2 重点的な研究開発の実施 (1)ユビキタスネットワークの実現に向けた技術の研究開発 何でもどこでもネットワークの実現  今後、ネットワークの一層の高速化が進展し、ネットワークへの多様なアクセスが可能となるとともに、大容量アプリケーションの利用が可能となる「ユビキタスネットワーク社会」の到来が期待されている。欧米においては、ネットワーク技術に関する多様な研究開発プロジェクトが産学官により推進されており、我が国の国際競争力を確保し、ユビキタスネットワークの実現を戦略的に推進するためには、ユビキタスネットワーク時代を展望した総合的な取組の推進が必要となっている。  このため総務省では、平成13年11月から「ユビキタスネットワーク技術の将来展望に関する調査研究会」を開催し、平成14年7月、報告書が取りまとめられた。  報告書では、ユビキタスネットワーク社会の実現によって期待される波及効果として、社会・生活環境の利便性及び安全性の向上、障害者・高齢者等の社会参加の促進、活力ある社会の実現等が挙げられており、これらが生み出す市場規模は2010年には84.3兆円に達すると試算されている(図表1))。また、ユビキタスネットワーク社会は、我が国が世界に誇る、光通信、モバイル、情報家電に関する各テクノロジーの連携により実現されるものであり、国際競争力の確保の面からも大きく寄与することが期待されている。このような将来性に満ちたユビキタスネットワーク社会を実現するため、トリガーとなる研究開発への重点的取組、テストベッドともなる研究開発ネットワークの整備、産学官が一体となった研究開発体制の確立等の必要性が提示されている。  このため、総務省においては、平成15年度から、非常に高速なリアルタイム認証技術や、極めて多数の端末を協調・制御するネットワーク技術等ユビキタスネットワークの実現に不可欠な要素技術の研究開発を実施している(図表2))。 図表1) ユビキタスネットワークの波及効果 図表2) ユビキタスネットワーク技術の研究開発  また、研究開発を支える環境整備に向け、平成15年2月から「ユビキタスネットワーク時代に向けた次世代研究開発ネットワークの在り方に関する調査研究会」を開催しており、次世代研究開発ネットワーク環境に求められる要件、取り組むべき研究テーマや実現に向けた推進方策等について、同年6月の取りまとめを目途に検討が進められている。  さらに、現在、バーコード機能の代替として、物流管理や入退室管理等を中心に利用されている電子タグは、今後は、ネットワークとの結びつきを一層深めることで、あらゆるモノがネットワークにつながり、多様な分野で利活用できるユビキタスネットワークの基盤的ツールになるものとして期待されている。このため、総務省においては、平成15年4月から「ユビキタスネットワーク時代における電子タグの高度利活用に関する調査研究会」を開催し、周波数の使用方法やネットワークの活用方策等についても検討が進められている(図表3))。 図表3) ユビキタスネットワーク時代における電子タグの利活用の例  産業界等における取組も活発化しつつあり、平成14年6月、民間企業や大学が主体となって、ユビキタスネットワーク社会実現のための各種研究開発や標準化に関する情報交換等により、業界横断的な研究開発・標準化を推進することを目的とした「ユビキタスネットワーキングフォーラム」が設立され、平成14年度末現在、約100の会員が参加し、フォーラムの活動を推進している。  総務省では、ユビキタスネットワーキングフォーラム等、産学との連携を図りつつ、ユビキタスネットワーク社会実現に向け、研究開発、標準化をはじめ、各種取組を総合的に推進している。 関連ページ:次世代を担う情報通信ネットワークの展望と課題については、1-1-2参照