発表日  : 1999年 3月30日(火)

タイトル : 「番号ポータビリティの費用負担に関する研究会」







                 報告書



               郵政省電気通信局

    http://www.mpt.go.jp/pressrelease/japanese/denki/index.htm



                 目 次



第1部 番号ポータビリティの実現
 I 番号ポータビリティの意義
 II 番号ポータビリティの実現方式
 III 実現方式に向けた段階的アプローチ
  1 段階的アプローチに向けた検討
  2 第1段階方式への検討項目
  3 第1段階方式の内容

第2部 番号ポータビリティの費用負担・費用回収
 I 費用の分類
  1 費用の分類
  2 段階的アプローチにおける考え方
 II 基本改造費用の負担・回収
  1 一義的な費用負担
  2 費用回収の基本的な考え方
  3 費用回収の具体的方法
 III 申込処理費用の負担・回収
 IV 追加伝送費用の負担・回収
 V 着信課金サービスにおける費用負担の在り方

【参考資料】









                 第1部

             番号ポータビリティの実現



I 番号ポータビリティの意義                       

 番号ポータビリティは、電話の利用者が、これまで自らの番号として用いていた
電話番号を変更せずに、その加入する電気通信事業者を変更することが出来るよう
にするものである。

 その導入については、電気通信審議会答申『接続の基本的ルールの在り方につい
て』(平成8年12月)において提言が行われたのを受けて、『番号ポータビリテ
ィの実現方式に関する研究会報告書』(平成10年5月)において、その実現方式
について提言がなされた。これらの答申・報告書に反映されたこれまでの議論を踏
まえ、あらためて、番号ポータビリティ導入に向けた基本的な視点と、番号ポータ
ビリティを実現する機能の接続政策上の位置づけについて整理すると、次のとおり
となる。

 番号ポータビリティを導入するに当たって考慮されるべき、基本的な視点として
は、次の2点が重要と考えられる。
1

 1) 利用者利益の確保



1
 番号ポータビリティの意義については、電気通信審議会答申『接続の基本的ルー
ルの在り方について』(平成8年12月19日)においては、次のように指摘され
ていた(第III章第8節1 番号ポータビリティの確保の意義)。

「特定事業者の加入者は、番号変更に伴う周知等のコストを考慮し、事業者を変更
する際に番号が変わる場合には、事業者を変更しない可能性があることから、特定
事業者が競争上の優位性を保持し続けることとなる。
 したがって、競争の促進及び利用者利便の増進の観点から、特定事業者の利用者
が他事業者に加入を変更する場合に、番号ポータビリティが確保されることが求め
られる。」

 また、『番号ポータビリティの実現方式に関する研究会報告書』(平成10年5
月)においては、次のように指摘していた(序)。

「現在、利用者が契約する事業者を変更する際、電話番号の変更を余儀なくされ、
番号変更の周知のために大きな負担がかかっている。番号ポータビリティは、事業
者変更の際に番号変更を不要にするものであり、利用者が事業者を選択する際の自
由度を実質的に確保することにより、利用者の利便性の向上及び事業者間の競争の
促進を図るものである。」


 2) 公正競争の確保

 まず1)利用者利益の確保についてであるが、番号ポータビリティの実現は国民生
活に不可欠な電話サービス・ISDNの在り方に関わる問題であり、また、番号を
変更せずに加入事業者を変更する、という利用者の便益を基本とするものであるこ
とから、その導入にあたっては利用者の利便の増進を旨とすべきであり、その提供
形態においても、利用者の便益が損ねられるようなことのないようにされる必要が
ある。

 次に2)公正競争の確保についてであるが、番号ポータビリティの実現は、加入者
の確保にあたって、各事業者の提供条件によらない、事業者間の差別化要因となり
得る、加入事業者変更時の電話番号の変更の不便を解消するものであり、その機能
は、個別提供条件の前提条件として、電話・ISDNが競争的に提供されるための
必須の機能として考える必要がある。従って、その具体的な提供形態においても、
公正競争条件を損ねることのないようにされる必要がある。

 番号ポータビリティの確保については、『接続の基本的なルールの在り方につい
て』においても、加入者回線を相当規模で有する事業者のネットワーク(答申では
「不可欠設備」と表現されたが、現行法上の指定電気通信設備に当たることから、
以下「指定設備」という。)について定められる条件として議論されてきた。
2
指定




2
 これについては、電気通信審議会答申『接続の基本的ルールの在り方について』
(平成8年12月19日)においては次のように指摘されていた(第IV章 第1節
 総論 4 特別な接続ルールの内容 (1) 接続条件の料金表・約款化、 第8節
 番号ポータビリティ 1 番号ポータビリティの確保の意義)。

「不可欠設備との接続に関しては、・・・料金表・約款に定める条件について
は、・・・以下の基準を満たすよう作成されるべきである。
 ・・・
 6) 特定事業者の利用者が他事業者に加入を変更する場合に、当該利用者が同一
の番号を保持すること(以下「番号ポータビリティ」という。)が確保されること。
   ただし、他事業者が、特定事業者に対して番号ポータビリティを提供しない
場合には、他事業者からの番号ポータビリティの提供の申入れを拒否することは認
められる。」
「特定事業者の加入者は、番号変更に伴う周知等のコストを考慮し、事業者を変更
する際に番号が変わる場合には、事業者を変更しない可能性があることから、特定
事業者が競争上の優位性を保持し続けることとなる。
 したがって、競争の促進及び利用者利便の増進の観点から、特定事業者の利用者
が他事業者に加入を変更する場合に、番号ポータビリティが確保されることが求め
られる。」


設備は、各事業者の事業展開上接続が不可欠であり、また、利用者の利便性の確保
のためにその利用の確保が不可欠であることから、特別な接続ルールの下でその接
続条件が確保されることとされている。上述1)2)の2つの基本的な視点に照らして
番号ポータビリティはその指定設備のネットワークが本来有すべき機能であり、接
続の基本的ルールにおける、基本的な接続機能
3
として位置づけられた上で接続約款
に記載されるべきものとして捉えられるべきである。




