5 インターネット関連ビジネス ソフト関連サービス市場の成長が加速  インターネットの普及や電子商取引市場の拡大にともない、LANやイントラネットの構築に必要なハードウェア・ソフトウェア販売ビジネスやインターネット上での広告ビジネスなどインターネット関連ビジネス市場が大幅に成長し、経済に対して大きな波及効果を生み出している。平成12年における同市場の概況については以下のとおりである。 1)市場規模  「ITが産業に与える影響に関する調査」によると、平成12年におけるインターネット関連ビジネス市場の市場規模は、9兆798億円(対前年比42.0%増)となっている。今後もインターネットの普及にともない堅調に推移すると見込まれ、平成17年には26兆285億円まで拡大するものと予測される。また、平成12年におけるモバイル関連ビジネス市場は、iモードなど携帯電話・PHSによるインターネット利用の爆発的な増加にともない、平成11年の10倍を上回る1兆8,233億円となっており、平成17年(2005年)には市場全体の拡大に併せ、4兆5,997億円にまで増加すると予測される(図表1)、資料3参照)。  インターネット関連ビジネス市場の内訳をみると、1)インターネット・サービス・プロバイダ(ISP:Internet Service Provider)等のインターネットへのゲートウェイを提供するビジネスに係る「インターネット接続ビジネス市場」、2)インターネットに接続されるコンピュータ等の端末機器市場である「インターネット接続端末市場」、3)ネットワーク構築に必要な管理運用サービスやサーバー、ルーター等のハードウェア・ソフトウェア市場である「インターネット構築関連市場」、4)その他、広告・通信サービス等の「インターネット周辺ビジネス市場」、5)「モバイルコマース関連ビジネス市場」の5つに分類される。  各市場のインターネット関連ビジネス市場全体に対する構成比は、「インターネット接続端末市場」が31.3%と3割近くを占めており、次いで「インターネット構築関連市場」が23.8%と両市場で全体の5割に達している。一方、平成11年との比較をみてみると、「インターネット接続ビジネス市場」、「インターネット接続端末市場」がほぼ横ばいであるのに対し、「モバイルコマース関連ビジネス市場」のほか、「インターネット構築関連市場」「インターネット周辺ビジネス市場」がそれぞれ23.3%、45.6%の伸び率で大きく増加しており、インターネット関連ビジネス市場の拡大に貢献していることが分かる(図表2))。中でも、ソフト関連サービスの市場である「インターネット周辺ビジネス市場」は大幅な伸びを示しており、インターネット関連ビジネス市場においてソフト関連サービスの占める役割が大きくなっていることがうかがえる。 2)ASP市場  我が国における企業のIT化は、主に大企業を中心として進展しており、我が国企業の大多数を占める中小企業においては、投資負担が大きいことから、IT導入が大企業に比べ限定的なものにとどまっている。そこで、中小企業における低コストでのIT化推進を実現するものとして、インターネットを通じた汎用アプリケーション提供サービスであるASPが注目を集めている。ASPは、広義には特定の顧客専用に開発したアプリケーションをASP事業者が保有するサーバー上で作動させ、顧客が回線を通じて利用するハウジングやホスティングなども含まれるが、ここでは顧客ごとのカスタマイズを行わず、汎用アプリケーションのみを取り扱うものに限定してASPを定義する。なお、ASP市場はインターネットビジネス関連市場においてインターネット/イントラネット関連ソフトウェアの内数として計上している。  ASPについて市場規模をみると、平成12年では20億円にとどまっており、現段階ではASPが中小企業に十分に普及しているとは言い難い状況である。しかし、中小企業におけるIT化への関心が高まるにつれて、今後ASP市場は拡大が予測され、平成17年(2005年)には975億円にまで達するものと見込まれる。 ■事例:ASP − セールスフォース・ドットコム  SFA、CRMといった営業活動支援システムのASPとして、米国で25,000社・45万人の顧客をもつセールスフォース・ドットコムでは、平成13年2月より我が国においても同様の事業を試験的に導入しており、同年4月からは本格的な営業を開始している。企業は同社のシステムを利用することにより、月額5,000円からの利用料金で、取引情報の共有化・顧客管理・営業情報の共有などのアプリケーションを利用することができ、自社でシステムを構築するのに比べ、開発に要する時間やコストを削減しながら情報化を進めることが可能となる。既に試験導入の段階で120社がこのシステムの利用を開始しており、今後セールスフォース・ドットコムでは、年間1,200〜1,500社の契約獲得を目指している。また、企業向けソリューションの提供にも力を入れており、平成13年3月末からはヘルプデスク向けサービスを開始し、同年夏にはマーケティングサポートサービス等の機能も拡充する予定である。さらに、同社では中小企業向けに有料でソフトのコンサルテーションを実施するほか、自社ユーザーに対するトレーニングコースを開催しており、ASPサービスの中小企業への浸透を図っている。 図表1) インターネット関連ビジネス市場 図表2) インターネット関連ビジネス市場の内訳 図表3) ASPの市場規模 図表4) ASP事例 (注1)平成12年の我が国におけるインターネット関連ビジネス市場規模の推計方法は以下のとおり。  インターネット関連ビジネス市場を以下のとおり分類し、各種資料をもとに個別に市場規模を推計した。 1)インターネット接続ビジネス市場 ・ISP個人市場 ・ISP法人市場 2)インターネット接続端末市場 ・パソコン市場 ・携帯電話端末市場 ・PDA(携帯情報端末)市場 ・テレビ(インターネットに接続可能なセットトップボックス)市場 ・テレビゲーム機(インターネット接続可能なもの)市場 3)インターネット構築関連市場 ・インターネット/イントラネット構築サービス市場 ・インターネット/イントラネット関連ソフトウェア市場 ・サーバー/ルータ市場 4)インターネット周辺ビジネス市場 ・インターネット広告市場 ・インターネット決済サービス市場 ・通信サービス個人市場 ・通信サービス法人市場 ・物流サービス市場 (注2)ASP市場規模の推計について  ASP市場規模の予測手法は以下のとおり。 ASP及びハウジング/ホスティングサービスの普及により、我が国における企業のIT投資性向が上昇するという仮定の下、企業規模別に米国データ等からIT投資性向の上昇率を仮定し、算出したIT投資額についてASP利用によるハード、ソフト、運用、メンテナンスなどを含めたシステム運用に係る費用の削減効果を勘案。さらに「情報化白書」(日本情報処理開発協会)より、情報処理関連経費の内訳から、今後ASPに置き変わる項目を仮定して、その比率を乗じることで市場規模を推計した。