● 規制改革の推進に関する第3次答申(抄) (平成15年12月22日 総合規制改革会議)



第1 章  分野横断的な取組

  「規制改革推進のためのアクションプラン」の適切な実行

<追加5の重点検討事項>

1   公共施設・サービスの民間開放の促進(いわゆる「公物管理」の見直しなど)

【現状認識】

  総合規制改革会議は、これまでも、「官製市場の民間開放」を積極的に推進してきた。しかしながら、経済活性化を通じた「消費者・利用者本位の社会」を実現するためには、「国営事業の独占や公的介入等により抑制されてきた潜在的な市場を民間事業者に開放し、官民同一条件の下での競争を促進することにより、民需と雇用機会の拡大を図ること」がより一層重要である。
  また、当会議は、昨年の「規制改革の推進に関する第2次答申」の「民間参入の拡大による官製市場の見直し」においても、「政府部門の事務・事業全般について、民営化、民間への事業譲渡、民間委託により民間参入を積極的に推進するため、例えば内閣官房に推進母体を設置するなど、早急に政府内の推進体制を一元化し、推進計画を策定して、これらを総合的・包括的に進めることが重要である。その際、現在実施されている特殊法人改革や公益法人改革とも密接に連携・協力を図っていく必要がある。」としているが、このような「官業の民営化」などにより積極的に取り組むことが必要である。また、これは、来年4月以降に発足する予定の当会議の後継組織への円滑な移行に繋げるためにも、極めて重要であると考える。
  これらの観点から、以下の具体策を講ずべきである。

【具体的施策】

(1) 公共施設等の民間による「管理・運営」(「建設・所有」)の推進

  地方自治法(昭和22年法律第67号)上の「公の施設」など公共施設等の管理・運営については、民間の資金、経営能力、技術的能力を活用し、効率的かつ効果的にサービスを提供することが求められている。
  したがって、以下のような観点から、公共施設等の民間事業者による管理・運営等をより一層推進すべきである。

1)   PFI選定事業者による公共施設等の管理・運営の拡充【平成16年度中に措置】

  現在、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成11年法律第117号。以下「PFI法」という。)では、同法第7条第2項に基づき、国・地方公共団体等から選定された民間事業者(以下「PFI選定事業者」という。)は、協定等において行うこととされた「公共施設等の建設、維持管理及び運営(これらに関する企画を含む。)」(PFI法第1条)を行うことができると規定されている。
  このうち地方公共団体が設置する「公の施設」に関しては、当該地方公共団体から選定されたPFI選定事業者は、清掃、警備、維持補修等の「事実上の管理行為」や入場券の検認等の定型的行為、当該施設運営に係るソフト面の企画等を行い得るが、当該施設の利用料金を自己の収入として収受することや当該料金を設定することを含め「施設の管理を包括的に民間事業者に行わせる場合は、原則として地方自治法第244条の2第3項に規定する公の施設の指定管理者の制度を採用すること」とされている。(平成12年3月29日自治事務次官「地方公共団体におけるPFI事業について」、平成15年9月2日一部改正)
  ただし、国家賠償法(昭和22年法律第125号)に基づく賠償責任や公権力の行使を伴う管理権限は、いわゆる「公物管理法」などに定められる「管理者」など当該公共施設を設置・管理する国や地方公共団体等にあるとされているが、いかなる行為が「公権力の行使」に該当するかなどについては、法理論、様々な一般法や、公物管理法など各個別法の運用・解釈にゆだねられており、公共施設等について、PFI選定事業者が行い得る業務の範囲は明確でないものもある。
  したがって、PFI事業については、その一層の活用促進に資するよう、以下の措置を講ずべきである。
  ア   公共施設等の設計・建設・維持管理・運営の全部又は一部を一体的に行った事例として、PFI事業の事例集を作成、公表し、先行事例の紹介を図るべきである。
  イ   公物管理法などの解釈において、PFI選定事業者が各公共施設等において行い得る事業の範囲を明確化し、周知徹底すべきである。