3
 前出『接続の基本的ルールの在り方について』において次のとおり説明されてい
る費用にかかる機能に該当する(第IV章 第7節 接続関連費用の負担の在り方 
2 接続関連費用の負担の考え方 (1) ネットワークの改造費用)。

「接続が確保されることが、競争を促進し、利用者利便の増進を通じて公共の利益
に適うとの観点から、基本的な接続機能を提供するために発生するネットワークの
改造費用については、事業者間接続に固有の費用としてではなく、ネットワークが
本来有すべき機能を備えるための費用とみるべきである。」



II 番号ポータビリティの実現方式                     

 番号ポータビリティの実現方式は、『番号ポータビリティの実現方式に関する研
究会報告書』(平成10年5月)において提言されている。本研究会においても、
ここにおいて提言された実現方式を最終的な実現方式とすることを前提に検討を行
った。

 一般加入電話・ISDNについては、「最適回線再設定方式」が提言されている。
 これは、移転元事業者が移転先を示す情報を取得し、移転元事業者内で必要に応
じて回線を遡って開放し、移転先事業者への回線設定を起動する方式である。
 又、このオプションとして、関係事業者間で合意が得られる場合には、移転元事
業者が移転先を示す情報を取得し、前位事業者(発信事業者又は中継事業者)まで
回線を遡って開放し、前位事業者が移転先事業者への回線設定を起動する方式を採
用することが適当である、とされた。(図1)

        


 着信課金サービスについては、「情報取得方法選択方式」が提言されている。
 これは、SCPから情報を取得する方法として共通線信号網を介して直接SCP
に問い合わせを行う方法又は接続点を介した回線接続によりSCPへの問い合わせ
を行う方法のうちのいずれかを選択することとし、移転先を示す情報の取得方法に
ついては発信事業者と移転元事業者との間での合意により選択し、着信先を示す情
報の取得方法については発信事業者と移転先事業者との間での合意により選択して、
着信先への回線設定を起動する方法である。(図2)

        
III 実現方式に向けた段階的アプローチ                  

1 段階的アプローチに向けた検討

  これらの実現方式を念頭に番号ポータビリティを実現することとするが、但し
 その際には、一般加入電話・ISDNについて、立ち上がり期においては実際に
 見込まれる移転が比較的少ないのに対して、当初から提言された実現方式(最適
 回線再設定方式)をフルスペックで実現するとすると、網改造のための費用がか
 なり多額にのぼることが想定されることにも配慮が必要である。これについては、
 日本電信電話株式会社(NTT)の試算では、開発費概算値730億円程度、取
 付費・共通割掛費130億円程度の合計860億円程度が見込まれている。この
 ような試算の適正性については吟味が必要であり、番号ポータビリティの機能に
 ついて接続料が設定される際にはその認可に際して十分な審査が求められるが、
 いずれにしても見込まれる費用が巨額であることは事実であり、当面の費用削減
 策について検討することが必要である。

  一方で、着信課金サービスについては同試算では、開発費概算値48億円程度、
 取付費・共通割掛費12億円程度の合計60億円程度(この前提となる市内交換
 機能の分を除く。)が見込まれているが、各事業者が負担しきれない程度の水準
 とまでは言えないことから、当初より提言された実現方式(情報取得方法選択方
 式)により実現することとする。

  一般加入電話・ISDNについて、実際に移転元・移転先等においてかかる費
 用の水準と、利用者や関係事業者において求められるニーズとを比較衡量して、
 提言された実現方式をフルスペックで実現するまでの段階的な実現の方策につい
 て検討を行った。

  まず、提言されている実現方式の枠内において、その将来的発展を見据えた場
 合には次善の策となるが、当面の簡略化として考えられる条件として次の2つが
 考えられる。

 (1) 選択した交換機での対応:
   既存交換機の全てにおいて対応するのではなく、交換機の置換計画等を踏ま
  えると共に番号ポータビリティに対する競争事業者のニーズに対応できるよう
  配慮しながら、一部の選択した機種の交換機の改造により対応すること。
 (2) 交換機データベース参照方式:
   着信交換機からINのデータベースにアクセスすることで情報を取得して回
  線設定を行う方式によることとせず、当面、移転元交換機のデータベースを参
  照する方式によることとすること。

  次に、提言されている番号ポータビリティの実現方式については、電気通信審
 議会答申『接続の基本的ルールの在り方について』及び『番号ポータビリティの
 実現方式に関する研究会報告書』において種々の条件が前提とされているので、
 それら各条件について、段階的な実現に向けた考え方を整理した。

  このうち、次の3条件
4
については、番号ポータビリティ実現にあたって留意さ
 れるべき必須的事項であり、利用者利益の確保、公正競争の確保の観点から、そ
 の導入の当初より確保される必要があると考えられる。

 ア 網サービス、機能、能力の維持:
   番号ポータビリティの導入に際して、既存の網サービス、機能、能力を従来
  どおり提供すること。
 イ サービス品質、ネットワークの信頼性の維持:
   番号ポータビリティの導入に際して、事業者が提供するサービス品質及びネ





4
 前出『接続の基本的ルールの在り方について』においては、次のとおり指摘され
ていた(第IV章第8節2(4))。

「番号ポータビリティの具体的な内容
 ・・・
 具体的な実現方式については、次の要件を満たすものとすべきである。
1) 番号ポータビリティの導入に際して、既存の網サービス、機能、能力を従来ど
 おり提供すること。
 ・・・
3) 番号ポータビリティの導入に際して、事業者が提供するサービス品質及びネッ
 トワークの信頼性について、不合理な低下をきたさないこと。
4) 番号ポータビリティの提供を受けている利用者とそれ以外の利用者との間で、
 サービス品質、ネットワークの信頼性について、不合理な差が生じないこと。」


