2 安全・信頼性の向上及び危機管理対策の推進 (1)不正アクセスへの対応 −ウイルス、ハッカーへの対策 (1)不正アクセス行為の禁止等に関する法律  対面により相手を識別できる現実社会における情報のやり取りと異なり、インターネット上のサイバースペースにおける利用権者の識別は、コンピュータのアクセス制御機能(利用権者をID・パスワード等の識別符号により識別し、識別符号が入力された場合にのみその利用を認めることとする機能)に依存している。相手の見えないインターネット上での情報交換を安心して行うためには、このコンピュータのアクセス制御機能による利用権者の識別が正常に機能しているということが大前提となっている。  サイバースペースにおける利用権者の識別に対する社会的な信頼を侵すこととなる「不正アクセス行為」は、サイバースペースにおける情報交換の安全・信頼性の前提を崩すものであり、これを放置することは、高度情報通信社会の健全な発展を大きく阻害することとなる。  そこで、電気通信に関する秩序の維持を図り、高度情報通信社会の健全な発展に寄与するために、警察庁、郵政省(現総務省)及び通商産業省(現経済産業省)の3省庁共管により、平成11年8月に「不正アクセス行為の禁止等に関する法律(通称:不正アクセス禁止法)」を公布し、平成12年2月(一部については平成12年7月)から施行されている。不正アクセス禁止法においては、不正アクセス行為の禁止・処罰について規定するとともに、不正アクセス行為を受ける側である「アクセス管理者」に防御措置の実施を求め、アクセス管理者が防御措置を適切に実施できるよう行政が援助することとし、これにより不正アクセス行為の防止を図ることとしたものである。  同法においては、図表1)に示す3類型の行為を不正アクセス行為として禁止・処罰するとともに、他人の識別符号を無断で第三者に提供する行為も禁止・処罰することとしている。また、国家公安委員会、総務大臣及び経済産業大臣は、毎年少なくとも1回、不正アクセス行為の発生状況及びアクセス制御機能に関する技術の研究開発状況を公表することとし、不正アクセス行為が行われにくい環境の構築に資することとしている。 (2)不正アクセス対策促進税制  インターネットの急速な普及により、様々な社会経済活動がネット上で容易に行われるようになり、我が国に計り知れない恩恵をもたらした。他方で、インターネット上のサイバースペースには、不正アクセス等の各種脅威が存在している。情報セキュリティ対策を講じることなくインターネットを利用することは、自らのシステムを脅威にさらすだけでなく、DDoS(Distributed Denialof Service)攻撃の「踏み台」として利用されるなど、ネットワーク全体のセキュリティに害を及ぼすことにもなる。社会経済活動がインターネットへの依存度をますます深めていく中にあって、情報セキュリティの確保は極めて重要な課題となっている。  しかしながら、我が国においては、情報セキュリティ対策に不可欠なファイアウォール装置の普及率は高いとはいえない状況にある。したがって、税制支援措置を講じることにより、ファイアウォール装置の普及を促進し、我が国におけるインターネット利用環境の安全性の確保を図ることが必要である(図表2))。 図表1) 「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」に定める不正アクセス行為 図表2) 不正アクセス対策促進税制の概要