(4)高度消防防災情報通信ネットワークシステムの構築 消防防災分野における情報化の推進  大規模災害等の非常事態において、迅速かつ的確な災害応急活動を実施するためには、情報の収集・伝達が必要不可欠である。そこで、総務省では、e-Japan重点計画-2002等を踏まえ、情報通信技術の急速な進展に対応して、高度な消防防災分野の情報通信ネットワークシステムの構築に取り組んでいる(図表)。 図表 消防防災情報通信ネットワークの概要 1 ネットワークインフラの整備  災害時等において情報の収集・伝達を行うために、総務省では、地上系通信網である消防防災無線を整備している。一方、都道府県及び市町村もそれぞれ都道府県防災行政無線、市町村防災行政無線を有しており、各々がこれらの地上系無線を活用することにより、相互に必要な情報のやり取りを行っている。しかしながら、大規模災害等の発生に備え、通信の多ルート化が必要であることから、総務省及び各地方公共団体においては、(財)自治体衛星通信機構の地域衛星通信ネットワークも活用している。  今後は、これら地上系無線網、衛星系通信網の更なる整備促進を行うとともに、音声及びファクシミリ中心の情報伝達のみならず、多様なアプリケーションに対応するべく、これら関係無線のデジタル化をはじめとした高度化・高機能化を推進していく。  特に、各消防本部と消防・救急隊員間又は消防・救急隊員間同士の連絡を行うための無線通信網である消防・救急無線については、秘匿性の確保、高度なアプリケーションの実現、周波数の有効利用等のため、各消防本部においてデジタル化に取り組むこととしている。そこで、総務省では、全国の消防本部において円滑かつ速やかな移行を進められるよう、必要な支援を行っていく。  また、これまでの無線通信網に加えて、国と地方公共団体間における情報の収集・伝達にインターネットを活用していくことも検討しており、そのために必要な準備を実施する予定である。 2 情報システムの活用による防災情報の共有化の推進  総務省では、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、各種の情報システムを整備・活用することにより、必要な情報を地方公共団体との間で共有している。具体的には、消防防災に係る情報をデータベース化して地方公共団体との間で共有化するための「防災情報システム」や、地震発生時の被害を推計するための「簡易型地震被害想定システム」、緊急消防援助隊の広域応援活動を支援するための「緊急支援情報システム」を整備し、地方公共団体からの接続を進めている。  今後は、引き続きこれらシステムの充実を図るとともに、接続団体数がさらに増加していくよう取り組んでいく。また、各地方公共団体において整備されている各種の消防防災関係システムを接続し、相互に必要な情報を共有化するための方策を検討するとともに、消防防災情報の共有化、効率的システム整備等を推進する観点から、各種情報通信システム、データ形式等の共通化を進めるとともに、標準ソフト・共通ソフト等の整備開発を積極的に行っていく。 3 情報通信技術の進展への対応  近年の携帯電話の急速な普及、それに伴う携帯電話からの119番通報の増加を踏まえ、総務省では、平成12年度から「携帯電話等を用いた119番通報のあり方検討懇談会」を開催の上、必要な事項の検討を実施してきた。これまでは、携帯電話からの119番通報について、通報者がいる場所の管轄である消防本部において直接受信を可能とするシステムの実現方策を中心に検討してきたところであり、今後は、携帯電話による通報者の位置を特定するシステムの実現方策やIP電話等からの通報への対応について議論を行っていく予定である。  また、山岳地帯等での遭難事故に際して、携帯電話を利用し、要救助者の位置を早期に特定する方策についても検討を行っている。 4 情報化の計画的な推進  今後は、「e-Japan重点計画-2002」、「事務・事業の在り方に関する意見」(平成14年10月地方分権改革推進会議決定)、「防災情報システム整備の基本方針」(平成15年3月中央防災会議決定)等を踏まえ、国・地方公共団体・住民間における防災情報の共有化を図っていくため、総務省では地方公共団体と連携しつつ、計画的かつ積極的に情報化を推進する予定である。特に関係無線のデジタル化を早期に効率的に実施するため、また、必要な情報システムの整備、相互接続を進めるため、必要な方策を検討していくとともに、財政措置を含む地方公共団体への支援を行っていく。