2 教育及び学習の振興並びに人材の育成 情報リテラシーの向上  「e-Japan重点計画」では、我が国の国民全体のITに関連する教育及び学習の振興並びに人材の育成に関する現状について、学校におけるITの普及が米国に比べ大幅に遅延、特に中高年におけるITの普及が大幅に遅延、高度なIT技術者・研究者が人数的・質的に不足している状況と捉えている。  そこで、達成すべき目標として、平成17年(2005年)のインターネット個人普及を大幅に増大すること、学校のIT教育体制の強化と情報生涯教育の充実を図ること、高度なIT技術者・研究者を確保すること(平成17年(2005年)までに3万人程度の外国人人材受入れ)を目標に掲げ、その実現に向け、次のような施策を推進することとしている。 (1)すべての国民がITの知識や技術を身につけ、その恩恵を享受できるようにするための教育及び学習の振興を図るための環境整備、関連制度の見直し (2)大学改革の積極的推進、専修学校におけるIT関連講座の充実等人材育成のための環境の整備 (3)外国人人材の受入れについて、関連する制度の見直し及び促進 (4)ITを活用した情報発信能力を強化するため、デジタルコンテンツの開発環境の整備  総務省関係の具体的施策は以下のとおりである。 1)学校教育の情報化等 (i)学校のIT環境の整備 ア 学校インターネットの推進  平成11年度以降、文部科学省とも連携し、全国の小中高等学校等約1,700校を様々な高速アクセス回線によりインターネットに接続、平成12年度補正予算において、新たに約1,500校を追加し、約3,200校を平成13年度中にインターネットに高速接続して、学校教育の情報化の推進に資するため、大規模ネットワークの構築・運用管理技術等の研究開発を行う。 (ii)教育用コンテンツの充実  平成17年度(2005年度)までに、各教室等からインターネットに高速接続し多様なマルチメディアのコンテンツにアクセスできる学校環境の実現に資する以下の情報通信技術の研究開発を実施し、実用化を図る。   ア 学校における情報セキュリティ技術の開発  透かしを動画像、文書等の情報に埋め込み、その透かしの流通をチェックすることで構内の情報流通を管理し、個人情報の漏洩等を防止する技術の開発を行う。 イ 簡易型インターネットアクセス網構築のための技術の開発  赤外線レーザによる光空間通信により1地点対多地点の通信を実現する技術の開発を行う。 ウ 教材コンテンツの高速検索技術の開発  ネットワーク上に散在する教材コンテンツの教科・学年等を自動判別して高速・容易に必要な検索を可能とする技術の開発を行う。 エ 次世代ヘルプデスク支援システムに関する技術開発  トラブルや利用上の問い合わせの窓口(ヘルプデスク)の対応を可能な限り迅速化・効率化し、あわせて対応の質的な向上を図る次世代ヘルプデスク支援システムに関する研究開発を行う。 オ 大容量教育コンテンツの制作技術等についての研究開発  開発したコンテンツの提供に当たっての動画や大容量の写真等を圧縮して配信する技術や高速で動画を配信する技術開発、学校に配備する平均的な端末から、インターネット上で3Dコンテンツ等大容量のコンテンツの閲覧を可能とする技術の研究開発、テキスト、静止画、画像、CG,VRといった「複合メディア」コンテンツを閲覧できるプラグインソフトの開発等を行う。 (iii)教育情報ポータルサイトの整備等 ア 教育情報ナショナルセンター機能の整備  全国的な教育用情報通信ネットワークの拠点たる「教育情報ナショナルセンター」の中心的な機能である教育情報ポータルサイトの構築に資する情報通信技術の開発として、通信・放送機構において平成12年度から3年計画で、教材コンテンツの高速検索技術の開発、また端末環境に依存せずに大容量コンテンツの参照・閲覧を可能とするシステム等の開発を実施し、文部科学省と連携して、平成17年度(2005年度)までに、教育情報ナショナルセンター機能の整備を図る。 2)IT学習機会の提供 (i)IT基礎技能講習の実施  IT及びIT社会を巡る状況が急激に変化することにかんがみ、IT基礎技能の出来る限り早期の普及を図る観点から、地方公共団体が自主的に行う講習会の開催を支援する情報通信技術(IT)講習推進特例交付金については、平成12年10月に決定された日本新生のための新発展政策において、「IT普及国民運動の展開を通じたIT利用技能の向上策として、約550万人程度の者が受講できるよう、政府としても、特例的に、事業の円滑な実施に向けて支援を行う」ことが盛り込まれた。  この交付金は、都道府県に対する交付金であり、地方公共団体がIT基礎技能講習の開催を推進する事業に当てられ、市町村が講習事業を実施する場合には、都道府県から10/10の補助金を市町村に交付する。また、都道府県がこうした事業を行うための基金を設置する場合には、そのための経費に交付金を当てることができるものである。  平成13年度までに、約550万人程度の者が受講できるよう、IT基礎技能講習を実施する(注)。 (ii)IT分野での職業能力開発支援 ア 専門技術者の職業訓練実施  情報通信分野の専門的・技術的な知識及び技能の向上を目的とした人材研修事業を実施する主体に対し、助成金を交付する通信・放送機構に、当該助成金交付に要する経費について補助する人材研修事業支援制度を平成13年度に創設し、これにより平成17年度(2005年度)までに、電気通信システムの設計、放送番組の制作等の専門技術業務に従事する者約1,000人に対して当該専門業務の知識及び技能の向上を図るための研修を支援するとともに、本支援制度の充実を図る。 3)専門的な知識又は技術を有する創造的な人材の育成  コンテンツクリエイターの育成について、以下の施策を推進する。 i)デジタルコンテンツの遠隔共同制作システム開発  平成13年度中に、コンテンツの制作環境の高度化を推進するため、ブロードバンドネットワークを利用したデジタルコンテンツの遠隔共同制作システムを開発する。 ii)情報通信分野のベンチャー企業支援(第3章第2節5参照)  平成15年度(2003年度)までに100件程度のベンチャー助成を行うとともに、平成17年度(2005年度)までに全国で合計50か所のビジネスインキュベータの整備を行う。 (注)なお、IT基礎技能講習の実施にともない、文部科学省では、全国の図書館、公民館等約7,000か所にパソコンを整備するとともに、インターネット接続に必要な機器の整備を行うための補助金(18,948百万円)を平成12年度補正予算において計上した。