第8節 研究開発の推進 1 情報通信分野の研究開発政策の展開 (1)研究開発の推進による国際競争力の強化 情報通信分野の研究開発基本戦略等の策定 1 研究開発基本戦略の策定  我が国が持続的に経済発展を遂げ、同時に国民が安心して安全な生活を送るためには、科学技術の重点分野に積極的、戦略的に投資を行い、研究開発の推進により、産業の競争力を維持・発展する必要がある。このような観点から、平成13年度からの5か年を対象とする第二期科学技術基本計画(平成13年3月閣議決定)では、科学技術分野において、  1) 新たな発展の源泉となる知識の創出(知的資産の増大)  2) 世界市場での持続的成長、産業技術力の向上、新産業・雇用の創出(経済的効果)  3) 国民の健康や生活の質の向上、国の安全保障及び災害防止等(社会的効果) について寄与の大きい分野として、情報通信分野を含む4分野に特に重点を置き、優先的に研究開発資源を配分することとした。  総合科学技術会議では、平成13年4月に重点分野推進戦略専門調査会を設置し、調査・検討を進め、同年9月に、平成17年度までの当該分野の現状、重点領域、当該領域における研究開発の目標及び推進方策を明確化した分野別推進戦略を取りまとめた。この分野別推進戦略等を踏まえ、より効果的・効率的な取組を実現するため、総合科学技術会議は、各府省の概算要求に向けて、次年度において特に重点的に推進すべき事項を、「科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針」として決定している。また、総合科学技術会議ではこの方針を踏まえ、平成14年から各府省の主な科学技術関係概算要求施策について4段階(S・A・B・C)の優先順位付けを行っている。  これら政府全体の方針も踏まえつつ、総務省の情報通信審議会では、「我が国の情報通信分野における研究開発体制の在り方」について検討を行い、平成14年8月に答申を行った。答申では、国として明確な戦略を持つ必要性から「競争」と「協調」を基軸とする7つの項目からなる研究開発基本戦略を提示し、基本戦略に沿った研究開発を推進していくことが 重要とされた(図表1))。 図表1) 研究開発基本戦略の概要 2 情報通信分野における研究開発・標準化戦略  総務省では、研究開発基本戦略の具体化と「研究開発基本計画(第3版)」の改訂等を目的として、情報通信審議会に「情報通信分野における技術競争力の強化に向けた研究開発・標準化戦略について」諮問を行い、平成15年3月に答申がなされた。答申では、我が国の厳しい経済状況や情報通信技術の高度化の下で国民や研究者がおかれた状況を踏まえ、「ユーザ(国民)が利用して満足できること」、「作り手(技術者、研究者)がやり甲斐を感じられること」、この両者の密接な関係を通して「産業活性化を通じ国が発展すること」を3つの基本認識とし、我が国の発展や豊かな国民生活を目指した研究開発への取組の提言を行っている。そして、研究開発成果を産業化に結びつけること、研究開発にユーザや作り手の視点を取り入れること、研究開発成果を広く普及させるための研究開発と標準化を一体的に推進すること等を基本的な考え方として、取り組むべき研究開発課題や方策が「研究開発基本計画(第4版)」、「研究開発実施戦略」、「標準化戦略」として取りまとめられた(図表2)、3))。  「研究開発基本計画(第4版)」では、情報通信技術が基盤化し、情報通信技術と研究開発領域の他の分野との融合の進展を踏まえ、これまで細分化されていた研究開発プロジェクトを大括り化している。具体的には、アプリケーション、ネットワーク、ファンダメンタルの3つの領域における分野別研究開発課題の選定のほか、分野横断的プロジェクトやユーザの視点で取り組むプロジェクト、基礎研究等の長期的視点で取り組むプロジェクトの提示という形で、我が国の取り組むべき研究開発課題が取りまとめられた。  「研究開発実施戦略」では、研究開発成果を国民生活の向上や産業の活性化につなげるため、産学官それぞれの役割が取りまとめられた。具体的には、国による実証・実用化実験支援や最先端の機器の使用、独立行政法人通信総合研究所(CRL)及び通信・放送機構(TAO)が統合して平成16年4月に発足する独立行政法人情報通信研究機構での基礎研究の強化やファンディングの充実、官学における人材交流の促進や企業のブランド価値の再生等が提言されている。  「標準化戦略」では、我が国が得意な先進技術に人材や資金等の資源を集中し、スピード感のある標準化を行うこと、発展するアジアの情報通信市場を意識し、アジア諸国、特に中国、韓国との標準化活動の連携を強めていくことなどが提言されている。  総務省においては、これらを踏まえ、情報通信分野の研究開発を推進し、その成果を産業化に結びつけることにより、我が国の国際競争力の強化を図っていくこととしている。 図表2) 「情報通信分野における技術競争力の強化に向けた研究開発・標準化戦略について」答申の概要 図表3) 研究開発と標準化の関係 関連ページ:研究開発については、2-8参照