  ットワークの信頼性について、不合理な低下をきたさないこと。
 ウ 利用者間の不当な差別的取扱の排除:
   番号ポータビリティの提供を受けている利用者とそれ以外の利用者との間で、
  サービス品質、ネットワークの信頼性について、不合理な差が生じないこと。

  これに対して、エ番号資源の効率的利用
5
、オ双方向性の確保
6
、カ折り返し回
 線の設定の回避
7
の3条件については、立ち上がり当初から必ず実現されなけらば
 ならない必須事項とまでは言えないものであるから、投資に必要な費用と、投資
 によって実現される諸利益・効果とを見極め、両者の比較衡量により、その段階
 的な実現を行うことについて検討を行った(但し、エに関して段階的な実現を図
 るとしても、二重の番号の使用は、市内局番の逼迫、ひいては市外局番、市内局
 番の変更に至らない範囲に限られるような配慮が必要である)。






5 前出『接続の基本的ルールの在り方について』における該当部分は次のとおり
(第IV章第8節2(4))。

「番号ポータビリティの具体的な内容
 ・・・
 具体的な実現方式については、次の要件を満たすものとすべきである。
 ・・・
 2) 番号資源の効率的利用を図ること。
 ・・・」

6 前出『接続の基本的ルールの在り方について』における該当部分は次のとおり
(第IV章第1節4(1))。

「不可欠設備との接続に関しては、・・・料金表・約款に定める条件について
は、・・・以下の基準を満たすよう作成されるべきである。
 ・・・
 6) 特定事業者の利用者が他事業者に加入を変更する場合に、当該利用者が同一
  の番号を保持すること(以下「番号ポータビリティ」という。)が確保される
  こと。
   ただし、他事業者が、特定事業者に対して番号ポータビリティを提供しない
  場合には、他事業者からの番号ポータビリティの提供の申入れを拒否すること
  は認められる。」

7 前出『番号ポータビリティの実現方式に関する研究会報告書』における該当部分
は次のとおり(第二章2.2(1)3))。

「【案1−1】は、折返し回線を設定する方式であるが、折返しの部分は呼が保留
される間回線が二重に使用されることになり、回線利用が非効率となることから、
可能な限り避けるべきである。」


  具体的には、次のような当面のスペックダウンについて検討を行った。

 (3) 二重の番号の使用:
   移転先を示す情報として移転元の番号及び移転先事業者の空き番号の二重の
  番号を利用すること。
 (4) 片方向の移転:
   移転先事業者において番号ポータビリティが提供されないときにおいても、
  将来的に双方向性を実現する等、一定の条件の下に、一定期間、暫定的に指定
  電気通信設備を設置する事業者において番号ポータビリティの提供を行うこと。
 (5) 折り返し回線の設定:
   移転元事業者において、中継交換機と加入者交換機との間で折り返しとなる
  回線をすること。


2 第1段階方式への検討項目

  提言されている方式をフルスペックで行うことを第2段階方式としたとき、そ
 の前段階である第1段階方式を実現するためのスペックダウンについて、1で挙
 げた次の5つの各項目に即して利用者の利便や公正競争の観点からスペックダウ
 ンが適当かどうかの検討を行った。

  (1) 選択した交換機での対応
  (2) 交換機データベース参照方式
  (3) 二重の番号の使用
  (4) 片方向の移転
  (5) 折り返し回線の設定

  その際には、スペックダウンによる費用削減効果の具体的なイメージを踏まえ
 た検討とするため、NTTから示された開発費概算値(次頁図3)を参照した。

  但し、このNTTの概算値については、
 1) 一定の仮定を置いて大まかに計算した値であり、詳細なデータに基づく計算
  値ではないため、今後変更されることがあり得ること、
 2) 短期間に概算見積りを行うという便宜上の理由から(1)から(5)までの順番で
  算定したものであり、この順番がスペックダウンの優先順位を考慮したもので
  はないこと、
 3) 従って今後の検討等において、順番の入れ替えや、一部のスペックダウンを
  しないこととすれば、第1段階方式の実現費用が変わり得ること、
  に留意する必要がある。


                (図3)


(1) 選択した交換機での対応について

  加入者交換機等について、現在NTTのネットワークにおいて使用されている
 交換機のうちD70、ISM、DMS−10については対応を行わないこととし、
 次世代の加入者交換機であるMHN−Sのみについて対応を行うときには、NT
 Tの試算では、開発費概算値において730億円程度中180億円程度の削減効
 果が見込まれている。但しこの場合、地域によって番号ポータビリティが確保さ
 れる地域とそうでない地域とが生じるのであるから、これについて検討する際に
 は、費用の低廉化のみではなく、1)利用者の利益の確保及び2)公正競争の確保へ
 の影響についても考慮する必要がある。

 1) 選択した交換機での対応を行なった場合には、全交換機での対応を行なった
  ときとは異なり、利用者の所在地域によってはポータビリティが確保されない
  ことがあることを考慮する必要がある。

   しかしながら、選択対応を採らずに当初より全ての交換機で対応させること
  とすると、番号ポータビリティの需要が当面顕在化していない地域においても
  投資が行われる等、期待される効果に比して過大な投資額がかかる虞があり、
  むしろ電気通信役務の円滑な提供に支障をきたす可能性もある。

   国民生活に密接な電話サービス等においても、新規のサービスが需要の多く
  見込まれる地域から開始され、順次全国展開を行っていくことは、通常行われ
  ることであり、速やかに全国展開されるのであれば、サービス開始当初から全
  地域での提供が行われることまでが求められている訳ではないと考えられる。

   番号ポータビリティについても、MHN−Sのような、今後導入されて速や
  かに全国に展開していくような交換機において対応されるときには、それが当
  初から全地域で対応されていないことが利用者の利益増進を著しく損ねている
  とは言えないと考えられる。

