1 ICT利用の進展 e-Japan戦略以降、国民のICT利用は着実に進展 1 インターネット利用者の増大  平成16年末におけるインターネット利用人口は7,948万人(対前年比2.8%増)と推計され、人口普及率は62.3%と平成15年末(60.6%)と比べて1.7ポイントの増加となった(図表[1])。平成15年末に人口普及率が60%を超え、普及が相当進んだことから、伸び率は鈍化している。また、e-Japan戦略の始まった前年(平成12年)末と比べると、利用人口は約3,200万人増、人口普及率は25.2ポイント増と大幅な増加となっており、この4年で国民のインターネット利用が着実に進展してきたことがうかがえる。 図表[1] インターネット利用人口及び人口普及率  年代別の利用率について平成13年末と平成16年末を比較すると、すべての年代において利用率が上昇しており、特に60歳以上の高齢者の利用率が2.43倍と大幅に伸びている(図表[2])。 図表[2] 年代別にみたインターネット利用率  また、端末別の利用者数について平成13年末と平成16年末を比較すると、携帯電話やPHS、通信機能付きの携帯情報端末(携帯電話等)からの利用者数が2.3倍と大幅に伸びている。また、パソコンのみからの利用者数が3割の減少となっているのに対し、パソコンと携帯電話等の両端末からの利用者数は2.4倍と大幅に伸びている。パソコン単独での利用から、パソコンと携帯電話等の両端末からの利用へと変化していることがわかる(図表[3])。 図表[3] 端末別にみた個人のインターネット利用者数・比率 2 ブロードバンド利用世帯の増大  平成16年末において、自宅でパソコンからインターネットを利用している世帯のうち、ブロードバンド(FTTH、DSL、ケーブルインターネット、無線(FWA等))(注)を利用している世帯は62.0%となり、平成15年末(47.8%)と比べて14.2ポイント増加した。これに対し、ダイヤルアップを利用している世帯は20.4%となり、平成15年末(30.2%)と比べて9.8ポイント減少した。また、e-Japan戦略の始まった前年(平成12年)末と比べると、ブロードバンド利用世帯は55.2ポイント増と大幅な増加となっている(図表[4])。ブロードバンドが家庭に急速に普及していることがうかがえる。 図表[4] 自宅におけるパソコンからのインターネット接続方法 3 インターネットリテラシーの向上  インターネット利用者に対し、パソコンやインターネットの利用に必要ないくつかの操作について、現在できるかどうか、また、2年前はできたかどうかを聞いたところ、すべての項目において現在「できる」とする人の割合が高くなっている。パソコンやインターネットの操作能力が着実に向上していることがうかがえる(図表[5])。 図表[5] インターネットリテラシー(インターネット利用者) 4 インターネットの満足度  インターネット利用者に対して、現在のインターネット利用の満足度を聞いたところ、パソコンによるインターネット利用については総じて高い満足度が示された一方、携帯電話等によるインターネット(以下、「携帯インターネット」という。)利用については不満の方が高いという結果となった。これは、パソコンによるインターネット利用に慣れた利用者にとっては、パソコンと比較するとどうしても携帯電話等の使い勝手(画面の見やすさ、操作性等)が良くないと感じられるためではないかと考えられる。また、携帯電話等では、パソコンに比べて「わからない」とする回答が多くなっている。パソコンによる利用に比べて利用期間がまだ短く、また、提供されるサービスの内容も急速に変化していることから、評価が定まっていない面があるものと思われる。  接続環境については、パソコン、携帯電話等ともブロードバンド利用者、パケット定額制利用者では満足度が高くなっている(図表[6])。 図表[6] パソコン・携帯電話によるインターネットの満足度 5 ICTの利用が進んだ分野、進まない分野  インターネット利用者に対し、主な分野におけるICT利用の進展について聞いたところ、情報収集、ショッピング、コミュニケーション、娯楽・コンテンツ、金融取引の分野では、「かなり進んだ/ある程度進んだ」が8割以上となっている一方、医療、行政、教育の分野では「あまり進んでいない/全く進んでいない」が3〜4割にも上っている(図表[7])。 図表[7] 主な分野におけるICT利用の進展状況  高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)のもとに置かれた評価専門調査会の中間報告書(第1次〜第4次)では、医療、行政、教育の分野における課題や阻害要因を次のとおり言及している。  医療分野では、電子カルテの普及のための課題として、医療機関にとって投資コストに見合った成果が見えにくいこと、また、診療報酬請求業務の電子化の課題として、医療機関のレセプトの9割以上が電子的に作成されていながら、大半が紙出力されていることなどが挙げられている。  行政分野では、国が扱う手続のオンライン申請の阻害要因として、オンライン申請への取組が利用者の視点で十分に重点化されていないこと、手続自体の見直しを行わず既存の手続をそのままオンライン化していること、書面による手続が残っていることなどが挙げられている。また、自治体の行政ポータルの整備の阻害要因として、自治体内の体制の未整備、人材の不足等が挙げられている。  教育分野では、初等・中等教育におけるIT教育の阻害要因として、IT教育を行うことの統一した認識が教育現場に浸透していないこと、校内LAN等の環境整備の遅れ、学校における指導者の不足、教員のニーズにかなった教材の不足等が挙げられている。 (注)平成16年は、第3世代携帯電話をパソコンに接続して使う場合を含む