(3)個人情報の保護 −個人情報の漏えいを防ぐために  ITの発展により電子化された情報をネットワークを介して大量かつ迅速に処理することが可能となった。その一方で個人の情報が漏えいする事例も発生しており、個人情報保護の必要性が一層高まってきている(図表1))。また、ネットワーク社会における電子商取引の発展等を促進するためには、情報の自由な流通が不可欠であり、利用面の有用性にも配慮した個人情報保護の在り方が強く求められるようになっている。 (財)日本データ通信協会では、平成10年から協会内に「個人情報保護登録センター」を設置しており、ガイドラインの遵守など適正な個人情報保護を講じている事業者の登録、個人情報保護マーク(図表2))の付与等を行っている。平成14年4月現在29事業者が登録されている。  また、同協会は、平成13年8月にシンガポールのコマース・トラスト社(シンガポールの電子商取引企業の業界団体により設立され、個人情報保護のマーク制度を運用)と覚書を締結し、各々の個人情報保護マークの相互承認を目指した協議を開始することを確認している。これについては平成14年1月に結ばれた「新たな時代における経済上の連携に関する日本国とシンガポール共和国との間の協定」(日本とシンガポールとの間の貿易及び投資の自由化・円滑化、金融・情報通信等の幅広い分野での経済連携を強化するための法的枠組について定めるもの)の政治宣言においても言及されている。  個人情報保護については、諸外国においても法整備が進められてきている(図表3))。  我が国における電気通信分野の個人情報については、郵政省(現総務省)が策定した「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」に基づき、電気通信事業者等が自主的にその保護に努めてきた。しかしながら、電気通信事業者の保有する顧客情報等の漏えいに関する報道等がみられ、自主的な取組の限界も指摘されている。  こうした中、我が国では、平成11年7月以来、高度情報通信社会推進本部及び同本部改組後の情報通信技術(IT)戦略本部の下、有識者からなる検討の場において、個人情報保護に関する基本法制の在り方を中心に、専門的かつ広範な調査審議が重ねられ、その結果、平成12年10月に、内閣総理大臣に対し「個人情報保護基本法制に関する大綱」が提出された。これを受けて、政府においては「個人情報の保護に関する法律案」を取りまとめ、第151回通常国会に提出したところである。  総務省においては、電気通信分野における個人情報保護法制の在り方について検討するため、平成11年9月から「電気通信分野における個人情報保護法制の在り方に関する研究会」を開催し、平成12年12月にその最終報告書が取りまとめられた。本報告書では、電気通信分野における個人情報保護に関する整備の要否や内容等について検討し、その検討の必要性を確認するとともに、現時点での方向性として、1)電気通信事業者に対する規制、2)個人(行為者)に対する規制、の2点を挙げている。今後、総務省では、「基本法」の動向を勘案しつつ、引き続き、電気通信分野における個人情報の保護のために必要な措置について検討を深めていくこととしている。 図表1) 電気通信分野における最近の主な個人情報漏えい事例 図表2) 個人情報保護マーク 図表3) 諸外国等における法整備の現状