(4)日米企業における情報化投資効果の差の要因 情報化投資の目的意識、情報システムの連携、条件整備が相違  我が国企業は、米国企業に比べると、情報化投資の効果発揮が限定的である。この要因として、情報化投資の目的意識、社内外での情報システムの連携及び効果発揮に向けた条件整備の3点における違いが考えられる。 1 情報化投資への目的意識  日米企業における情報化投資の効果発揮状況において、差が大きいのは「売上拡大・高付加価値化」の側面である。この要因の一つとして目的意識の違いが考えられる。日米企業における情報システム導入の目的意識を比較すると、我が国企業にとって情報化投資の主な目的が「コスト削減・業務効率化」であるのに対し、米国企業は「コスト削減・業務効率化」だけでなく「売上拡大・高付加価値化」も目的としている(図表1))。  つまり、我が国企業は、情報化投資を単なる業務効率化のツールとしてしか見ていない。他方、米国企業は、情報化投資を業務効率化だけでなく競争力強化や企業の成長の源泉として考えている。この目的意識の違いが情報化投資の効果発揮状況の差に影響している可能性がある。 図表1) 日米企業における業務別の情報システム導入における目的意識の相違(複数回答) 2 情報システムの連携状況  情報化投資効果を最大限に発揮するためには、業務分野ごとに独立した情報システムを導入するのではなく、各種業務分野を見渡し、業務横断的に情報システムを導入することが重要である。また、企業活動は、仕入・生産・流通・販売等のプロセスにおいて他の企業とも連動して動いており、企業間で連携した情報システムを導入することも重要である。すなわち、情報化投資を行う上で、企業内外を問わず、一部門や企業内に閉じた部分最適化を図るのではなく、全体最適化の観点からオープンな情報システムを導入しているか否かが情報化投資の効果発揮に影響すると考えられる。  我が国企業の企業内通信網(LAN等)の構築率は97.9%であり、米国企業の97.1%と差はないが、企業内の業務間での情報システムの連携率は、米国と比べて低い(図表2))。また、我が国企業の企業間通信網(WAN等)の構築率は68.1%であり、米国企業の88.4%と比べ、構築率は低い。企業間の業務別での情報システムの連携状況も、日米の差は、企業内以上に顕著であり、商品生産、経理・会計、給与・人事、アフターサービスでは、米国企業の連携率が我が国企業の2倍以上となっている。このような情報システムの連携の差も日米企業の情報化投資効果の差に影響していると考えられる。 図表2) 日米企業における情報通信ネットワークの導入状況 3 情報化投資の効果発揮に向けた条件整備  企業が情報化投資の効果をより発揮するためには、単に情報システムを導入するだけでなく、情報化投資の効果発揮のための取組を行うことが必要である。情報化投資の効果を発揮するための各種取組と企業の情報化投資効果との相関関係(注)を分析すると、1)削減された予算や人員等の新規分野への再活用(図表3)中、1)、2)導入前及び導入後における投資対効果の定量的かつ継続的な把握(同、2、3、9)、3)経営トップのIT戦略策定等への強い関与(同、4、8)、4)業務、組織・制度の見直し、選択と集中等の取組(同、5、6、7、10)と情報化投資の効果発揮との間に相関関係がみられる(図表3))。  また、これらの取組は、我が国企業と同様に米国企業においても総じて高い相関関係を示しており、情報化投資の効果発揮に寄与している。  これらの取組について、我が国企業において、実施した企業の割合は米国企業を下回っている。その中でも、特に、我が国企業が米国企業よりも実施率が低い取組は、「投資対効果の定量的かつ継続的な把握」である。「導入後の定期的かつ定量的な効果検証」においては米国の4分の1に満たない。また、「発現効果の企業経営への再活用」、「情報システム運用に合わせた組織・制度の改革」等についても、日米企業で20%以上の差がある(図表4))。 図表3) 情報化投資効果との相関関係が強い取組 図表4) 日米企業における情報化投資に対する効果発揮に向けた取組 (注)企業の各取組の実施状況と企業の情報化投資効果をアンケート結果を基に点数化し、相関分析を行った。詳細については、資料1-2-10参照