第7節 情報通信利用者の保護 1 電気通信利用者の保護 (1)電気通信の適正利用のためのルール整備 迷惑メール、ワン切り対策とプロバイダ責任制限法の制定  携帯電話、インターネット等の電気通信は、国民生活に不可欠な社会的インフラとなっている。他方、他人に迷惑等を及ぼすような不適正利用による問題が深刻化している。総務省では、電気通信の不適正利用により消費者に被害が生じている問題について、必要な制度を整備している。 1 携帯電話等への迷惑メール対策  受信者の同意を得ずに広告、宣伝、勧誘等を目的とした電子メールが送りつけられる、いわゆる迷惑メール問題に対しては、平成14年7月、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」(特定電子メール法)が施行された。  特定電子メール法は、氏名等の表示義務、拒否の意思表示をした者への送信の禁止(オプトアウト)、架空電子メールアドレスによる送信の禁止等の送信者への義務付けとそれらの義務に違反した場合の総務大臣による措置命令や、電気通信事業者による情報の提供・技術の開発の努力義務等について規定している(注)(図表1))。  総務省では、同法に基づき、(財)日本データ通信協会に設置された迷惑メール相談センターに寄せられた情報等を基に、違法な送信を行う者に対して必要な指導等を行っている。平成14年12月には都内の違法業者に対して、初めて措置命令を行った。 図表1) 特定電子メール法による迷惑メール問題への取組 2 ワン切り対策  平成13年11月頃から、着信履歴にコールバックさせて有料の音声サービス等を聞かせることを目的として大量の不完了呼を発生させる、いわゆる「ワン切り」に対する苦情・相談等が総務省等に多数寄せられるようになり、社会問題化した。そこで、総務省や各電気通信事業者等は、ワン切りに対する注意事項をまとめ、周知等を行ってきた。  しかし、平成14年7月、NTT西日本の管内において、2度にわたりワン切り行為による大量の不完了呼が原因とみられる輻輳によって、500万回線以上の加入電話の利用に長時間にわたって支障が生じる事態が発生し、社会インフラである電気通信ネットワークを保護する観点からも対応が求められるようになった(1-5-6参照)。  そこで、総務省では、平成14年8月から「迷惑通信への対応の在り方に関する研究会」を開催し、同年10月、報告書が取りまとめられた。報告書では、約款改正によるワン切り業者に対するサービスの利用停止・契約の解除の電気通信事業者による対応や、受信者からの連絡により登録された電話番号の発信に対するブロック・課金等の受信者端末による対応等のほか、通信妨害の危険のあるワン切り行為に対して罰則を新設することが提言された。  総務省では、報告書を受けて、ワン切りに対する処罰規定を設ける有線電気通信法の一部を改正する法律案を平成14年10月、国会に提出し、同年12月、同法案は可決・成立した(同年12月施行)。  本法では、営利事業者が、多数の相手方に符号のみを受信させることを目的として、電話の使用を開始した後通話を行わずに直ちに使用を終了する動作を自動的に連続して行う機能を有する装置を用いて、符号を送信する行為を処罰する措置を定めている。 3 プロバイダ責任制限法  インターネットの発展に伴い、ウェブページや電子掲示板等における他人の誹謗中傷、プライバシーの侵害、知的財産権の侵害等の問題が深刻化している。このような状況に対応するため、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(プロバイダ責任制限法)が平成14年5月から施行されている。  本法では、1)プロバイダ等の損害賠償責任の制限(インターネット等による情報の流通により他人の権利が侵害された際、関係するプロバイダ等がその情報の送信防止措置を講じたこと等について損害賠償責任を負わない場合を明確化)、2)発信者情報の開示請求(インターネット等による情報の流通により自己の権利を侵害されたとする者が、関係するプロバイダ等に対し、当該プロバイダ等が保有する発信者情報の開示を請求する権利を創設)の2点について規定している(図表2)、3))。総務省では、同法の逐条解説をホームページに掲載して周知を図るとともに、関係団体によるガイドラインの策定・周知を支援するなど、同法の円滑な運用に向けた施策を実施している。 図表2) プロバイダ等の損害賠償責任の制限の概要 図表3) 発信者情報開示の概要 (注)同様に、迷惑メール対策として、通販事業者等に対し、氏名等の表示義務やオプトアウトを義務付けた「特定商取引に関する法律」が平成14年7月から施行されている