2)   公の施設の管理における「指定管理者制度」の活用促進【平成16年度中に措置】
 
  本年6月の地方自治法の改正により、9月から施行されている「指定管理者制度」とは、これまで地方公共団体等の有する公の施設の管理・運営については、一定の要件を満たした第3セクターなどにしか認められなかったところであるが、昨年度の当会議の答申等を受け、「指定管理者」としての民間事業者一般にこれを容認したものである。
  ただし、現在でも、各種公物管理法により「管理者」が国や地方公共団体等に限定されている公の施設の場合、都市公園を除き、民間事業者が「指定管理者」としてその管理・運営を行うことが可能であるか否かは明確にされていない。
  したがって、こうした指定管理者制度の一層の活用を図るため、本制度を地方公共団体が活用した場合には、当該地方公共団体が指定した「管理者」は、各種公物管理法に関係する公の施設等について、その管理・運営等を行うことが可能であることを必要に応じ通知するなど、所要の措置を講ずべきである。

(2)

  略

(3)   公共サービスの民間による実施(「民間委託・アウトソーシング」)の推進

  当会議のこれまでの取組に加えて、今般、内閣に設置された地域再生本部においても、各省庁との総合調整機能を十分に発揮することにより、今後、政府が一丸となって地域再生に関連する各種施策の一層の推進を図っていくことが期待されている。現在、同本部において検討されている地域からの提案募集についても、地域再生のため「実現するためにはどうすればいいか」という基本姿勢で検討を行い、各種の支援措置に係る政府としての対応を「地域再生推進のためのプログラム(仮称)」として同本部において決定し、これに基づき、必要な制度改正等を行っていくことが予定されている。
  当会議及び地域再生本部におけるこうした取組の中で、行政サービスの民間開放等については、政府として、以下のような対応を行うべきである。
  内閣府が本年11月26日にまとめた「行政サービスの民間開放等に係る論点について」にあるように、行政サービスの民間開放には、民間事業者による創意工夫ある取組によってサービスが効率的・効果的に実施されることや、これまで地方公共団体が直接担当してきたサービスについて地域の特性に応じた潜在的なニーズを民間の創意工夫で顕在化させ、新たなビジネスの機会や雇用の機会を創出することなど各種の効果が期待されるところであるため、これを阻害している要因がある場合には、一般的な制度的対応に加え、地域を限定して更にアウトソーシングを思い切った形で実現することを可能とするなど制度改正等による適切な対応策を講ずべきである。
  また、PFI等、公共的な事業等に対する民間資金の活用手法の一層の活用やその他の多様な手法も含めた活用のための方策についても、地域の具体的な要望に応じて検討した上で、関連制度の見直し等必要な措置を講じるなど積極的に推進していくこととすべきである。
  特に、上記に基づき、国・地方公共団体の行う公共サービスを民間移託しようとした場合、
  1) 取り扱える者を公務員に限定していたり、
  2) 委託先を(各都道府県などに存在する)指定法人に限定
  しているサービスが多いことから、これらを積極的に民間開放していくべきである。

(4)   公共サービス等の民間開放促進のための「手段」としての「市場化テスト」の実施と「数値目標」の設定

  公共サービス等の民間開放を促進する横断的手段となり得るのが、世界各国で実施されている「市場化テスト」と、米国で実施されている民間委託に関する「数値目標」の設定であり、我が国においてもこれらを参考とした制度の導入について検討する必要がある。

1)   市場化テスト【平成16年度中に措置】

  「市場化テスト(Market Testing)」とは、官が提供しているサービスと同種のサービスを提供する民間事業者が存在する場合に、公平な競争条件の下、官と民とで競争入札を実施し、価格と質の面でより優れた方が落札する制度であり、英、豪、オランダ、デンマーク、スウェーデンといった国々で現に実施されている。我が国においても、官民間の公平な競争条件を担保するため、海外の事例も参考としながら、国民生活の安全面の確保等に関する行政責任の在り方についての観点にも留意しつつ、「市場化テスト」(官民間の競争入札制度)の導入について調査・研究を行うべきである。

