(2)情報通信ベンチャー企業の特徴 −技術の進展や事業環境の変化に迅速に対応  情報通信産業はムーアの法則(注1)やギルダーの法則(注2)等にみられるように、一般に技術の進展の速い産業であるといえる。そのため、情報通信ベンチャー企業には技術の進展に対応した経営スピードや事業環境の変化に対応していくことが必要となると考えられる。  「ITと企業行動に関する調査」をみると、情報通信ベンチャー企業(注3)が持つ将来像は、「現在の事業の安定継続」が最も高いものの、急速な事業環境の変化に対応するため、非情報通信ベンチャー企業と比較すると、「現在の事業を多角化、それぞれ独立」という将来像を強く持っている(図表1))。また、株式上場に対する意識についても、早期の株式上場を目指す割合が高く、経営のスピードを重視していることがうかがえる(図表2))。  さらに、情報通信ベンチャー企業は非情報通信ベンチャー企業に比べて、早期に黒字化を見込んだ事業計画を立てている割合が高く、情報通信ベンチャー企業の79.5%が設立後3年以内での黒字化を予定している。また、実際58.1%の企業が設立後3年以内までに単年度黒字(初年度から黒字、設立後3年以内で単年度黒字の合計)となっており、事業計画に基づく早期の黒字化が図られている(図表3)、4))。 図表1) 将来像 図表2) 株式上場 図表3) 創業時の事業計画 図表4) 創業後の事業経営状況 (注1)米国の半導体メーカーであるインテル社の創設者の1人であるゴードン・ムーアが提唱。半導体の集積度は18か月で2 倍性能が向上するという経験則 (注2)米国の経済学者ジョージ・ギルダーが提唱。10年間でコンピュータの処理速度は100倍、通信帯域幅は1000倍以上になる (注3)ここでいう「情報通信ベンチャー企業」とは、「ITと企業行動に関する調査」において、IT関連製造業、電気通信業、放送業、情報サービス業、インターネット付随サービス業、映像・音声・文字情報制作業に該当する企業のことを指す