(4)IT講習会の実施と今後の取組 −550万人へのIT講習と地域ITリーダーの育成を実施  e-Japan重点計画において、我が国が目指すべき高度情報通信ネットワーク社会の実現のため、すべての国民の情報リテラシーの向上を図るために必要な環境を整備し、国民がITを積極的に活用できるような活力のあるIT社会の実現を目指すこととされている。このようにすべての国民がITのメリットを享受できる社会を実現するためには、インターネット等の高度情報通信ネットワークを利用し、多様な情報・知識を世界的規模で入手、共有、発信できる能力を身につけることが必要とされている。 (1)IT講習会の実施状況  政府は、平成12年度において、都道府県に交付金(約545億円)を交付し、地方公共団体(都道府県及び市町村)が行う住民を対象としたITの基礎技能(パソコンの基本操作、文書の作成、インターネットの利用及び電子メールの送受信)を身に付ける講習を支援するため、平成13年度末までに全国で約550万人程度の国民(成人を対象)に対する「IT基礎技能講習事業」を実施したところである(図表1))(注)。  平成13年12月末までの実績は以下のとおりである。 1) 開設講座数 237,832講座 2) 応募者数  5,471,763人(平均倍率1.22倍) 3) 受講者数  3,865,692人 (2)IT講習会の受講者の声  IT基礎技能講習事業は平成14年3月末までに実施されるべき事業であるが、各都道府県及び市町村が各々の地域の実情に応じた事業を実施しており、34都道府県が4月以降においても国に届出の上、同事業を継続実施している。したがって、最終的な事業実績は平成15年初頭に判明する見込みである。  これまでの事業実施を通じ、受講者から好評を得た事例のうち、代表的なものは以下のとおりである。 1)パソコンの操作説明をプロジェクター等を使用して拡大投影を行うなど、受講者が理解しやすい環境の創出に努めた。 2)専門の講師だけでなく補助講師を多人数配置し、きめの細かい講習の実現に努めた。 3)受講者の生活形態に応じて、朝・昼・夜コース、土日コースなど、多様なコースを設定し、より多くの住民が受講できる環境の創出に努めた。  一方で、IT講習を含む情報リテラシーの向上に対する今後の課題等については、以下のような意見が寄せられているところである。 1)地域住民ニーズへのきめ細かな対応を図るため、講習後におけるヘルプデスク機能等による継続的なフォローを講じる必要があること。 2)講習内容の多様化を図る必要があること。 3)IT国家を支える地域住民の情報リテラシーの向上のために、更に地域の実情に応じ継続的な取組を進める必要があること。 (3)今後の取組  上記の意見を踏まえると、こうした課題への対応については、以下の視点から取り組むことが必要になる(図表2))。 1)「学習の場」の整備  IT基礎技能講習修了者が、今後自らIT実践を行う場合におけるヘルプデスク機能等の確保について、今回のIT基礎技能講習等により既に相当のIT環境が整備されている公民館や図書館等の社会教育施設を「IT基礎技能住民サポートセンター」として活用していくことを中心に検討していく必要がある。 2)地域住民をサポートする「指導者」の確保  地域住民のIT実践をサポートする指導者(地域ITリーダー)をどのように育成・確保するかについて検討する必要がある。具体的には、地域ITリーダーの育成のための要件や講習の在り方、地域ITリーダーの登録制度等による確保方策等について検討を行い、その際、NPOやボランティア、あるいは地域の高校生や大学生等の協力をどのように獲得するのか等についても検討する必要がある。 3)「コンテンツ」の充実  地域住民のIT学習に資する教育用プログラムの内容をどのように充実させるのか検討する必要がある。 4)「コーディネーター」機能の整備  IT基礎技能住民サポートセンターの運営や地域ITリーダーの確保等のコーディネート機能の構築について、市町村の役割を踏まえながら検討する必要がある。  平成14年度以降においては、「IT基礎技能講習事業等の成果を踏まえ、公共施設のIT環境の整備も含め、国民の情報リテラシーを向上させるための取組を行う」こととされているところであるが(「e-Japan2002プログラム」)、地方公共団体においても、今回の取組を通じ、継続的なIT講習等の情報リテラシー向上のための施策の必要性が認識されているところであり、今後、官民が一体となった取組が望まれるところである。 図表1) IT講習推進特別交付金事業の概要(イメージ) 図2) IT基礎技能習得等住民サポート事業(イメージ) (注)都道府県別講習事業実施状況については資料1-4-1参照