(2)迷惑メール・フィッシング対策 1 迷惑メール対策  携帯電話やパソコンに対し、受信者の同意を得ず一方的に送信される広告・宣伝目的の電子メール(いわゆる迷惑メール)について、総務省では、平成17年7月に取りまとめられた「迷惑メールへの対応の在り方に関する研究会」最終報告書に基づき、[1]政府による効果的な法執行、[2]電気通信事業者による自主規制、[3]技術的解決策、[4]利用者支援、[5]国際協調といった総合的な対策を推進している。  まず、政府による効果的な法執行については、平成17年11月1日に改正された「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」の着実な執行が挙げられる。同法は、平成13年頃迷惑メールが我が国において大きな社会問題となっていたことを受けて、議員立法により制定された。しかし、その後の送信行為の悪質化・巧妙化の進展等により、依然として迷惑メール問題が解決したとは言えない状況にあったことから、総務省は、「迷惑メールへの対応の在り方に関する研究会」の中間取りまとめを踏まえて作成した「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案」を平成17年3月に国会に提出、同法律は同年5月に成立、公布された。本改正により、自己又は他人の営業につき広告又は宣伝を行うための手段として送信者情報を偽って電子メールの送信をする行為の禁止及びその違反者に対する刑事罰、架空電子メールアドレスあての電子メール送信を禁止する範囲の拡大及び罰則の見直し、特定電子メールの範囲の拡大並びに電気通信事業者による電気通信役務の提供拒否事由の拡大等が行われた。  なお、上記の法改正に併せて、同法の対象に、携帯電話同士で短い文字メッセージを電話番号により送受信する「ショートメッセージサービス」(SMS)を追加すること等を内容とする「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律施行規則の一部を改正する省令」も制定され、改正法と同じく平成17年11月1日から施行された。  また、総務省及び経済産業省では、平成17年2月から、(財)データ通信協会及び(財)日本産業協会に設置したモニター機で受信した迷惑メールの違法性を確認し、当該電子メールに関する情報を送信元プロバイダに通知することにより、迷惑メール送信回線の利用停止等電気通信事業者の自主的な迷惑メール対策の円滑な実施を促す「迷惑メール追放支援プロジェクト」を推進している。  さらに、迷惑メールは発信元を偽るケースや自営で設置するメールサーバー等から送信されることが多いため、発信元の情報を確認する「送信ドメイン認証技術」や、動的IPアドレス1を割り当てられた自営で設置するメールサーバー等から直接外部に送信するメールを遮断する「25番ポートブロック」が有効であると考えられているが、総務省では、電気通信事業者の業界団体等と連携して、関係法令との整合性を確保しつつ、その導入促進策等に関する検討を進めている。  また、世界の中で、中国及び韓国が米国に次ぐ迷惑メール発信国となっている(Sophos社調査結果)こと等を踏まえ、総務省及び経済産業省は、平成17年4月、中国及び韓国を含むアジア太平洋地域の11機関との間で、「スパム対策の協力に関する多国間MOU(覚書)」を締結したが、今後、欧米諸国を含め、引き続き、国際連携を推進していくこととしている。 図表3-4-1 「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律の一部を改正する法律」の概要(平成17年5月13日成立、同年11月1日施行) 2 フィッシング対策  金融機関等からのメールを装い、メールの受信者に偽のホームページにアクセスするよう仕向け、そのページを通じて個人情報等を不正に詐取する「フィッシング」については、電子メールやウェブサイトが主要な手段となっていることから、総務省では、インターネット接続サービスを提供するプロバイダ(ISP)とともに「フィッシング対策推進連絡会」を平成17年1月から定期的に開催し、情報の共有を図るとともに、その効果的な対策等について検討を進めている。  「フィッシング対策推進連絡会」は、同年8月に、これまでの検討状況と今後取り組むべき課題等を記した「フィッシングの現状及びISPによるフィッシング対策の方向性」を取りまとめ、公表した。  本取りまとめでは、プロバイダによるフィッシング対策の方向性について、[1]プロバイダ間の情報共有及びユーザーへの周知啓発スキームを、電気通信事業者4団体を軸としてスタート、[2]発信元を偽るケースが多いフィッシングメールへの対処としては、送信者(ドメイン)認証技術の採用が有効であり、業界全体の課題として取組を進めるべき、[3]自営設置サーバー等から直接外部に送信されるケースの多いフィッシングメールへの対処としては、「25番ポートブロック」が有効、[4]フィッシングサイトと考えられるサイトの削除・閉鎖に関する手続き等については、「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する研究会」での検討を踏まえつつ引き続き議論、としている。  総務省は、電気通信事業者団体、関係機関等とともに、上記方向性に基づき、実行可能なところから取組を開始するとともに、引き続きフィッシング対策の更なる検討、実施を進めていくこととしている。 図表3-4-2 25番ポートブロックのイメージ 1 一定期間ごとに変更されるなど一つに固定されていないIPアドレス。通常のインターネット接続サービスは動的IPアドレスを割り振る形態となっている