(5)職場におけるIT活用能力 −ニーズは、IT活用による新規ビジネス・業務改革の企画能力を持つ人材へシフト  IT人材の育成については、日常生活に必要な情報リテラシーの向上とともに、情報通信を十分に活用し企業で活躍することのできる人材の育成も重要である。企業におけるIT人材には、情報システム担当部署に所属する従業員等の専門的知識を有する人材と、構築されたシステムの利用者であるその他の人材とが考えられる。ここでは、専門的知識を有する人材に対し、企業がどのような能力を求めているか(注)について、「ITと企業行動に関する調査」の上場企業を対象としたアンケート結果をみたところ、結果は下記のとおりである。  まず、企業が情報通信活用の推進において重視する技術分野について、3年前と現在を比較すると、「セキュリティ関連」について重視する企業の割合が急増した一方で、「ネットワーク関連」、「メインフレーム・汎用機関連」については重視する企業が減ってきている。これは過去3年間で、旧来の閉じた情報通信システムから、オープンな技術を活用した情報通信システムの利活用が進んだためと考えられる(図表1))。  また、専門的知識を有する人材に対して企業が求めるスキルも、企業における情報通信の位置付けが、基盤整備を重視したものから活用を重視したものへと変化するに伴い、情報通信の専門能力から、情報通信を活用した企業サービスの高付加価値化、他の競争企業との差別化等を図るなどの企画・立案能力へとシフトしつつある。例えば、「IT機器操作・設定能力」は、3年前には、回答企業の約4分の1が重要視している項目であったが、現在では、わずか5%が回答するにまで減少している。また、「情報システムのソフトウェア開発」、「情報システム運営・管理」などの専門的な技術に関する能力については、3年前の約40%から、現在の約15%にまで減少している。他方、「ITを活用した新規ビジネスの企画」、「IT活用による業務改革の企画」といった情報通信を活用した企画・立案能力については、3年前の約23%から、現在の約66%に急増している(図表2))。 図表1) 情報通信活用の推進において重視する技術分野 図表2) 企業が求めるIT活用能力の変化 (注)専門的知識を有する人材以外の従業員におけるIT教育については、1-2-2(2)参照