11 ITS(高度道路交通システム)の推進 ITS関連の情報通信システムの研究開発・標準化を推進  ITS(高度道路交通システム:Intelligent Transport Systems)は、道路交通に関する総合的な情報通信システムであり、交通渋滞の軽減、交通事故の減少、輸送の効率化、地球環境との調和等の国民生活に身近な道路交通問題解決の切り札として考えられている。  我が国では、平成8年7月、当時のITS関係5省庁(郵政省、警察庁、通商産業省、運輸省及び建設省)において「高度道路交通システム(ITS)推進に関する全体構想」を策定し、ITSが目標とする機能、開発・展開計画について、今後20年間のビジョンを示し取り組んできたところである。また、平成11年2月の電気通信技術審議会答申「ITSにおける情報通信システムの在り方」に基づき、ITS関連の情報通信システムの研究開発・標準化が推進されているところである。  現在、既にITSの一部のシステムは実用化されており、交通渋滞情報等をドライバーにリアルタイムで提供する「道路交通情報通信システム(VICS:Vehicle Information and Communication System)」については、本格的なサービスが平成8年度から開始されている。VICSは平成13年3月末現在、27都道府県において提供されており、平成13年3月末でのVICSユニットの出荷累計は280万台を超えた。他方、有料道路の料金所を停車することなく無線通信を用いて通行料金の支払いを可能とする「ノンストップ自動料金支払いシステム(ETC:Electronic Toll Collection System)」については、平成13年3月30日より千葉地区等で一般運用を開始し、平成14年度末までに全国約900か所の料金所(日本道路公団の料金所は約1,300か所:平成14年度末時点)にサービスが拡大される予定である。  総務省では、ITSの更なる普及を目指し、関係省庁と連携しつつ、現在以下の施策に取り組んでいる。 1)DSRCシステムの実用化の推進  ETCに係る無線通信技術を応用して駐車場管理や物流管理、ガソリンスタンド代金支払等の様々な分野においても利用可能なDSRC(狭域通信:Dedicated Short Range Communications)システムの実用化に向けて、平成12年10月の電気通信技術審議会答申「DSRCシステムの無線設備等における技術的条件」を踏まえ、平成13年1月に関係省令の改正案を電波監理審議会に諮問、同年3月に答申を得て、4月17日に施行した(図表1))。また、答申では、技術的条件のほかに、標準化機関による業界規格の早期策定、DSRCシステムの国際標準化への積極的な対応、地域DSRCシステムのアプリケーション開発等、DSRCシステムの早期普及に向けた今後の取組についても提言を受けている。 2)車を動くオフィスに変えるための情報通信技術の研究開発(図表2))  平成11年10月から、横須賀リサーチパーク内に、通信・放送機構横須賀ITSリサーチセンターが設置されており、車内でユーザーが円滑にITS情報を活用できるシステムを構築し、ITSにおける高速インターネットの実現、車のカーマルチメディア化を図るため、ワイヤレスエージェント技術、ソフトウエア自動更新技術等の研究開発が行われている。 3)スマートゲートウェイ技術の研究開発  平成13年3月にIT戦略本部決定された「e-Japan重点計画」において、ドライバーへの情報提供、危険警告や操作支援を行う走行支援システムの技術について、研究開発を推進し、平成15年を目途に第2東名・名神道路での実現を目指すこととされていることから、総務省は、国土交通省とも連携し、道路と自動車を結ぶ情報通信技術(スマートゲートウェイ技術)の実現を目指して、高速走行対応のハンドオーバー制御技術、連続セル構成技術等の研究開発を行っている。 4)ITSスマートタウンの実現  郵政省(現総務省)及び通商産業省(現経済産業省)では、平成9年度から11年度まで、「ITSモデル地区実験構想の調査研究」を実施し、地域の課題解決のための具体的なITSモデルについて、実現可能性に関する調査を実施してきた。その成果を踏まえ、地域における諸課題に対応したITSシステムの導入(ITSスマートタウン)を促進することを目的に、平成12年4月から「ITSスマートタウン研究会」を開催し、同年12月に最終報告をまとめている。今後、総務省では、同報告を踏まえ、地域ITSシステムの実フィールドでの調査研究に着手する予定である。 5)ITS分野の国際標準化  ITU(国際電気通信連合)において、日本及びアジア・太平洋地域から共同提案したETC及び自動車レーダーシステムの無線方式が国際標準として採用されることになり、平成12年5月に正式承認された。今後も、ITSの国際的な発展を促進するとともに、DSRCシステムをはじめとする我が国のITS情報通信技術のアジア諸国等への展開・普及を図るため、積極的に取り組んでいくこととしている。 図表1) DSRCシステムのイメージ 図表2) 車を動くオフィスに変えるための情報通信技術の研究開発(イメージ)