(6)電子商取引市場 −量的拡大とともに質的にも向上  インターネットの普及やブロードバンド化の進展に伴い、我が国では電子商取引の利用が拡大しており、既に4分の1近くの企業が販売業務や調達業務のいずれか又は両方において電子商取引を利用している(注1)(図表1))。電子商取引市場は、パソコン・家電製品等の最終消費財や有料ネットワークコンテンツ等のサービスの取引を行う「電子商取引(最終消費財)市場」と、企業間における原材料取引を行う「電子商取引(中間財)市場」に分類されるが、ここではそれぞれの市場について、市場規模の推移及び企業の具体的取組についてみることとする。  まず、電子商取引(最終消費財)市場について市場規模(注2)をみると、平成13年は1兆2,218億円(対前年比96.0%増)となっており、着実に拡大を続けていることが分かる(図表2))。  また、電子商取引(最終消費財)市場は量的な拡大だけでなく、近年では顧客サービス等の高付加価値化を実現するための新たな取組が現れている。マツダでは、平成13年2月にインターネットを活用した受注生産システムである専用ホームページ「ウェブチューンファクトリー」(http://www.w-tune.com)を開設している(図表3))。同サイトでは、エンジン、トランスミッション、インテリア等を4,160とおりの組合せの中から自由に選択することが可能となっており、カタログにはない顧客のし好に応じたオーダーメイド商品の提供を行っている。また、内装やボディーカラー等は、ホームページ上で画像表示され、色や形のイメージを確認しながらカスタマイズすることができる。さらに、カスタマイズされた自動車の見積りや注文した自動車の生産・物流状況確認に加え、下取りの簡易査定、自動車ローンの支払条件検討・審査が行えるなど、ホームページ上で自動車購入に係るワンストップサービスを提供している。  他方、電子商取引(中間財)市場について市場規模をみると、平成13年は53.9兆円(対前年比41.5%増)となっており、電子商取引(最終消費財)市場同様、着実に拡大が進んでいる(図表4))。  これまで、電子商取引(中間財)市場は、電機産業や自動車産業等、部品点数の多い組立・加工産業を中心に、主に大企業である部品調達企業の主導による普及が進められてきた。しかし、インターネットが広く普及するとともに、その利用方法は多様化しており、現在では、中小企業を含めた販売企業の主導による電子商取引(中間財)市場への参入例も現れている。平成13年7月に京都府南部に所在する機械金属関連の中小企業10社が共同で立ち上げた「京都試作ネット(http://kyoto-shisaku.com)」は、インターネットを活用し、顧客に対して試作に特化したソリューションを提供している。同サイトでは、依頼主の注文に対して、価格よりも迅速な対応を最優先しており、ウェブサイトの入力フォームや電子メール等を経由して注文依頼が入ると、即時に参加企業及び担当者の携帯電話やモバイル端末にメールが配信され、2時間以内に参加企業のうち最適な技術や設備を有する企業から依頼主に対して見積りが提出される仕組を構築している。この結果、大手メーカーの開発部門をはじめ、独自の技術は有するものの製品化ノウハウの少ない研究開発型ベンチャー企業等から多数の試作相談が寄せられ、ホームページの開設からおよそ5か月程度で30件以上の取引を成約させており、高い技術を有する中小企業の販路開拓や新分野進出に一定の成果を挙げている。 図表1) 我が国企業における電子商取引の利用状況 図表2) 電子商取引(最終消費財)市場の推移 図表3) 「ウェブチューンファクトリー」ホームページ 図表4) 電子商取引(中間財)市場の推移 (注1)総務省「通信利用動向調査(企業編)」におけるホームページを利用している企業の割合に、「デジタル様式でない商品の販売(受注を含む)」、「eマーケットプレイス(調達活動)の利用」、「デジタル様式の商品の販売(受注を含む)」の合計を乗じて算出 (注2)市場規模の推計に当たっては、最終消費財市場、中間財市場ともに、電子商取引を「TCP/IPを用いたネットワーク上で財・サービスの受発注を行う商取引」と定義している。なお、市場規模推計方法については資料1-2-11参照