3 EUの情報通信政策の動向 (1)2002年電子通信規制パッケージの見直し  EU加盟国は2002年電子通信規制パッケージを国内法制化する義務を負っているが、2006年2月にギリシャが電子通信法を公布したことにより、全25加盟国による法律レベルの整備が完了した。また、各加盟国はEU勧告によって指定された18の市場区分について市場分析を実施する義務を負っているが、2005年末時点でおおむね市場レビューが完了したのはフィンランド、フランス、ドイツ、イギリス等12か国であり、残る13か国は一部の実施にとどまっている。  欧州委員会は、上記規制パッケージについて、2006年末の見直し案の提出に向けた最初の定期的見直しを完了する予定であり、2005年11月には五つの指令(枠組み指令、認可指令、アクセス指令、ユニバーサルサービス指令、プライバシー及び電子通信指令)及び関連市場勧告に対して、意見招請を実施した。欧州委員会は見直しの基本原則として、[1]インフラベースの競争による投資の強化、[2]新技術に対する規制方針の明確化を通じた改革の推進、[3]域内で統一された規則による単一市場の完成、の3点を掲げている(図表2-6-11)。 図表2-6-11 EUの電子通信規制パッケージの2006年見直しの主なスケジュール (2)「国境のないTV指令」の見直し  EU加盟国におけるテレビ番組規制等の調和を図る目的で1989年に制定された「国境のないTV指令」は、近年の伝送形態の多様化に対処することを目的として、欧州委員会において見直しが進められていたが、2005年12月に「視聴覚メディアサービス指令」に名称変更等する改正案が公表された。その中で、指令の適用範囲を電子通信による一般公衆向けの動画の提供に拡大し、受信者が送信のタイミングを決定するサービス(ノンリニアサービス)については、青少年保護、差別助長の禁止等の最小限の規制を課し、送信側が送信のタイミングを決定するサービス(リニアサービス=テレビ放送)については、上記のほか、欧州番組比率規制及び反論権等の規制を課すこととしている。 (3)イギリスの「電気通信の戦略的見直し」及びBTの公約  イギリスOFCOM(通信庁)は、ネットワークのIP化やバリューチェーンの垂直統合の進展等の電気通信分野における変化を踏まえ、1991年以来の抜本的な電気通信政策の見直しを行うことを掲げ、2004年4月より「電気通信の戦略的見直し」を行っていたが、2005年9月に最終文書を公表した。最終文書において、今後の電気通信規制に関するポイントは、適切に機能する電気通信市場の実現を目指し、インフラの最深レベルから先におけるアクセスの平等性を実現することで、有効かつ持続可能な競争を実現することであるとした。  また、同文書において、アクセスの平等性に関して、BTがOFCOMに対して提出していた業務分割等を内容とする「公約」‘Undertakings’の効果的な履行が確保されることがその実現に有効であるとし、OFCOMは最終文書の公表と同時に公約を受諾し、同公約は発効した。  BTは、2005年9月、公約に基づき、BTのアクセス網及びバックホール網へのアクセスを、BTに対しても他の事業者に対しても平等に提供するアクセスサービス部門オープンリーチをBT内部に新設するとともに、従業員、報酬制度や社屋等を他部門から分離し、その独立性を担保することとした。オープンリーチは2006年1月から営業を開始している(図表2-6-12)。  また、BTは公約において、同社のネットワークIP化計画「21CN」に関し、その設計や接続料等の課題について、他の関係事業者と合意を形成しながら検討を進めるとしており、その場として業界団体「NGN UK」が設置された。 図表2-6-12 BTグループの組織構成