コラム ソフトウェアのネットワーク効果とロックイン効果  ソフトウェアにはネットワーク効果11が働く。数多くの利用者がいる特定のジャンルのソフトウェア市場に互換性のない二つのパッケージソフトがあったと仮定した場合、少しでも利用者の多いソフトを購入した方が便益は大きくなる。ネットワーク効果が働く市場では、強者はますます強くなり、市場から得られる利益のほとんどすべては勝者が得ることになる。パソコンのOSやワープロソフト、表計算ソフトの歴史が良い事例である。  また、ソフトウェアは、ロックイン効果(囲い込み効果)12が発生しやすい。業務等で継続して長期間ソフトウェアを利用していると、他のベンダーのソフトウェアに簡単に乗り換えることはできない。ソフトウェアが扱うデータの形式やソフトウェアの操作方法等が異なるために、乗り換えるコスト(スイッチング・コスト)が発生するからである。あるソフトウェアの利用者は、そのソフトウェアに習熟すればするほどスイッチング・コストは高くなる。また、ソフトウェアのベンダーは、新しい機能を追加するアップグレードを繰り返すことによって高いスイッチング・コストを維持しようとする。  世界におけるOSのマーケット・シェアを見ると、パソコンOSでは米国企業1社で95.9%を占めている。また、高機能携帯電話OSでは英国企業1社で67.6%となっており、ここ数年シェアを伸ばしている(図表)。 図表 世界におけるOSのマーケット・シェア(2005年) 11 ネットワーク効果とは、ある財やサービスから得られる個人の効用がそれを利用する者の人数に依存すること等を指す。他の例として電話やFAX等が挙げられる 12 ロックイン効果とは、長期間継続して、同じ財やサービスを利用することで、乗り換え費用が高まり、容易に他の財やサービスに乗り換えることができなくなることを指す。他の例としてはキーボード等が挙げられる