 2) 選択した交換機での対応を採った場合に、全交換機対応に比して公正競争の
  確保について次の影響があることが想定される。

  ア 特定地域の事業者のみについて番号ポータビリティが確保される、という
   不公平が生じ得る。
  イ 番号ポータビリティが確保されていない地域について、潜在的な新規参入
   事業者の参入が阻害され得る。

   このうちアについては、地域において電話・ISDNを提供している事業者
  の提供地域が限定されている現在においては、これら事業者の要望に応じた地
  域展開が交換機対応において特段の支障のない範囲で確保されているのであれ
  ば特に問題とはならないと考えられる。

   イについては、参入阻害要因として懸念の対象となり得ることは否定できな
  いが、改造対象となる交換機の展開により、番号ポータビリティの十分速やか
  な全国展開が行われるのであれば、特に大きな参入阻害要因となるとまでは言
  えない。

(2) 交換機データベース参照方式について(非IN方式)

  交換機データベース参照方式について検討する際には、長期的な費用の低廉化
 と短期的な費用の低廉化とについて考慮する必要がある。

  長期的に、番号ポータビリティの将来的発展を考えた場合には、データベース
  を集約化したIN方式によることは効率的な運営が期待され、交換機毎にデー
  タベースを構築することになる交換機データベース参照方式は効率性の面で遜
  色がある。

  一方で、短期的にはIN方式は初期投資が莫大にかかることが見込まれる。N
 TTの試算では、(1)を前提とすると、IN方式を採らないことによる費用削減効
 果は開発費概算値で50億円程度にのぼると見込まれている。現在のような需要
 の限定された局面においては、暫定的に交換機毎にデータベースを設ける交換機
 データベース参照方式を採ることが効率的と考えられる。

(3) 二重の番号の使用について

  二重の番号の使用については、費用の低廉化と共に、利用者の利益への影響や、
 番号資源の有効活用についても考慮する必要がある。

  二重の番号の使用を行う場合には、NTTの試算では(1)(2)を前提としたとき
 は開発費概算値で80億円程度の費用削減が見込まれる。(1)(2)を前提としない
 場合等、前提条件次第でその水準は異なると考えられるが、何れにしても多額の
 費用削減要素となることが想定される。

  一方で、二重の番号を使用した場合、発信者番号通知サービスにおいて加入者
 が自らに割り当てられたと認識していない番号が表示されることの是非等につい
 て慎重な検討が必要となる。加入者が自らに割り当てられたと認識していない番
 号(いわゆる「裏番号」)は、本来番号として用いられることが想定されていな
 いものであり、利用者の混乱を招くことから、これが一般の番号としての機能を
 持つことは好ましいことではない。従って、この裏番号が着信者に番号表示され
 ることがないよう、事業者において配慮されることが求められる。仮に、裏番号
 表示をしないようにするための網改修コストがかさむ等、やむを得ない事情によ
 り裏番号が表示される場合においては、その事業者がその旨を利用者に対して事
 前に十分に周知することなどにより、利用者の混乱を回避する必要がある。

  また、二重の番号を使用するとした場合には番号資源の有効活用についても考
 慮する必要があり、具体的には、市内局番の逼迫、ひいては市外局番、市内局番
 の変更に至らない範囲に限られるようにすることが必要である。従って二重の番
 号を使用するときには、暫定的な期間中に限ることが必要であり、提供地域毎に
 移転加入者数についてのレビューを行う必要がある。


(4) 片方向の移転について

  片方向の移転については、その費用削減効果はNTTの試算では(1)(2)(3)を前
 提とすると開発費概算値で約350億円にのぼると見積もられている。但し、双
 方向性の確保については、費用との比較によってその意義如何について考慮する
 必要がある。具体的には、費用の低廉化のみではなく、1)利用者の利益の確保及
 び2)公正競争の確保への影響についても考慮する必要がある。

 1) 片方向の移転を採った場合に、双方向性が確保されたときと比べて、利用者
  の便益については、指定電気通信設備を設置する事業者への移転が確保されな
  い、という影響が想定される。これについては、指定電気通信設備を設置する
  事業者以外の地域事業者の加入者が比較的少ない当面の間においては、双方向
  の番号ポータビリティが確保された場合に比べて利用者便益の向上が大きく損
  なわれているとまでは言えない。

 2) 双方向性の確保は、指定設備の提供に係る特別な接続ルールの中で唱われて
  いる。非対称性を前提とした特別な接続ルールの中では、双方向性の概念は必
  ずしも一般的であるとは言えず、番号ポータビリティの確保の場合について特
  別に述べられているものである。

  特別な接続ルールの非対称性は指定設備への依存性を基礎とする概念であるか
 ら、番号ポータビリティにおける双方向性の確保は、指定設備への依存度が低い
 場合において特に重要と考えられるべきものである。

  地域市場への参入者が限られている上にそれらの加入者が限定されているよう
 な時点においては、接続事業者の指定設備への依存度が圧倒的に高いと言え、こ
 のような場合に双方向性の要件を緩和することは不適当とは言えず、このような
 期間に、将来の双方向性確保への移行を条件に片方向の移転を実現することまで
 が否定されるべきではないと考えられる。

(5) 折り返し回線の設定について

  折り返し回線の設定について検討する際には、長期的な費用の低廉化と短期的
 な費用の低廉化とについて比較衡量する必要がある。

  長期的には、折り返し回線の設定によって、呼が保留される間、折り返し部分
 が二重に使用されるのであるから、設備の有効利用の観点からは必ずしも好まし
 い訳ではない。

