2 米国の情報通信政策の動向 (1)ブロードバンド規制の見直し  米国ではブロードバンド普及促進のため2001年末から、連邦通信委員会(FCC:Federal Communications Commission)が規制の見直し手続を進めている。2003年には光ファイバ回線(FTTH:Fiber To The Home)に関する開放義務を廃止する決定を採択し、それを受けてベライゾンが光ファイバ網の構築を開始した。  2005年には、DSLやFTTH等の有線ブロードバンド・サービスの規制区分の見直しを行い、通信事業者が伝送サービスを分離して提供する義務を廃止する決定を8月に採択した。これにより通信事業者はDSLやFTTH等を競争事業者に非差別的に提供する必要がなくなった。 (2)ネット中立性議論  ブロードバンドの規制の見直しに伴い、米国では通信事業者がインターネットを支配するのではないかという懸念を表明する声が大きくなってきている。その懸念に対処するため、FCCは、2005年8月に「インターネット・ポリシー・ステートメント」を採択し、引き続き開かれたインターネット市場を目指す姿勢を示した。なお、同ステートメントは、あくまでも原則を示したものであり強制力を持たない。  インターネット上でサービスを提供する事業者等の後押しを受け、通信事業者がインターネット上で他社サービスを差別することを禁止する条項を通信法に盛り込む動きが2005年後半から活発化してきている。ネット中立性(net neutrality)と呼ばれるこの議論は、連邦議会の委員会において公聴会が開催されるなど、米国通信政策上の大きな論点になっている。  これに対し、通信事業者側は、こうした動きに反対している。また、追加料金を支払った事業者のコンテンツに対してのみ高速な伝送を保証する仕組みを検討するなど、増大するネットワーク設備投資負担を回収する方策を模索している。