(3)情報化による効果 −おおむね効果を認識、個別の取組に対する認識には段階により温度差  以上でみたとおり、我が国企業においては、情報化に向けて情報通信機器やネットワーク環境の整備に積極的に取り組むとともに、業務内容や業務の流れの見直し、従業員教育等の情報化の効果を発揮するための取組を推進しているところである。これらの情報化による効果は、我が国経済全体に対して一定の効果をもたらしていることは既に定量的な分析を行ったところであるが、ここでは企業レベルにおける情報化による効果に対する認識についてみることとする。  上場企業における情報化の効果に対する認識についてみると、約6割の企業が「コストに見合った効果があった」(58.6%)と回答しており、企業は情報化による効果をおおむね前向きにとらえていることが分かる(図表1))。  また、個別の情報化投資別にその効果をみると、情報化の状況と同様に、「基盤整備型」、「コスト削減型」、「付加価値創造型」の順で企業が効果を認識していることが分かる(図表2))。「基盤整備型」では、既に7割以上の企業が「効果あり」としており、おおむね前向きな効果を認識している。また、「コスト削減型」では、およそ3分の2の企業が「基幹業務システム」で効果を認識している一方、「経営・管理業務システム」については効果を認識している企業が半数を下回っている。これらの背景としては、「基盤整備型」や「コスト削減型」の情報化については、目的の対象が社内の情報通信基盤整備や合理化・効率化等であるため、企業の取組がおおむね社内で完結するものであるのに対し、「付加価値創造型」では、顧客等との取引関係の見直しなど、対外的な関係が含まれるため、企業内部における意思決定以外の要素に影響を受けることから、効果を発揮するための取組が進みにくいことが考えられる。  今後、企業が情報化を進めるに当たっては、社内の改革にとどまらず対外的な関係を含めた取組を進め、情報化による効果を十分に発揮することができる環境整備を進めることが重要であると考えられる。 図表1) 企業における情報化の効果 図表2) 企業における情報化の効果(目的別)