  短期的には、移転者が少ないために折り返し部分を経由する呼が大量に見込ま
 れる訳ではない、当面の間については、折り返し回線を設定することの方が、経
 済的であることも想定され得る。つまり、一定期間における呼毎に追加的に生じ
 る費用の総額が、折り返し回線を設定しないことで基本改造費用が高くなる分の
 金額を下回るのであれば、一定時期折り返し回線を設定する方式を採る方が経済
 的と考えられる。このような条件が満たされないのであれば、暫定的にであって
 も折り返し回線の設定を行うことは好ましくない。


3 第1段階方式の内容

  第1段階方式の具体的な内容としては、(1)選択した交換機での対応、(2)交換
 機データベース参照方式(非IN方式)、(3)二重の番号の使用、(4)片方向の移
 転を内容とし、更に、既に開発済みの機能を利活用して輻輳制御等について新た
 な開発を行わない(新たな開発による増分はNTT試算によれば開発費概算値で
 20−40億円程度に相当)方式(図4)が想定できる。

      


  これによってNTT網側の費用削減も最適回線再設定方式に比べて700億円
 程度が見込まれるばかりでなく、移転先となることを期待する接続事業者の側に
 おいても17億円程度(東京通信ネットワーク株式会社)から5,000万円程
 度以下(株式会社タイタス・コミュニケーションズ)の費用削減が見込まれるこ
 とになる。

  当面の間、この方式で番号ポータビリティの実現を図ることについては、関係
 事業者の合意も得られ、基本的には適当と考えられる。

  但し、二重の番号を使用するという点に関しては、2(3)で述べたように、番号
 資源の浪費となりかねないことや、何らかの措置を講じないと番号通知サービス
 を利用する利用者のいわゆる「裏番号」が通知されてしまうという問題があるこ
 とから、
 1) 4項目のスペックダウン事項の中で二重の番号についてのみスペックダウン
  をせず、二重の番号の使用を回避することとする場合の費用がどの程度かかる
  か、あらためて算定した上で本件の扱いを検討すること、
 2) 1)の検討において、仮に二重の番号を使用することがやむを得ないと判断さ
  れた場合においては、番号逼迫・「裏番号」表示等の問題への対策を検討する
  ことが必要である。

  また、選択した交換機での対応というスペックダウン項目についても、他のス
 ペックダウン事項の対応の後に、選択する交換機を拡大した場合に費用がどうな
 るかの検証を行った上で、費用対効果の観点からMHN−Sのみではなく、他の
 機種等にも番号ポータビリティの機能を具有させることが可能かどうか検討する
 必要がある。

  なお、これらの検討にあたっては別途適当な検討の場を設けると共に番号ポー
 タビリティの早期実現を図るという観点からできるだけ早急に結論が得られるよ
 う努めるべきである。

  以上のようにして確定した第1段階方式を行う際には、そこから最適回線再設
 定方式(第2段階方式)への移行の条件について明確にする必要がある。

  第1段階方式を採る理由は、上述のように、当初から第2段階方式を採ると立
 ち上がり期においては実際に見込まれる移転が比較的少ないのに対して、網改造
 のための費用がかなり多額にのぼることが想定される為であるので、次のような
 プロセスを経て条件が整えば速やかに第2段階方式への移行を行うこととすべき
 である。なお、仮に第2段階方式へただちに移行することが時期尚早と考えられ
 る場合においても、第1段階方式でスペックダウンした項目毎にスペックアップ
 が可能かどうか検討するなど現実的かつ柔軟な対処が必要である。

 (1) 第1段階の実現から2年後を目途として、郵政省においてNTTより状況の
  報告を受け、その内容を公表し、その評価を行うこと。

 (2) (1)の評価に際しては、
  1) 接続事業者の加入者数、或いは移転者数実績
  2) 第2段階方式実現のために見込まれる費用
  を調査して、第2段階方式への移行が適当と考えられる場合には、システム構
  築の期間等を考慮し、その3年後を目途として第2段階方式へ移行すること。

 (3) (2)において、第2段階方式への移行が時期尚早と考えられたときにも、その
  後更に1年毎に再評価を行い、第2段階方式への移行が適当と認められるとき
  から3年後を目途として第2段階方式への移行を行うこと。


                 第2部

         番号ポータビリティの費用負担・費用回収


 以下、費用の分類からその負担・回収の問題について、まず一般加入電話・IS
DNについて整理を行った。着信課金サービスにおける費用負担等についてはその
後に検討を行い整理した(V参照)。



I 費用の分類                              

1 費用の分類

  費用負担・費用回収の在り方について検討する前提として、細分化した機能と、
 費用の性質に応じた分類を行うことが必要である。

  具体的には、番号ポータビリティを実現するために必要な網改造に対応し、各
 機能毎にアンバンドルした「1 基本改造費用」、移転が行われる際に必要な手
 続に係る「2 申込処理費用」、移転先利用者への各呼について対応する「3 
 追加伝送費用」とに分類して考えることとする。その内容の概略は次のとおりで
 ある。(図5参照。)

        


  1 基本改造費用  1) 移転先情報を取得、中継交換機まで回線を切り戻す
             機能(GC等)
            2) 移転先へルーチングする機能(ZC)
            3) 事業者間料金精算機能
            4) 移転顧客情報等管理機能
            5) データベース機能 等
  2 申込処理費用  6) 移転に係る番号留保・情報登録機能
  3 追加伝送費用  7) 信号伝送機能
            8) リダイレクション機能

2 段階的アプローチにおける考え方

  加入電話・ISDNについて、最適回線再設定方式が実現されるまでの第1段
 階方式における番号ポータビリティについては、これを実現するための機能につ
 いて双方向性が実現されないこと等の第2段階方式とは異なる面もあるが、この
 ことによって第1部で考察したような番号ポータビリティの位置づけ自体には何
 ら変更が生じるものとは考えられないことから、第2段階方式のときと同様の考
 え方により費用負担・費用回収が行われるべきと考えられる。


