(3)情報家電の展望 セキュリティ・プライバシー保護機能、接続・操作の容易性が普及の条件 1 情報家電の現状  情報家電の提供が、実験段階から実用化の段階に移行している。情報家電の実現により、これまで単独で利用されてきた家電製品が、ネットワークを通じて相互に接続し、さらにゲートウェイ(相互接続装置)を通じてインターネットにも接続することで、外出先からの操作やハードと連携したネットワークサービスが可能になる。例えば、家電製品のソフトのアップグレードや故障診断等のメンテナンスサービス、レシピや自動録画のためのテレビ番組情報等のデータ提供等が可能となる。  情報家電は、テレビやステレオ等のAV系と冷蔵庫やエアコン等のいわゆる白物家電系に分けることができる(図表1)、2))。AV系では、ホームサーバやパソコン等に蓄積したデータを、テレビやパソコン等の多様な端末から視聴できる製品が登場している。テレビ端末は、魅力的なコンテンツの存在、大きな画面、操作の容易性等を備えており、テレビ端末を中核に据えた商品化も進んでいる。白物家電系では、単体での家電製品の提供に加え、各種の家電製品をセットで提供する事例が登場している。 図表1) AV系情報家電の商品化事例 図表2) 白物系情報家電の商品化事例  情報家電を結びつける家庭内の通信方式には、AV系と白物家電系では異なる方式が採用されている。AV系では、映像情報の伝送に高速通信が必要なため、イーサネットや無線LAN等が採用されている。白物家電系では制御信号が中心で高速通信は必要ないため、イーサネットのほか、Bluetooth等が採用されている。関係業界では、通信規格の統一に向けた取組を進めており、例えば、家電メーカ等が構成するエコーネットコンソーシアムが7種類の通信方式に対応した規格ECHONETを策定している。また、家電メーカが平成15年3月に設立したデジタルテレビ情報化研究会において、デジタルテレビの通信サービスに対応した技術仕様の検討が開始されている。 2 普及の条件  平成14年末時点でインターネット対応型テレビを保有している世帯は3.0%、その他インターネットに接続できる家電の保有世帯は3.2%にとどまっており、情報家電の本格的な普及はこれからである(総務省「平成14年通信利用動向調査」)。  そこで、情報家電普及の条件を探るため、情報家電の購入意向及び利用条件を調査したところ、購入したいと答えたシステムは、「外出先からの鍵の閉め忘れやガス確認のON/OFFの確認ができるシステム」が61.1%と最も多く、「外出先から、家の中の様子(侵入者の有無、児童やペットの状況等)を確認することができるシステム」が50.0%とこれに続いている。生活の安全確保に対するニーズの強さが表れている。価格については、どのシステムにおいても「価格が一般の家電の価格と同じであれば購入したい」と「価格の差が10%増未満であれば購入したい」との回答が購入したいとの回答のほとんどを占め、利用者は価格面で厳しい要求をしている(図表3))。  また、情報家電利用に当たり、重視する条件としては、「誤動作や不正アクセス防止等のセキュリティ機能」が76.0%と際だって高い。情報家電の場合、パソコンとは違うレベルの安全性・安定性を求めるニーズが確認できる。次いで、「利用状況等のプライバシー保護機能」が35.0%、「他のメーカの情報家電をつなげて使えるような相互接続性」が33.1%、「家庭の誰でも使えるような簡単な操作性」が32.7%と多い(図表4))。ネットワークにつながることによる不安の解消や接続や操作の容易性を備えることが普及には必要であることを示している。 図表3) 情報家電の購入意向(複数回答、買い換え時を含む)と購入希望価格 図表4) 情報家電利用の条件(重視するもの上位2つを選択)