね、合併に伴い、ひとつの町村としてまちづくりのために必要な事業については、これを面倒をみてやろうと、その財源を確保してやろうと考えたものでありまして、合併に伴い増加する財政需要に充てるものでありますから、是非そのために御理解を賜りたいというふうに考えております。合併特例債だらけになって、将来の交付税、足りるのかと。大丈夫でございます。それは、将来とも、地方交付税あるいは地方の一般財源につきましては、毎年度の地方財政計画の策定を通じて保証するわけでありまして、この点についての御心配は制度的にないものだと考えております。
  それから合併算定替についてでございまして、10年間は合併しなかった場合の交付税額を保証すると、さらに5年間は激変緩和措置があるから、そのあとはどうなるかと、その時はね、15年もたちますと状況は全然変わっておりますしね、合併する団体の規模、置かれているいろいろな条件、財政力の違い、どういう団体が合併するか等によって、千差万別でございまして、16年後どうなるかということは数字的に一概には言えないんではなかろうかと考えております。
  段階補正につきましては、お話がありましたように、小規模な人口が少ない市町村ほど、割増していくと、こういう制度でございまして、昔からやってるんです、何十年も。ただ、現在の実状をみたときに、少し優遇しすぎではないかという御指摘がありますので、我々は実態調査をしまして、実態に即したものに少しカットさせてもらおうと、16,7%、3ヶ年でカットしようと、ということでございまして、これは合併のための兵糧攻めという考え方はまったく持っておりませんので、御理解賜りたいと思います。
  また、合併すれば、議員さんが減るというのは、これは当然そういうことになるんでございますが、議員さんが多ければ良いっていうものでもないと私は思いますね。そこで合併のために旧市町村単位で地域審議会等を設けることができて、そこで旧市町村単位のいろんな住民の意向は汲み上げるような仕組みも法的に定めておりますので、是非それをご活用賜れば大変ありがたい。
  我々は、市町村合併は効率化のためではありません。地方分権の担い手として、しっかりした市町村を作っていく。市町村をもっと強く大きく元気にすると、こういうためにやってるわけでありまして、結果としての効率化というのもあるかもしれませんけど、我々は地方分権推進の有力な手段であると、こういうふうに思ってるわけであります。


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