II 基本改造費用の負担・回収                       

1 一義的な費用負担

  最適回線再設定方式を採るときは、基本的には、移転元においてデータベース
 や交換機などについて所要の改造を行い、移転先において移転呼の接続について
 改造を行うことが必要であり、また、中継事業者においても精算情報システムに
 係る設備対応が生じる。これらの設備対応に着手が行われることで番号ポータビ
 リティの実現が図られるのであって、事業者がそれぞれ自らの設備対応について
 費用の負担を行った上で、適正な手段によりその回収が行われることが必要であ
 る。

2 費用回収の基本的な考え方

  費用回収手段の選択肢としては、次の3つが考えられる。

 1) 番号ポータビリティを実現する機能を基本的な接続機能と捉え、これに係
   る網改造費用については、「事業者間接続に固有の費用としてでなく、ネッ
   トワークが本来有すべき機能を備えるための費用」と見ることで、移転元と
   なる指定設備設置事業者の営業部門と他事業者から公平に回収する接続料 
   (NTTの接続約款における網使用料に相当。)により回収すること
 2) 番号ポータビリティは基本的には利用者に対するサービスであると考え、
   これを直接利用者に負担を求めること
 3) 番号ポータビリティの実現による便益を受ける事業者は限定されていると
   考え、限定された事業者に按分適用される接続料(NTTの接続約款におけ
   る網改造料に相当。)により回収すること

  2)は、番号ポータビリティが利用者に直接的な便益を与えるものであること
 を強調し、一義的には利用者向けのサービスであるとするものである。この場合、
 全ての利用者が間接的であれ、直接的であれ番号ポータビリティの受益者である
 との観点に立ち、直接的な受益者でない利用者からも費用の直接的負担を行うこ
 とになる。

  これに対し1)3)は、番号ポータビリティが利用者に便益を与えるものであ
 ると同時に、事業者間の公正な競争を確保するための条件である面も強調するも
 のである。番号ポータビリティに係る機能が、電気通信事業者がその役務の提供
 に際し、他の電気通信事業者の電気通信設備と公正な条件で接続するためのもの
 である点に注目し、公正競争条件担保のために接続料で対応されるべき、という
 ものである。

  3)は、番号ポータビリティは限定された特定事業者のみに関係するものであ
 り、これに係る機能は「基本的な接続機能」ではない、個別的なものであると理
 解するものである。これにより、番号ポータビリティを直接利用する事業者のみ
 から当該機能について費用回収を行う、とするものである。この場合、直接機能
 を利用する訳ではない事業者が負担を要しないこととなり、費用負担の当事者が
 限定されることになるが、番号ポータビリティの直接の利用者ではなくても、そ
 の確保の影響を受けることになる事業者が費用回収の対象外となる、という問題
 がある。

  1)については、当該機能を第1部で述べたような見地から「基本的な接続機
 能」と捉える考え方に合致する考え方となる。

  以上を勘案するに、第1部で検討したとおり、番号ポータビリティの確保は専
 ら利用者の直接的便益の増進のみに資するものとして求められている訳ではなく、
 事業者間の公正な競争を確保するための事業者間の関係を規定するものであり、
 又、その機能は基本的な接続機能と捉えられるべきであることから、1)の考え
 方を採ることが適当である。

3 費用回収の具体的な方法

  1)の考え方を採るとき、更なる議論として、番号ポータビリティを実現する
 機能をどのような単位で捉え、どのような費用回収がなされるべきか、という問
 題がある。具体的には、次の2つの選択肢が存在する。

 1−1)当該機能を加入者交換機能等、既にアンバンドルされて接続約款に記載
    されている機能に含めて捉えること
 1−2)当該機能を既存のアンバンドル機能とは別の機能と考え、加入者交換機
    能等を利用する事業者であっても、費用回収を求められない場合を想定す
    ること

  1−1)については、番号ポータビリティを実現する機能が、個別提供条件の
 前提条件として必須の機能であることから、既存のアンバンドル機能の中に含め
 て考えることは妥当と考えられる。

  1−2)に関しては、優先接続の費用負担方法として提言されている考え方と
 同様の考え方が本件においても採れるのではないか、との議論があった。
  『優先接続に関する研究会報告書』(平成10年11月)においては、優先接
 続を実現する機能を基本的な接続機能と考えるが、これを加入者交換機能からは
 アンバンドルして別立ての網使用料を設定し、優先登録に参加しない事業者や地
 域網の優先接続機能を利用することとはならない携帯電話事業者については費用
 負担が求められないこととした。
8
これと同様に、番号ポータビリティ機能につい
 ても加入者交換機能等とは別の機能として、直接のポータビリティ利用事業者の





8
 『優先接続に関する研究会報告書』(平成10年11月)においては次のとおり
取りまとめられた。(4 優先接続の導入に関する具体的検討課題(論点整理) 
(13) 優先接続の費用負担方法 2) 網改造費の負担方法)

「・・・事業者間の相互接続における網改造費用の負担方法としては、地域網事業
者及び全接続事業者が共通に利用する機能(基本機能)として市内交換機等の網使
用料に含め費用回収する方法が基本的に適当と考えられる。
 しかし、市内交換機の接続料に含める場合には、優先登録に参加しない事業者や
地域網の優先接続機能を利用することはならない携帯電話事業者にまで負担を求め
ることとなり、負担方法の修正を検討する必要がある。
 これについては、基本機能とはするが、網使用料のうち市内交換機の接続料に含
めるのではなく、当該機能をアンバンドルすることとし、別立ての網使用料として
設定することで対応可能である。具体的には、接続料算定規則に基づき算定した優
先接続に係る網改造コストを、携帯電話事業者等を除いた全実績トラヒック(回
数)で除して単金を設定することが適当と考えられる。」


