(2)電子自治体の実現 1 電子自治体の進捗状況  地方公共団体の電子自治体構築に向けての取組のうち、申請・届出等手続をオンライン化するための汎用受付システムの導入状況については、平成17年4月現在、都道府県では37団体(78.7%)、市町村においては493団体(20.4%)が既に導入している。そのほか、電子入札や公共施設予約のオンライン化の開始等、今後、住民・企業等に対するサービスの開始に向けた具体的な取組が、各地域において急速に進んでいくこととなる。 2 電子自治体システムの構築  総務省では、総合行政ネットワーク(LGWAN:Local Government Wide Area Network)、住民基本台帳ネットワークシステム、公的個人認証サービス等の基盤を活用し、効率的な電子自治体を推進するとともに、住民サービスの向上を図るため、様々な施策に取り組んでいる。  財政的・人材的に単独でのシステム運用が困難な小規模団体も含め、すべての市町村において電子自治体を推進していくためには、複数の自治体が共同で情報システムを構築し、運用を外部委託する「共同アウトソーシング」の取組が有効である。共同アウトソーシングを行うことによって、一団体当たりのシステム運用コストの削減や、標準化・共同化に伴う業務改革等の効果が期待される。なお、システム調達の適正化を図る観点からもシステム全体をブラックボックス化せず、標準的な技術を利用してオープン化・モジュール化を図ることに留意する必要がある。  また、組織全体を通じた業務の最適化を図る設計手法であるEA(エンタープライズ・アーキテクチャー)を活用した効率的な電子自治体構築を推進している。今後、電子自治体システムで取り扱うデータの標準化と合わせて、データ体系の整理を進める予定である。  このほか、ICTを活用した住民参画を促進するため、「ICTを活用した地域社会への住民参画のあり方に関する研究会」を開催するとともに、地域SNSや公的個人認証対応電子アンケートシステムの開発実証事業を実施している。今後、地域SNS等を活用してまちかどレポーターによる地域コミュニティの活性化に取り組む自治体を支援する予定である。  また、霞が関WANと総合行政ネットワーク(LGWAN)の活用により、国・地方を通じた業務の効率化を促進するため、国・地方連携システムの構築に取り組むとともに、電子自治体に係る各システム間のデータ標準化についても検討を行っている。 図表3-6-4 都道府県における電子自治体の推進状況 図表3-6-5 電子自治体の推進 3 情報セキュリティ対策と個人情報保護の徹底  このような電子自治体の推進において、個人情報の保護と情報セキュリティ対策が重要な課題となっている。特に、平成17年4月に個人情報保護法が全面施行されたことから、地方公共団体の保有する個人情報については、より一層厳格な管理が求められている。  平成18年4月現在、個人情報保護条例はすべての都道府県・市町村で制定済みであり、情報セキュリティポリシーは都道府県で全団体、市町村で1,773団体(96.2%)が策定している。今後、総務省では、すべての地方公共団体が組織的・総合的な情報セキュリティマネジメントの観点から情報セキュリティ監査を実施するよう地方財政措置等の支援を実施するとともに、地方公共団体の情報セキュリティに関する情報や対策を地方公共団体間で共有する機能等を有する「自治体情報共有・分析センター」(仮称)の実証実験を行い、本格運用を目指すこととしている。 4 住民基本台帳ネットワークシステムの活用  住民基本台帳ネットワークシステムは、地方公共団体共同のシステムとして、住民基本台帳のネットワーク化を図り、本人確認情報(情報:氏名・住所・生年月日・性別、住民票コード及びこれらの変更情報)により全国共通の本人確認を可能としている。  平成14年8月から住民基本台帳ネットワークシステムが稼動し、行政機関への本人確認情報の提供が可能となり、パスポートの申請の際の住民票の写しの添付や共済年金受給者の現況届が廃止された。平成15年8月からは、住民票の写しの広域交付、転入転出手続の簡素化、住民基本台帳カードの交付等が開始され、住民基本台帳ネットワークシステムが本格的に稼動した。また、平成16年1月からは、同システムを活用した公的個人認証サービスが開始され、電子政府・電子自治体の基盤として重要な役割を果たしている。