3 国際標準化活動の推進 −標準化作業の迅速化  情報通信分野の国際標準化では、国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union)が中核的な役割を果たしている。ITUにおいては、電気通信標準化部門(ITU-T:ITU Telecommunication Standardization Sector)及び無線通信部門(ITU-R:ITU Radiocommunication Sector)が標準化活動を行っている。 (1)ITU-Tにおける取組  ITU-Tでは、情報通信環境を取り巻く急速な変化に対応した迅速な標準化作業(勧告の策定)を行うため、作業方法の見直し等が進められているところである。2000年9〜10月に開催された、ITU-Tの活動の方向性を決める会議である世界電気通信標準化総会(WTSA-2000:World Telecommunication Standardization Assembly-2000)において、それまで勧告の承認手続だけでおおむね9か月程度を要していた状況を改善するため、規制又は政策への影響を伴わない勧告については、研究委員会(SG)会合を開催せずに電子的な手段(電子メール、ウェブ等)を活用して、迅速な勧告承認を可能とする「代替承認手続き」(AAP:Alternative Approval Process)の導入が決定した。AAPの導入により、ほとんどのITU-T勧告の承認手続に要する期間を2〜3か月程度に短縮することが可能となっている。また、市場ニーズに対応した迅速な標準化作業を行うため、目標となるシステム案をきっかけに速やかに作業を立ち上げ、短期的・重点的に標準化を行うプロジェクトオリエンテッドな作業方法を、我が国より提案しており検討がなされている(図表)。  また、ITU-Tは、他の標準化機関等との積極的な連携を進めており、例えば、インターネットの標準作成フォーラムであるIETF(Internet Engineering Task Force)やIMT-2000の標準化作業を行っている3GPP/3GPP2(Third-Generation Partnership Project/Third-Generation Partnership Project2)において作成された標準を勧告策定の際に参照し、標準化作業の重複を避けるとともに迅速化を図っている。 (2)ITU-Rにおける取組  ITU-Rでは、無線通信規則の改正、無線通信の技術・運営等の問題の研究や勧告作成及び周波数の割当・登録などを行っている。現在、ITU-Rでは、技術分野ごとに、周波数管理(SG1)、電波伝搬(SG3)、固定衛星業務(SG4)、放送業務(SG6)、科学業務(SG7)、移動等業務(SG8)、固定業務(SG9)の7つの研究委員会(SG)を設置して無線通信に関する技術的検討を進めており、また、ITU-Rの作業の優先順位及び戦略等の見直し、作業計画の進捗状況の評価を行う無線通信アドバイザリグループ(RAG)を設置してITU-R全体の作業方法の改善を行っている。  ITU-Rにおける活動に対して我が国は、1名のSG議長及び3名のSG副議長をはじめ数多くの役職を引き受けるとともに、勧告作成に向けて多数の寄与文書を提出し、SG等会合に多数の専門家が出席している。  我が国における最近の主な取組としては、2001年10月に東京にて開催された第6回WP8F会合(SG8)において、我が国の提案したIMT-2000の高度化及び後継システムの基本コンセプトを基に議論を進めることで合意されたほか、我が国のDSRC(DSRC:Dedicated Short Range Communications、狭域通信)方式をASTAP9か国の共同提案としてWP8A(SG8)に提出した結果、これを基に作成された新勧告案が2001年11月に開催されたSG8会合において採択された。また、2001年10月にジュネーブ(スイス)で開催されたSG6会合においては、地上デジタルテレビジョン放送のプランニング基準の勧告に日本方式(ISDB-T)のプランニングパラメータを追加することが決定されるなど、技術的検討に積極的に貢献しているところである。  今後の対応としては、WRC-2003(世界無線通信会議、2003年6月開催予定)の準備会合であるCPMの第2回会合(2002年11月開催予定)に向け、各SG・WP等における技術的検討等の活動に積極的な寄与・貢献を行っていく。 図表 ITU-Tにおける取組