(2)情報通信分野における国際経済問題への対応 −対話による国際協調と国際理解の推進  情報通信分野における国際経済問題の解決に向け、我が国は、二国間、多国間の様々な協議の機会を通じ積極的に取り組んでおり、国際的相互理解と国際協調の促進に努めている。 (1)日米間の協調  2001年6月に開催された日米首脳会談において、日米間の対話を通じて持続可能な成長のために協調することを目的とした「成長のための日米経済パートナーシップ」を立ち上げることが発表された。総務省は、規制改革及び競争政策、投資等を扱うこの枠組に対し、2001年10月に開催された第1回次官級経済対話に参加するなどの取組を行っている。 (2)日EU間の協調(日EU協力強化に関する新たな合意と行動計画)  2001年12月、ベルギー(ブラッセル)において開催された日EU定期首脳協議において、21世紀の日・EUパートナーシップを一層強化し、行動志向的な協力関係を推進するため、「日EU協力の10年:新たな政治文書及び行動計画」が採択された。この「行動計画」は、日EUの今後10年間(2001〜2010年)の協力の分野及びその内容をまとめたものであり、IT分野に関しては、「グローバルな情報社会」の創設、発展に向け、日・EUが今後以下の事項で協力を行うこととしている。 1)「次世代移動通信システム(4G)の国際標準化に向けた協力」 2)「市場の原則に基づく競争を促進するための規制改革及びその実施のための協力」 3)「電子署名の相互承認のための協力」 4)「IPv6の導入を促進するための協力」 5)「デジタル・ディバイドの解消に向けての協力」 (3)その他欧米諸国との協力  フィンランド、カナダ及びフランスなどと二国間の協力で合意(3G、4G、IPv6、電子商取引等)。特に、フィンランドとの間では、モバイルインターネットにおける協力を共同発表。  2001年11月の日・フィンランド情報通信大臣会合において、モバイルインターネットの良好な環境を創造するため、「モバイルインターネットに関する日・フィンランド共同発表」が合意された。両国が、第3世代移動体通信の普及促進や次世代(第4世代)の移動体通信の研究開発等の環境整備に関して必要な協力を行っていくほか、両国の産業界同士の協力も推進していくこととしている。 (4)日中・日韓間の協調 1)日中ICTパートナーシップ  2002年1月の日中情報通信大臣会合において、今後の情報通信分野における日中協力につき、政府間協力のもとに官民が連携した協力体制を進めるための包括的な枠組として、「日中ICTパートナーシップ」が調印された。協力を進める事項として当面、IPv6の推進協力、モバイル分野における協力、規制・競争政策協力の3分野を推進していくこととしている。 2)情報通信分野における日韓協力  2002年1月の第4回大臣会合では、第4世代移動通信システム(4G)の開発・標準化協力の推進等日韓協力を強化することで意見が一致した。また、2000年9月の日韓首脳会談において、IT分野の協力に関する「日韓IT協力イニシアティブ」が合意され、同イニシアティブに基づいた協力が進められている。 (5)WTO、APEC及びOECDにおける取組 1)WTO i 新ラウンドの立上げ  2001年11月、カタールのドーハで第4回閣僚会議が開催された。主要6分野(農業、投資・競争、アンチ・ダンピング、環境、「実施の問題」(注1)、知的所有権と健康)等において合意が得られ、交渉期間を3年(2005年1月1日まで)とする新ラウンド開始の閣僚宣言が採択された。 ii 閣僚宣言 (i)サービス分野:「交渉ガイドライン」(注2)を再確認し、交渉スケジュールとして、1)2002年6月30日までに初期要求(リクエスト)を、2)2003年3月31日までに初期提案(オファー)を行うこととした。 (ii)電子商取引:従来から行われていた作業計画の継続を明記するとともに、インターネットを通じて配信される音楽、映像等のデジタル・コンテンツについては関税を賦課しないという慣行を、第5回閣僚会議まで継続することとした。 iii 情報通信分野における取組  我が国は、サービス貿易交渉における情報通信分野の自由化の促進に向けた対話、電子商取引に関する環境整備、政府調達協定の見直しをめぐる議論等において具体的な取組を行っている。 2)APEC  APECは、自由で開かれた貿易・投資の達成や開発協力の促進という長期的目標(ボゴール宣言)の実現に向けた政府間経済協力の場であり、情報通信関連については、以下の会合で取り組まれている。 i 電気通信・情報ワーキンググループ(TEL、毎年3月及び9月頃開催)  情報通信関係の自由化、技術協力やビジネス円滑化等に関する実務的な議論や、各種プロジェクトの提案や進捗状況報告等を行っている。これらに加え、第24回会合(2001年9月、韓国(済州島))においては、ボゴール宣言実現への道筋を示した「大阪行動指針」の見直し作業や、APEC域内のデジタル社会化に向けた「e-APEC戦略」の編集作業が行われ、第25回会合(2002年3月、ヴィエトナム(ハノイ))においては、電子政府に向けた各国の取組状況の調査や、アジア太平洋情報通信基盤(APII:Asia Pacific Information Infrastructure)に関するプロジェクトの承認とともに、第5回電気通信・情報産業大臣に向けた準備等が行われた。 ii 電気通信・情報産業大臣会合(TELMIN、おおむね2年に1回開催)  「共通の発展の推進に向けたデジタル・オポチュニティの活用」というメインテーマの下、第5回大臣会合が2002年5月上海にて開催され、TELの今後2年間の活動方針を示した大臣宣言が採択された。なお、第1回大臣会合より情報通信を所管している総務省(郵政省:当時)から、代表団長として大臣等が出席してきており、第5回大臣会合には佐田総務副大臣が代表団長として出席した。 iii その他  APEC内の電子商取引関連の取組を総括し、各会合間の検討内容の調整等を行うための「電子商取引ステアリンググループ」(ECSG:E-Commerce SteeringGroup)や、APEC域内のデジタル社会化に向けた「e-APEC戦略」を2001年秋に取りまとめた「e-APECタスクフォース」等がある。 3)OECD  OECDは、98年に電子商取引閣僚会議(カナダ(オタワ)、当時の野田郵政大臣出席)において、1)プライバシー保護、2)消費者保護、3)電子認証に関する3つの閣僚宣言を採択するとともに、従来の課税原則を電子商取引に適用されることが国際的に確認された。この閣僚宣言を受けて、情報コンピュータ通信政策委員会(ICCP)の各作業部会においてそれぞれの課題を検討している。情報セキュリティ・プライバシー作業部会(ISP)においてプライバシー保護、電子認証及び暗号問題等、電気通信・情報サービス政策作業部会(TISP)においてインフラへのアクセス、情報経済作業部会(IE)及び情報社会指標作業部会(IIS)において電子商取引の定義の検討及び企業間電子商取引の経済への影響調査を実施している。 (注1)新たな自由化約束ではなく、ウルグァイ・ラウンドで約束された内容の実施(方法・時期)について途上国を優遇すべきとの議論 (注2)2001年3月にWTOサービス貿易理事会特別会合において採択された、サービス交渉の目的・原則、範囲、手法・手続等の具体的な交渉指針