さらに、平成18年秋からは、住民基本台帳ネットワークシステムの活用により、国民年金・厚生年金の受給権者の現況届を廃止することが予定されている。  この住民基本台帳ネットワークシステムに関しては、個人情報保護が重要な課題であり、制度面、技術面、運用面のいずれの面においても、十分な対策を講じている。総務省は、住民基本台帳ネットワークシステム調査委員会での議論・提言を踏まえ、引き続き全地方公共団体を対象としたチェックリストによる点検を実施するなど、個人情報保護について十分な措置を講ずることとしている。  このように、住民基本台帳ネットワークシステムは、電子政府・電子自治体の基盤となるものであり、総務省では、都道府県、市町村等との連絡調整を図りつつ、引き続き地方公共団体における本システムの円滑かつ着実な運用を支援している。 5 公的個人認証サービス (1)公的個人認証サービスの概要  インターネット上におけるデジタル文書については、文書作成者の特定が困難、改ざんされても痕跡が残らないといった特有の問題があることから、他人になりすまされたり、文書の内容を改ざんされたり、送信者に送信を否認されたりするなどの危険性がある。行政手続等のオンライン化を促進し、電子政府・電子自治体を実現するためには、こうした問題を解決する必要があり、平成16年1月、インターネット上において確かな本人確認ができる公的個人認証サービスの提供が開始された。公的個人認証サービスの電子証明書は、有効期間が3年間、発行手数料が500円となっており、市区町村の窓口で厳格な本人確認を受けた上で、住民基本台帳カード等のICカードに格納され、発行を受けることができる。住民はICカードに格納された秘密鍵を用いて電子署名を行い、電子証明書とともに送信することにより、行政機関等へ確かな本人確認を伴ったオンライン申請をするこ とが可能となる(図表3-6-6)。 図表3-6-6 公的個人認証サービス  公的個人認証サービスを利用して申請等を行うことができる手続としては、国税の申告や旅券の発給申請、不動産登記申請等、平成18年4月現在で、国では11府省庁、地方公共団体では45都道府県及び一部市区町村の手続が対象となっているところであり、今後、国及び地方公共団体の各種手続においても、公的個人認証サービスの利用が順次拡大される見込みである(図表3-6-7)。 図表3-6-7 公的個人認証サービスの対象手続 (2)公的個人認証サービスの利用・活用の推進  公的個人認証サービスの利用・活用を推進するため、総務省、関係府省において、以下の[1]〜[5]の施策に重点的に取り組んでいる。 [1] 公的個人認証サービスに対応した行政手続の増加を図るため、各府省への働きかけや地方公共団体への支援を行う。IT新改革戦略では、全都道府県において平成20年度までに、全市町村において平成22年度までに公的個人認証サービスに対応した電子申請システムを整備するという目標が明記されている。 [2] 公的個人認証サービスの電子証明書の有効性を確認できる者の範囲については、行政機関等のほか、司法書士、行政書士等の行政手続等の代理を行う者や公証人、医師等の行政手続等に必要な添付書類を発行する者が、連合会等の所属団体を通じて電子証明書の有効性確認をできるようにする電子署名に係る地方公共団体の認証業務に関する法律の一部改正案が第164回国会で成立したところである。 [3] 金融機関の口座開設時等における本人確認に公的個人認証サービスが利用できるよう、平成17年10月に金融機関等本人確認法の省令及び外国為替法の省令を改正したところである。 [4] 経済産業省と共同で設置している「官民連携ポータル検討会」において、電気、ガスなど公益的分野への公的個人認証サービスの利用範囲の拡大を検討するとともに、「保健医療福祉分野PKIと公的個人認証サービス・特定認証業務の連携等に関する検討委員会」において厚生労働省とも連携して保険医療福祉分野への利用範囲の拡大を検討している。 [5] 公的個人認証サービスの新たな活用方策として、携帯電話・電子ロッカーを利用した無人での交付物の受け渡しや電子錠端末を利用した入退室管理など、モデルシステムの開発・実証を実施。平成18年度は、複数の地方自治体で、電子ロッカーによる交付物の自動受取、電子ドアによる公共施設の入退室管理、携帯電話による申請システムを利用した出張行政サービス、情報システムへのログインへの利用等、多面的な活用方策を可能とするモデルシステムの開発・実証を実施することとしている。