4 定額料金サービスの普及 インターネットの常時接続化に向け各種定額料金サービスが展開  インターネット・アクセス回線については、ブロードバンド化による大容量コンテンツの利用促進等への動きとともに、常時接続化、つまりインターネットの利用時間や回数に関わらず一定額の利用料金を設定する「定額料金サービス」の動向が注目される。インターネットの常時接続化が進むことにより、ウェブ閲覧などの従来のインターネット利用自体が促進されるだけでなく、外出先からインターネットを介して制御できるエアコン等「情報家電」への応用など、人々のインターネット利用形態に本格的な変化をもたらすものと期待される。 1)定額料金サービスの動向  インターネットを利用する際には、従来の加入電話回線によるダイアルアップ接続の場合、一般に一定利用時間までの定額制となっているISP事業者へのインターネット接続料金と、利用時間の長さに従って支払い金額が決まる従量制による通信料金(電話料金)が利用者に課せられることとなる。この場合、インターネット利用時間が長くなるほど利用者の費用負担が大きくなり、ダウンロードに時間がかかる大容量コンテンツの利用やいわゆるインターネット放送の利用の阻害要因となる可能性があった。米国では音声通話など一般電話回線の通信料金についても従来から定額制が普及し、このことがインターネット利用の普及・多様化を促したといわれており、我が国においてもインターネット普及の進展にともなって、インターネット利用における通信料金の定額制に対するニーズが高まっている。  インターネットへの常時接続を可能とする定額料金サービスは、現在ISDN、DSL、ケーブルインターネット、FWA、FTTHの各アクセス回線において提供されている (図表1))。  我が国初めての全国的な常時接続サービス展開として、平成12年7月より東・西NTTが本格サービス提供を開始したISDNの定額料金制サービス、フレッツISDNは、平成13年3月時点で72万加入まで増加している(図表2))。さらに、加入者を増加させつつあるDSLやケーブルインターネットなどの競合するサービスに対抗して平成13年3月よりその料金を引き下げており、常時接続サービス間の競争が本格化しつつある。なお、この結果インターネットの常時接続に要する料金(回線料金とインターネットアクセス料金の合計)は、海外の主要国と比較して遜色ない水準に低下している(図表3))。 2)ISPにおける常時接続への対応  ブロードバンド・アクセス・ネットワークの普及、特にDSL等常時接続型の料金が設定されているサービスの拡大に対応し、ISP各社では、ブロードバンド・アクセス・ネットワークに対応するサービスメニューの新設、定額制の導入又は定額料金の引き下げを行っている。  東・西NTTが提供するISDN定額サービス(フレッツISDN)、DSLサービス及びFTTHサービス(いずれも定額料金制)にサービス対応しているISPの状況を調査したところ、図表4)のとおりであり、フレッツISDNに対応している事業者は、開始時の82社から、平成13年3月現在で308社と急増している。DSLについては、同年3月現在で30社となっており、DSLの普及にともない今後急増するものと予想される。また、主要インターネット接続サービス事業者5社の料金体系をみると、平成12年3月時点では定額料金制の設定がないか、月当り5,000円程度の設定となっていたが、平成13年3月現在、各社とも定額料金制サービスを開始し、料金も月額2,000円前後と半額以下になっている(図表5))。このように、ブロードバンド・アクセス・ネットワークの普及や常時接続サービスの拡大により、インターネット利用者が時間を気にせずに長時間インターネットを利用できる環境が整ってきたといえる。 3)定額料金サービスの促進に向けた政策的対応  インターネット通信料金の低廉化や定額化、高速化という需要が顕在化している中で、電気通信事業者が、公正な競争を通じて、様々なIT関連産業の共通基盤となるインフラをできるだけ低廉な価格で提供できるように、競争環境を早急に整備することが最重要の課題となっている。  そこで、新たな競争政策を樹立することを目的として、平成12年7月に郵政大臣から電気通信審議会に対し、「IT革命を推進するための電気通信事業における競争政策の在り方」について諮問され、審議が進められてきた結果、同年12月に第一次答申がまとめられた。  答申では、電気通信事業者間の接続ルールの整備により、東・西NTTの地域通信網の一層の開放並びに東・西NTTの中継伝送路及び端末系伝送路の各々について、伝送装置を介さない形態(アンバンドル)での接続を促進することなどの必要性が指摘されている。総務省では、この答申を受けて、市場支配力を有する電気通信事業者の反競争的行為を防止、除去するための規制を導入することなどを内容とする「電気通信事業法等の一部を改正する法律案」を第151回通常国会に提出し、成立したところである。 図表1) 常時接続サービスの種類 図表2) フレッツISDNサービス契約者数 図表3) インターネット常時接続に要する料金の国際比較 図表4) 各常時接続サービスに対応したインターネット接続サービス提供事業者 図表5) 主なインターネット接続サービス提供事業者における定額料金制サービスの料金設定