(2)電子認証市場 −法人・団体向け市場の伸展が予想される注目分野  インターネットの普及やブロードバンド化の進展に伴い、我が国において電子商取引や行政手続のオンライン化等インターネットを利用した情報の流通が急速に増加しつつある。インターネット上で行われる電子商取引等では、地理・時間的制約を受けない便利な面があるものの、相手方の顔が見えないため本当に信頼できる取引相手であるのか、個人情報の漏えいや取引情報の改ざんがないかなどの不安もあり、その解消が求められている。  そのため、インターネット上において相手方の本人確認を行い、取引情報となる文書の真正性を確保するため、従来の手書きの署名や押印に相当する仕組が必要となり、インターネット上において相手方の本人確認を行うとともに情報の漏えいや改ざん等に対応する有効な手段として暗号技術を用いた電子署名・認証業務が登場している。現在、最も利用されている電子署名・認証業務として公開鍵基盤(PKI:Public Key Infrastructure)に基づくものが挙げられる。  PKIでは公開鍵暗号方式(注1)が用いられ、公開鍵と秘密鍵のいずれかを使用して文書を暗号化し、暗号化した鍵に対応する他方の鍵を使用して復号する。秘密鍵の所有者あてに公開鍵を用いて暗号化した電子文書を送信すれば、秘密鍵を持つ受信者だけが復号できるので、誰からでも秘密鍵の所有者に安全に電子文書を送ることができる。反対に、自分の秘密鍵で電子文書を暗号化して送信すれば、対応する公開鍵を使って誰でも復号して電子文書を読むことができ、その電子文書の作成者が秘密鍵の所有者であることを確認できる。電子署名はこの特徴を用い、電子証明書によって電子署名を行った者を確認する仕組である。  また、認証機関は、これらの電子署名・電子認証の利用に当たって、秘密鍵を所有する者の本人確認を厳格に行い、電子署名に用いる秘密鍵に対応する公開鍵を証明する電子証明書を発行することにより、秘密鍵の所有者(=電子署名を行った者)を証明する業務を行うものである。  今後、電子政府の実現や電子商取引の拡大等に伴って、電子署名・認証業務に係るビジネス(以下「電子認証ビジネス」という。)が必要不可欠となることが予想される。そこで、電子認証ビジネス市場規模(注2)についてみることとする。  ここでは、電子認証ビジネス市場について、PKIによるものを対象とし、認証客体(法人・団体等、個人)が認証主体(法人・団体等)のサービスに対して支払う代金の流れである「電子証明書関連サービス市場(法人・団体等向け)」と「電子証明書関連サービス市場(個人向け)」、認証主体(政府、法人・団体等)がサービス提供に必要なソフトウェアを開発・購入する「ソフトウェア市場」の3領域に分け、それぞれの市場について平成18(2006)年度までの市場規模を推計している。  平成13(2001)年度の電子認証ビジネス市場規模は約63.4億円と推計されるが、今後、電子認証ビジネス市場規模は順調に拡大し、平成18(2006)年度には約419.5億円になると予測される(図表2)、推計方法については資料1-2-3〜7)。  構成市場別にみてみると、電子証明書関連サービス市場(法人・団体等向け)及びソフトウェア市場が順調な拡大をみせ、今後5年間で市場が約6〜8倍に拡大するものと予想される。  また、米国における電子認証ビジネス市場規模の予測値と、今回の我が国の予測値を比較した場合、平成13(2001)年度については、米国市場は日本市場の約8.5倍であるが、平成18(2006)年度には、その差が約4.5倍にまで縮小することが予測される(図表3))。 図表1) PKIによる電子認証のコンポーネント(概念図) 図表2) 電子認証ビジネス市場推計※2 図表3) 米国の電子認証ビジネス市場規模予測との比較 (注1)一方の鍵から他方の鍵を導き出すことの数学的な困難性に基づいて生成される、異なった鍵のペアにより暗号化と復号を行う方式。鍵のペアは、「公開鍵」(誰でも入手可能な一方の鍵)と、「秘密鍵」(所有者が厳重に管理するもう一方の鍵)で構成される (注2)推計方法については、資料編1-2-7参照