2)   民間委託に関する数値目標の設定【平成16年度中に措置】

  米国では、連邦政府業務棚卸法(Federal Activities Inventory Reform(FAIR) Act)により、各行政機関は、実施している業務のうち、民間委託可能な業務をリスト化し、公表することを義務付けられている。また、本リストは、連邦行政管理予算局によりチェックされた上で公表されるが、これに対して、民間事業者等から、リストに未掲載の民間委託可能な業務を追加すべき旨の意見提出が可能とされている。さらに、ブッシュ大統領の行革アジェンダ(2002年)、連邦行政管理予算局の進捗状況レポート(2003年)においては、連邦政府業務の民間委託の数値目標と達成期限が設定されている(2003年までに全体の15%の民間委託を実施することなど)。
  こうした中で、官から民への事業移管を加速化するため、我が国においても、民間委託に関する「数値目標」についての調査・研究を行うべきである。

【今後の課題】

(1)

  公共施設等の民間による「管理・運営」(「建設・所有」)の推進

  総合規制改革会議の前身である規制改革委員会の平成10年から12年の「見解」等(住宅・土地・公共工事ワーキンググループ担当)においては、「PFI構想の具体化」として、「公共施設等については、その多くが、公的主体(各施設の管理者又は事業を所管する者としての大臣、地方公共団体の長、特殊法人等)により、公的資金の負担の下、設置、管理がなされる」、「PFI構想を推進するため、民間事業者に行わせることが適切なものについては、できる限りその実施を民間事業者に委ねるとの観点から、官民の役割分担・責任分担の在り方、公共施設等の設置・管理に関する法律その他関係法について検討を進める」旨が盛り込まれ、また、「今後、PFIが更に円滑に活用され、公共施設等について一定の支払いに対し最も価値の高いサービスを提供するという形(Value for Money)で、国民に対して低廉かつ良好なサービスが提供されることを期待する」(平成12年12月12日「規制改革についての見解」)と結ばれている。
  公共事業関係費の抑制が長期的に持続すると見られる中で、これまでのように、「公共施設は国や地方公共団体により設置・管理されるもの」という基本認識を転換し、民間資金を活用した管理・運営(建設・所有)を推進することが必要とされている。したがって、規制改革委員会における上記問題意識とその取組を踏まえ、公共施設についてPFI選定事業者などの民間事業者を積極的に活用していくためには、公共施設の設置・管理に関する法律などについて更なる検討を進めるべきである。
  公共施設のうち、例えば、特別養護老人ホームについては、その設置・管理等をPFI選定事業者が行う際には、本年4月に施行された構造改革特別区域法においてPFI法と社会福祉法との調整規定を設け、これらの法的関係を整理したところである。しかしながら、他方、国や地方公共団体、特殊法人等の公的主体を「管理者」と位置付けた、いわゆる「公物管理法」に基づく道路、河川、空港、港湾、都市公園、下水道などについては、上記のような法的整理がなされていない。
  したがって、例えばPFI法と公物管理法との法的整理を早急に行うことなどにより、公共施設の民間事業者による管理・運営等をより一層推進すべきである。

(2)

  略

(3)   公共サービス等の民間開放促進のための「手段」としての「市場化テスト」の実施と「数値目標」の設定

  「市場化テスト」などにより、公共サービス等の民間開放をより一層促進するためには、当該業務に従事する公務員の民間への転出、配置転換、任期付職員の採用など効率的な人材配置を可能とする仕組みについても検討すべきである。
  また、「市場化テスト」の実施に当たっては、官民間の競争条件が公平なものとなっていることを担保するための第三者機関の設置など、評価・監視機能が必要とされる。
  さらに、民間委託の数値目標の設定に当たっては、国レベルでの目標設定については、閣議決定などにより、各府省、特殊法人等に実施を義務付ければ可能であると考える。また、地方公共団体レベルでの実施を促進するには、これらの取組を行う地方公共団体の移行期の負担を軽減する支援措置を講ずることが適当と考える。




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