 みがその費用回収に応じるものとすべき、という議論も提起された。

  これについては、次のとおりに考えられる。優先接続については、費用回収の
 対象外とされた、優先登録に参加しない事業者や地域網の優先接続機能を利用す
 ることとはならない携帯電話事業者は、優先接続が実現されたことの効果が自ら
 の提供サービスに何ら及ぶべくもなく、謂わば優先接続の想定されないネット 
 ワークを依然として利用するような状態に置かれるものであった。
  これに対して、番号ポータビリティについては、直接の利用事業者のみならず、
 全ての発信を扱う事業者において、番号ポータビリティ確保の効果が呼の疎通を
 実現させる上で及んでいるのであり、その点において優先接続の場合と同列に考
 えることは困難である。
  従って、番号ポータビリティにおいては、優先接続の場合とは異なり、加入者
 交換機能等の利用見合いで、各事業者が費用回収に応じることとすることが費用
 回収の公平性の見地から適当であり、1−1)の考え方に立つこととすべきであ
 る。


III 申込処理費用の負担・回収                      

 申込処理に係る費用は、移転の申込の度に生じる手数料又は工事費に相当する費
用であり、これに直接関係する利用者から費用は回収されるべきであるが、これを
直接移転元事業者において回収するとすると移転への制裁的な色合いを帯びかねな
いこと、移転により加入者は移転先事業者の加入者となることから、移動先事業者
において回収し、それを移動元が請求する、という形態(NTTの接続約款におけ
る手続費、工事費に相当。)が採られるべきである。


IV 追加伝送費用の負担・回収                       

 呼毎に発生する費用の回収については、選択肢として、次の2つが考えられる。
1)利用者料金請求事業者から回収する。
2)移転先事業者から回収する。

  


 1)は、呼毎に発生する費用を回収する利用者料金については、発信側利用者か
ら回収されることが原則的であり、その料金を回収する事業者から本件の費用につ
いては回収されるべきである、という考え方である。

 ※ 1′)費用は直接発信側の利用者から回収する という考え方も存在
  する。これは、当該機能の提供を、移転元事業者から発信側利用者への
  サービス提供である、と解するものであるが、多くの場合、移転元事業
  者は発信利用者に対して料金請求を行う立場にはない。

          

 2)は、当該呼の追加伝送部分については、番号移転がなければ生じなかったも
のであり、番号移転自体を発生させた移転先事業者から費用回収がなされるべきで
ある、と考えるものである。この考え方を採る場合、着信先から料金が回収されな
い通常の場合、移転先事業者において利用者に対する料金の請求を行うことが困難
であることに留意する必要がある。

 呼毎の費用については、利用者料金を請求する事業者より費用が回収されること
が原則的であって、本件の場合、この原則と異なる考え方が採られるべき特段の理
由はなく、1)の考え方が適当である。
 なお、1)に対する批判としては、本件の場合、利用者料金請求者とは直接関わ
りなく網改造が行われることが多いのであって、その費用を利用者料金請求者から
回収するのは適当であろうか、という議論もある。
 しかしながら、相互接続により電気通信役務が提供されるとき、接続事業者にお
いて通信経路が変更されることは日常的に想定されることであって、このことによ
り直ちに利用者料金請求者が費用回収先となるべきではない、とまでは言えない。
V 着信課金サービスにおける費用負担の在り方               

 番号ポータビリティを実現するための機能については、第1部において考察した
とおり、一般加入電話・ISDNにおける番号ポータビリティであれ、着信課金
サービスにおける番号ポータビリティであれ、市内交換機等が具有すべき基本的な
接続機能と捉えることができる。

 従って、一般加入電話・ISDNにおける番号ポータビリティについての費用負
担の在り方と、着信課金サービスの番号ポータビリティの費用負担の在り方とを同
じにすべき、という考え方もあり得る。

 しかしながら、着信課金サービスのような付加的なサービスを提供するためにの
み使用される接続機能については、
1) NTTの再編においては、IN系の付加サービスは当面は指定設備を継承する
 地域会社ではなく、長距離会社がその提供主体となること
2) また同様に、NCCsにおいてもIN系の付加サービスは、当面は長距離の中
 継系事業者がその提供主体となること
3) 現在の運用においては業態毎のVPNサービスへの接続機能が直接当該機能を
 利用する事業者のみから費用回収が行われていること
4) 優先接続機能はこれを利用することとはならない携帯電話事業者からは費用回
 収がなされないこと
等から、当面は基本改造費用に対応する機能については加入者交換機能括り付けと
はせず、その機能を直接利用する事業者において負担するという考え方が現実的と
考えられる。

 但し、付加的なサービスに固有に利用される接続機能のアンバンドル単位につい
ては、平成12年度を目途に行われる接続制度全体の見直しにおいて、その実態等
を検証の上、あらためて再検討する必要がある。








【参考資料】









     英国及び米国における番号ポータビリティの費用負担について





I 英  国


1 経緯

1996年 5月
        
 同  年 7月
        
1997年 1月
        
 同  年12月
        
        
1998年 3月
        
ナイネックスとBTが協定を締結。番号ポータビリティ提供を
開始。                         
OFTELがBTの免許条件を変更、固定電話の番号ポータビ
リティを義務づけ。                   
OFTELが固定電話の番号ポータビリティのコスト・標準料
金を決定。                       
OFTELがBT等の全固定網通信事業者に固定電話・フリー
フォン等の番号ポータビリティを義務づける一斉免許条件の変
更を決定。                       
OFTELがフリーフォン等の番号ポータビリティのコスト・
標準料金を決定。                    

2 実現方式
 (1) コール・ドロップバック方式(1997年10月より)
   移転元で中継交換機が加入者線交換機に加入者情報を問い合わせ、その情報
  をもとに呼を移転先加入者線交換機まで、通話回線を保留せずに転送。

    


 (2) トロンボーニング方式(1997年10月より順次コール・ドロップバック
  方式に移行)
   ポータビリティの対象となった電話番号が従来収容されていた事業者のLS
  が、再び上位の中継交換機に通話回線を設定し、そこから他の事業者に接続す
  る。

