3 ロングテール現象  Web2.0の進展により、ロングテールと呼ばれる多様で小規模な商品需要であっても、魅力ある市場として成立する可能性が高まった。これまでは、多様で小規模な商品需要は、市場として成立する場合であっても、ごく限られた利益しか期待できなかったが、幅広い利用者の参加等を特徴とするWeb2.0の進展により、そのような商品需要を効率的に集積、顕在化させることが可能となり、一般市場とそん色のないレベルの市場として形成することが期待できるようになったのである(図表1-4-2)。  ロングテール現象の典型例として挙げられるのが、Amazon.comの書籍販売である。同社のネット書籍販売では、全体の売上げの約3分の14が通常の書店では扱うことが困難な売上数の少ない本によって成り立っていると言われている5。  同社のネット書籍販売は以前から行われているものではあるが、カスタマーレビューで多くの利用者による評価を需要の掘り起こしに活用している点や、データベースやAPIを公開しサービスの改善や拡大を図っている点などで、Web2.0のコンセプトを利用した事業展開を目指していると言える。  その他の例としては、Googleの「アドセンス(AdSense)」という広告商品を挙げることができる。アドセンスは、個人等のウェブサイトの内容にマッチした広告を当該サイト内に自動的に表示するサービスであり、低料金の成果報酬型で広告の出稿も掲載も容易であるため、多くの利用者が参加できる点が特徴となっている。アドセンスは多数の個人サイトを広告対象とすることによりロングテール部分にも収益源を求めることが可能な広告商品であり、例えばこれまで広告とは無縁だった中小企業の広告戦略として活用されている。 図表1-4-2 ロングテール現象の概要 4 なお菅谷(2006)では、実際のインターネットで販売活動を行っている業者のデータから、ロングテール現象の検証を行っている。これによれば、インターネット販売が主体の場合、上位20%がもたらす売上は全体の41%となっており、残りの80%のロングテール部分が、売上の過半数の59%を占めていること、また25万点の商品のうち、「一度も売れたことのない」商品が22万4千点、すなわち全商品の90%も存在していたことが報告されている 5 これは、ウェブ上に追加コストなくほぼ無限に商品を掲載可能であることが背景にある