第4節 安心・安全ネットワークの構築 1 電気通信サービスに関する消費者行政 (1)インターネット上の違法・有害情報対策  情報通信分野の急速な技術革新と規制緩和による競争の進展等により、高度化・多様化した電気通信サービスが国民各層に広く普及・浸透し、国民生活に大きな利便性をもたらす一方で、電気通信サービスをめぐるトラブルも急増し、その内容も年々複雑になってきている。こうした状況の中、総務省では、消費者が安心して電気通信サービスを利用できるための取組を積極的に推進している。 1 プロバイダ責任制限法及び関係ガイドライン  インターネットの急速な普及に伴い様々な電気通信サービスの提供が可能となってきている一方で、他人の権利を侵害する情報の流通も増加してきている。その対策として、平成14年5月、インターネット上のウェブページや電子掲示板等による情報の流通によって他人の権利が侵害された場合について、(ア)プロバイダ等の損害賠償責任の制限・明確化、(イ)(被害を受けた者からの)発信者情報の開示請求権を規定する、いわゆるプロバイダ責任制限法(「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」)が施行された。総務省では、同法が適切に運用されるよう、業界団体による同法のガイドラインの策定に対する支援や周知を行ってきている。  平成16年10月には、業界団体等により構成される「プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会」が策定した「プロバイダ責任制限法名誉毀損・プライバシー関係ガイドライン」が改訂され、[1]インターネット上の情報の流通による重大な人権侵害事案であって、[2]被害者自らが被害の回復・予防を図ることが困難な場合に、法務省人権擁護機関(各法務局長及び地方法務局長)がプロバイダ等に対し当該情報の削除依頼を行う手続等が新たに定められた。  また、インターネットオークション等における模倣品の流通が問題となっていることを受け、平成17年7月に同協議会において商標権侵害の具体例、インターネットオークション事業者等への削除要請の統一的手順・様式、信頼性確認団体を経由した削除の申出等について記述した「プロバイダ責任制限法商標権関係ガイドライン」が策定され、同年9月には、同ガイドラインに基づく信頼性確認団体が認定された。 2 インターネット上の違法・有害情報への対応に関する研究会  インターネット上における違法な情報(児童ポルノ、麻薬販売等)や、特定の者にとって有害と受け止められる情報(アダルト画像、暴力的画像等)、公共の危険や生命に対する危険を引き起こす原因となる情報(爆発物の製造・使用、自殺等を誘発する情報等)等の流通が近年大きな社会問題となっている。  総務省では平成17年8月から、有識者及び電気通信事業者団体等で構成される「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する研究会」を開催し、インターネット上の違法・有害情報へのプロバイダ等による自主的対応及びこれを効果的に支援する制度・方策について検討を行い、平成18年1月に中間取りまとめを公表した。今後も引き続き検討を進め、平成18年7月を目途に最終的な取りまとめを行う予定である。  また、最近、インターネット上の電子掲示板等で自殺の決行をほのめかす書き込みや集団自殺を呼びかける書き込みがなされ、これらの自殺予告を発見した者から通報を受けた警察による自殺を防止するため当該書き込みをした者の氏名、住所等(発信者情報)を緊急に入手することが必要な事案(自殺予告事案)が見られ、問題となっている。  こうした自殺予告事案におけるプロバイダ等の対応について、総務省では、電気通信事業者団体及び警察庁と共に検討を進め、平成17年10月に電気通信事業者団体4団体により、自殺予告事案に関してプロバイダ等が警察から発信者情報の開示を求められた際の情報開示の判断基準や手続等に関する行動指針となる「インターネット上の自殺予告事案への対応に関するガイドライン」が策定、運用されている。 3 モバイルフィルタリング技術の研究開発  近年、携帯電話等を通じたインターネットが幅広い年齢層に急速に普及する一方、出会い系サイト等を通じた児童買春等が社会問題となっている。既にパソコン向けに実現している有害コンテンツのフィルタリング機能(インターネットのウェブページのうち特定の条件に合致する(しない)ページの閲覧を遮断等する機能)を、“モバイル”向けにも実現するため、総務省では、児童の健全育成の観点から、平成16年度から平成17年度にかけて、「モバイルフィルタリング技術の研究開発」に取り組んだ。なお、本研究開発の成果等を活かし、携帯電話事業者は、昨年から逐次、フィルタリングサービスの提供を開始している。