    

3 費用負担に関する決定等
 (1) 独占合併委員会(MMC:Monopolies and Mergers Commission)報告『電話番号
  ポータビリティ』Telephone Number Portability(1995年11月)
 ・ BTはその網の改造に係る初期コスト(システム・セットアップ・コスト)
  を負担すべきである。
 ・ BTは、個人が自分の番号のポータビリティを実現させるときのコスト
  (パー・ライン・セットアップ・コスト)を他事業者に負担させることが出来
  る。
 ・ 1997年10月以後は、BTは「コール・ドロップバック」方式による移
  転番号への呼のルーティングに係るアディショナル・コンヴェイアンス・コス
  トを負担すべきである。1997年10月より前の、「コール・ドロップバッ
  ク」コストを上回る、「トロンボーニング」の追加コストは、BTと他事業者
  とで等分に分担する。

 (2) BT免許条件34C(1996年7月、1997年12月変更)
 ・ oftel長官は、ポータビリティ提供のためのコストと、これを接続事業
  者からの支払いにより回収する標準ポータビリティ料金を決定する。
 ・ コストの決定は、BTの提出する情報により計算された全部配賦コストに基
  づき、システム・セットアップ・コスト、パー・ライン・セットアップ・コス
  ト、アドミニストレイティヴ・コスト、アディショナル・コンヴェイアンス・
  コストに分類するものでなければならない。
 ・ 標準ポータビリティ料金の決定は、システム・セットアップ・コストを回収
  するものであってはならず、また、1997年10月31日より後は、アディ
  ショナル・コンヴェイアンス・コストを回収するものであってはならない(そ
  れ迄は、アディショナル・コンヴェイアンス・コストと、コール・ドロップバ
  ック方式によった場合のアディショナル・コンヴェイアンス・コストとの差額
  の半分を標準ポータビリティ料金で回収する。その他のアディショナル・コン
  ヴェイアンス・コストは接続料と同じ方式で回収する)。

* 英国におけるコスト区分とその負担者(コール・ドロップバック方式の場合)

                
MMC報告(1995)
BT免許条件34C(1996)
システム・セットアップ・コスト
1
                
BT負担    
        
標準ポータビリティ料金で
回収しない       
パー・ライン・セットアップ・  
コスト
2
            
他事業者へ転嫁 
        
        
        
標準ポータビリティ料金 
            
 
アドミニストレイティヴ   
・コスト
3
          
標準ポータビリティ料金 
            
アディショナル・コンヴェイアン 
ス・コスト
4
          
BT負担    
        
接続料と同じ方式で回収 
            





1
 網、局システム及び手続きが、ポータビリティ過程をサポートするようにする際
に生じる費用(35百万ポンド)(oftel「番号ポータビリティ コストと料
金 決定及び説明文書」NUMBER PORTABILITY COSTS AND CHARGES: Determination 
and Explanatory Document(1997年1月)より)
2
 事業者からの、ユーザのポータビリティに係る、各要請に対応する際に生じる費
用(3.59−31.96ポンド)(同上)
3
 BTから割り当てられた移転番号を保持するユーザが、番号の物理的な場所を移
動させる時に生じる費用(額は未決定)(同上)
4
 番号への呼毎に生じる、必要な網要素の利用増に対応する費用(平均0.119
ペンス/分)(同上)


II 米  国


1 実現の経緯
1993年 7月
1996年 2月
        
1998年 3月
        
        
 同  年 5月
        
フリーフォンサービスの番号ポータビリティを開始。    
1996年電気通信法により全ての地域系事業者に番号ポータ
ビリティを義務づけ。                  
シカゴ、ニューヨーク、フィラデルフィアで固定電話の番号 
ポータビリティの本格提供を開始(1998年末迄に100都
市に拡大の予定)。                   
FCC指令。番号ポータビリティの本格提供に際しての費用負
担の方法の概略について決定。              

2 実現方式(固定電話)
 ○ IN方式


  1) 発信事業者は、ユーザがダイヤルした番号に基づきルーチング。
  2) 着信事業者の1つ前位の事業者(N−1事業者)がSCPにアクセス、 
   ルーチング番号に変換。
  3) ルーチング番号に基づきルーチング。

3 費用負担に関する決定
 ○ FCC指令(1998年5月)
 ・ 地域の番号ポータビリティデータベースの構築及び運用に係るコストは、各
  地域のエンドユーザからの収入に応じて、全てのコモンキャリアに割り当てら
  れる。
 ・ 被規制地域事業者は、1999年2月1日以後に開始して、5年間以内に限
  り、番号ポータビリティに直接関係するコストを、番号ポータビリティが利用
  可能なユーザから、月額の利用者向け料金を通じて回収することが許される。
 ・ 被規制地域事業者以外の事業者(無線事業者、競争的地域事業者を含む。)
  は、番号ポータビリティに直接関係するコストを、いかなる合法的な手段によ
  って回収することもできる。


* 米国におけるコスト区分とその負担者
                         
FCC指令(1998)   
シェアド
・コスト 5
     
     
初期(ノン・リカリング)コスト     
全コモンキャリアに割当
           
           
           
月・年額(リカリング)コスト      
データベース情報のアップロード・ダウン 
ロード・コスト             
キャリア・スペシフィック・コスト
(番号ポータビリティに直接関係するもの) 6
     
利用者料金等から回収 
           




5
 地域のデータベース管理機関が、データベースを設置、運営、維持する際に生じ
るもの等、業界全体に生じるコスト(例えば、「データベース情報のアップロー
ド・ダウンロード・コスト」には、キャリアが個別に情報をアップロード・ダウン
ロードするコストは含まれない)。
6
 検索及び電話番号の移転等、番号ポータビリティサービスの提供において生じる
コスト。